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【レリックブレイカ:ハードタイム】後編

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「何で、アンタが、ここに」

「テメェで考えろ」

 ルイナーはヤコを見下ろした。彼は手に持ったスシ・パックをヤコに投げた。

「食え。事務所にあったのを頂いた。ブラッドドッグの奴がここに戻ってくるのをチンタラ待っている時間はない。こっちから動く。……今すぐ食って、立て。俺は我慢の限界だ。これ以上ヘタを打つな。俺はお前を運んでやる気はない」

「わ……わ……わかったけど……」

 ヤコはおとなしく従った。真空パックされたイカとマグロのスシを食べると、滋味とともに力が湧いてきた。

「なあ、ここ、どこなんだ」

「お前のほうが詳しいんじゃないのか」

 ルイナーについて監禁部屋を出ると、そこは殺風景なヤクザオフィスだった。机がひっくり返り、損壊UNIXが火花を噴き、ヤクザ達が倒れていた。その半数は無残な死に方をしていた。身体をえぐられたような死体だった。生きている奴らもまともな状態で悶絶できている奴は少なかった。

 神棚には「赤い血の犬」と書かれたショドーが額縁に入っている。ヤコは恐れた。

「そうだ……じゃあ、ここはブラッドズー・クランッてこと……? ……あ……アンタが、こいつら全員やったのか」

「他に誰が?」

「どうして俺の事助けてくれたんだよ」

「知りたいのか」

「そりゃそうだよ……俺がブラッドズー・クランに捕まった事を、アンタがどうやって知ったのかもわかんねえし……俺だってわかんなかったのに」

「誰が、どうして、どこで、何、何、何」

 ルイナーは大股に部屋を横切り、戸口から外へ出る。鉄扉は根本から吹き飛ばされて、付近の床に転がっていた。彼らは非常階段を降りてゆく。階段に沿ってオレンジ色のランタンがぶら下げられている。外は夜。ヨハネスブルグの夜明かりが美しかった。

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