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シャード・オブ・マッポーカリプス(53):ガイオン・シティ


 雨雲と磁気嵐を払う雅なレーザービームが地上から一斉に放出されると、オミヤゲ・ストリートで観光客たちは静かな歓声を上げた。遠くキョート山脈には「大」の文字がライトアップされている。

 ネオサイタマに本社を持つカライ社は、江戸時代に考案された神秘的なパウダー香辛料、シチミ・ペッパーの老舗でありドミナント企業だ。そして彼らのキョート支社ヘッドオフィスが、ここ、アッパーガイオン南東部トンボ地区にある。

 カライ社の社紋には赤唐辛子の意匠が用いられ、ビル全体どころか屋内の壁も全て赤橙色に塗装されている。「美味しいですよ」「配合する」「赤いのでカワイイ」などと書かれた歴史を感じさせるノボリが、ぬるい風を受けて奥ゆかしくはためく。オフィスの門はすでに施錠され、リキシャーに乗ったまばらな観光客が、その前を通り過ぎて写真を撮った。

 月明かりに染まる赤漆塗りのビル。その横を走る小さな運河。苔むした岩の上にカエルが乗り、隣に立つ真っ赤なビルを見ながらゲロゲロと鳴いた。ここが実はソウカイ・シンジケートの隠し事務所であるという秘密を知るのは、ソウカイヤに所属する高位のニンジャのみ……その筈だった。

 だが今……荘厳なる五重塔の上から、三人のザイバツニンジャがカライ社のビルを剣呑な眼差しで見下ろすのだった。

 - 【ソード・オブ・ザ・ビトレイヤー】より

キョート共和国 / Kyoto Republic

伝統と歴史に彩られた奥ゆかしき霊的サイバー都市、それがキョート共和国である。かつてはロード・オブ・ザイバツ体制下の罪罰影業組合によって裏から支配されていたが、現在は主導権を獲得した元老院穏健派がニンジャの支配を退け、さらにグローバル暗黒メガコーポ各社に対しても適切な牽制を行って、2038年の日本国崩壊以降もキョート共和国としての独立を維持している。

これまで何度となくニンジャによって崩壊の危機に瀕してきたキョート共和国であるが、「ニンジャの存在と脅威を無視してはならない」「ニンジャを力で抑えつけて兵器のように使役してはならない」という教訓を蓄積してきてもいる。これらの過ちから学んだ元老院穏健派は、ニンジャを「都市に隠れ住む半神的存在」としてリスペクトを払い、あたかも古いテンプルや建築物のように扱い、しかしながらその破壊的な力やジツは結界によって封じることで、奇妙な奥ゆかしい共存関係を保っている(もちろん一般市民に対しニンジャ存在に関する詳細は秘されている)。無論、ニンジャ封じの結界は脆く、この均衡もいつまで続くか解らないが、少なくとも現在のキョート共和国が、ケオスの坩堝たるネオサイタマとはまた違う、独特のワビサビを備えたニンジャ都市として成長を始めていることは確かだ。

”キョートは時間の流れが遅い”
 - ミヤモト・マサシの遺した名句 

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