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デッドリー・ヴィジョンズ【イネヴィタブル・デス】

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【イネヴィタブル・デス】


 フジサン地下、レアアース採掘場。異星の巨大アリの地下神殿めいて無秩序に入り組んだその坑道では、暗黒メガコーポの飼い慣らす巨獣のごとき掘削機械群が休みなく自動クローリングし、その周囲には無数の重サイバネマイナーたちが群がって過剰労働を続けている。

 これら採掘者の多くは、保証のないフリーランスである。彼らはレアメタル鉱石を掘り当てて一攫千金を狙うため、フジサン麓の宿場街にある違法サイバネ相談所でローンを組み、肉体の一部を頑強なサイバネ義肢に置換する。そして日々、ゲートで入場料を支払ってLEDツルハシとタイムカードを渡され、制限時間内の採掘を許可されるのだ。

 だがウシミツアワー近くともなれば、大半の採掘エリアは閉鎖され、照明は落とされる。かつては24時間休みない採掘が行われていたが、メガコーポの自動運転重機にカロウシ寸前のマイナーが巻き込まれて不具合を起こす事故が多発したため、強制的なクールダウン時間が設けられるようになった。

 然して今……クロウラー機械も寄りつかぬほどの小さな横道坑道のひとつに、欲望に満ちたLEDツルハシの音が鳴り響く。暗黒の中、LEDツルハシの残光が、岩の火花と混じり合い、二人の屈強な採掘者を照らし出す。何故、深夜にも関わらず、ここにマイナーがいるのか? 違法操業だからである。

「……ハッ! ……ハッ!」カイーン! カイーン! 最大級のLEDツルハシを振るう巨漢が、一心不乱に岩を砕く。男の名はモテギ。スモトリ崩れのサイバネマイナーである。このレアアース採掘場でフリーランスとして働き始めて既に五年。面倒見の良い性格とその優れた体躯から、今では十数名の徒党を率いるマイクロ事業主となっていた。

「ヨイショ、ヨイショ……」もう一人、サイバーサングラスをかけた全身アニメ刺青まみれの男が、モテギの砕いた岩をザルに入れ、天然の湧水でそれを洗っていた。こうして8時間以上ツルハシを振るい、ショーギ駒程度の大きさのネオジムやジスプロシウムの含有鉱石が数個発見されれば良いほうだ。収穫ゼロの日も珍しくない。レアアース採掘の過酷な現場である。

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