「古代戦士ハニワット」が面白い
「古代戦士ハニワット」は漫画アクションで連載されている漫画で、これは「鈴木先生」の武富健治先生の新作。ハニワット……古代……つまりそのタイトルどおり、ハニワットという古代戦士が戦闘する作品……のように思うのですが、今の説明で喚起されるイメージとは絶対違う内容だと思います。試し読みがあったので見てみてほしい!
自分、武富先生の「鈴木先生」が心の書で、同氏の作品「惨殺半島赤目村」もすぐ買って読んでメチャクチャ面白かったですし、今回の新連載作品も、内容を確かめずの「作家買い」です。ハニワットのルックスとかタイトルの雰囲気とかから、なんとなく変身ヒーロー的なものかな? と思って読み始めたのだが、これが本当に面白いのですよ!
最初はホットスタートです。現代日本。「27時間で33人死んでる」という事実が提示され、時間はその27時間前に巻き戻ります。そして話が始まる。
現代社会に人間大のデッカイ土偶が出現して、歩き出すところが騒動の始まりです。デッカイ土偶は、ただズシーン、ズシーンと歩くだけなんですよ。マジで歩くだけ。単純に、移動するだけです。なので最初は「エ、あれ何?」「なんか動いてるよ」「ロボット?」とか言いながら人々は写メとか撮ってるんですね。実際歩くだけですから、無害っぽいじゃないですか。サイズも、土偶としてはデッカイけど、別に怪獣サイズとかではなく2メートルぐらい。だから牧歌的。しかし読者としては冒頭で既に「33人死んでる」という事実が提示されてるので、異様なアトモスフィアが醸し出されている。でも、どうやってそんな人が死ぬのか全然わからないわけ。俺ら読者は「ただ歩いてるだけだし、どういう殺し方をこれからするんだ?」と固唾を飲んで見守る事になる。
土偶、とりあえずメチャクチャ重量があるし、絶対止まらないんですよ。人間とかを避けたりもしないです。そして、お年寄りとかが移動ルート上で腰を抜かしたりするじゃないですか。デッカイ土偶、避けない! 完全に踏みつぶしにいきます。僧侶が助けて、どかそうとする。お年寄りは助かるけど、デッカイ土偶は止まらないので、そのまま僧侶は踏みつぶされて内臓が破裂し、死にます。淡々としたものですよ。被害、呑気ですけど、絶対的なものがある。異様です。
デッカイ土偶、そのまま、お寺の参道の屋台とかを破壊しながら移動する。見た感じはただ動いているだけだから、引き続き写メを撮ったり、「俺の屋台が!」とかいって、そのまま屋台バキバキ壊されたり、ある種牧歌的な光景が続く。警察も動員されて、交通整理とかして……クルマとかも止まっちゃって。地味な事なのにだんだん大事になっていくんですよね。
人々は「なんで交通整理するんだ」「ワシの家が移動上にある! 壊されちゃうから家財を持ち出させてくれ!」「ダメです!」とか大騒ぎ(商店街の青年団がトラックで走ってきて勇ましく行動し始めるところとか「武富節」という感じで嬉しくなってしまうw)。一方で、この土偶が何なのかをわかっている政府機関が巫女さん達を準備して、ハニワットを出動させるために色々やりはじめる。で、ただ歩いているだけだった土偶がついに……惨事を引き起こす!
この淡々とした……しかし徐々に徐々に事態がのっぴきならなくなっていく感じ……あれですよシン・ゴジラ! 最初は内閣が呑気に「え~、何か港に出てきたの? 生物?」「まいったなあ」とかやってて、人とか死なない感じの映画かな? くらいの雰囲気だったじゃないですか。その後どうなりましたか? このハニワットもですね、徐々に、徐々に、淡々とエスカレートしていきます。事態の展開はゆっくりしているのに、ずっと緊張感がすごい。そして敵は土偶なので、古代日本の伝奇的な要素が徐々に絡んできて……奇妙な読み味ですけど、ほんと面白い内容になっていますよ! 武富作品の醍醐味はディティールの突き詰めっぷりであり、人間の心の機微の非常にかゆいところに手を届かせるもので、ハマるとクセになります。「惨殺半島……」においても単なる「因習惨劇ホラー」に留まらない唯一無二の個性が発揮されていました。今回もバッチリな内容です。2か月連続刊行という事で、今月末に発売される2巻も今から楽しみです。
(本兌有)