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【ドラゴン・ドージョー・リライズ:奮闘編】♯1

前作:【ドラゴン・ドージョー・リライズ:始動編】


「ひとつ! ドラゴン・ウシロ・アシ!」

「「「イヤーッ!」」」

「ふたつ! ダブル・ドラゴン・アゴ!」

「「「イヤーッ!」」」

 岡山県のオンセン街、シズカガオカのドラゴン・ドージョー分館。分館とは言うが、その実態は青果店「美しいフルーツ」の屋上スペースを間借りした簡素な修行場である。ドージョー・マスターである黒髪の美女、ドラゴン・ユカノの指導下、カラテをふるうのは、十人に満たないモータルの若者たちだ。身なりは貧しいが、いずれも力強い希望の火をその目に灯し、カラテ・シャウトも晴れやかで、力強かった。

 ユカノが峻厳なるドラゴン・マウンテンのドージョーからシズカガオカに降り来たってから約半年。当初は門下生集めに苦心し、絶望しかかった時期もあったが、ささやかながらでも、その運営は少しずつ軌道に乗り始めていた。

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 特に覚えがいいのは、ユカノの目の前で今まさにカラテ・ワークを行っている二人……タイセンとシレイだ。タイセンは地元の愚連隊として市民に迷惑をかけていた若者だったが、ユカノのカラテに感化され、最初の門下生となった。シレイは青果店「美しいフルーツ」の店主の一人娘で、はじめは修行する若者をからかい半分で見学していたのだが、いざカラテを始めてみれば、めきめきと上達を見せたのである。

「イヤーッ!」「グワーッ!」

 見よ。一瞬の隙をついたシレイがタイセンの足を払い、胸に強烈な拳を叩きつけた。タイセンは受け身を取って起き上がり、カラテを構えなおそうとする。そこにシレイが追い打ちをかける。

「イヤーッ!」「グワーッ!」

「……そこまで!」

 ユカノが片手を挙げた。シレイは一歩下がってオジギし、勝ち気な笑みを浮かべた。タイセンは床を殴って頭を振った。

「チクショウ!」

「どちらも充実したカラテでした。学びの成果が見られますね」

 ユカノが頷いた。シレイがタイセンに手を貸し、立ち上がらせた。

「これで三日連続、お昼はあんたの奢りだね」「クッソ……なんかうまくいかねえなあ」

「シレイは相手の力を利用して自らのカラテを増す動きがよくできています。一方、タイセンは相手の誘いに乗りがちで、そこを突かれると崩れます」

「わかってますよ」

 タイセンはふくれっ面をした。生意気な若者だが、入門当初と比べれば随分と礼儀作法も身についてきた。カラテとは、単なる身体強化、殺傷技術の鍛錬のみならず、人間性の深化の手段でもある。加えて、タイセンはシレイのことが好きなのだ。デリカシーの無い人間は好意を得られない事が身に染みてわかってきたのだろう。ユカノは微笑んだ。

「それでは、午前の部は終わりです。午後の部に参加する者は、二時間後」

「アリガトゴザイマス!」「アリガトゴザイマス!」

 ユカノが手を叩くと、門下生はリラックスし、談笑しながら下へ降りて行った。ユカノは屋上フェンスのそばのテーブル・テラスに腰を下ろし、保温ポットに入ったチャを入れた。シズカガオカに高層建築は存在せず、ここからも霊峰ドラゴン・マウンテンの薄青い影はよく見える。

「フジキド。私は努力できているでしょうか」

 彼女はひとり呟いた。ドージョーの立ち上げに協力してくれた弟弟子は再び旅立ち、時折思い出したように旅先からの連絡を入れてくる。今彼がどの空の下に居るのかはわからない……。

 彼女はテーブルのUNIXの電源を入れ、IRC-SNSにアクセスして、日記の更新を行った。

「今日も空はよく晴れており、門下生たちも多く集まりました。ドラゴン・ウシロ・アシは難しいムーブですが、よくついてきています。本日はミヤモト・マサシのハイクから、"たくさん撃つと実際当たりやすい" という言葉について考えましょう……」

 ピボッ。IRC-SNSに見慣れぬアカウントからのメッセージが着信した。

「……」

 ユカノは文面を確認した。アマ・ユズムラ。知らぬ名前だ。ユーザーアイコンはホワイトカラーじみたスーツ・ネクタイ姿で、七三分けと黒ぶち眼鏡である。あまりユカノと縁のない社会の人間であった。間違いによる送信だろうか? 彼女はメッセージを開いた。

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