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【ニンジャスレイヤーイビル:ワルサイタマ・ブロウナウト】

編集部注: ニンジャスレイヤーイビル:ワルサイタマ・ブロウナウトは、第四部エイジ・オブ・マッポーカリプスの企画にとりかかる直前に、いわゆるマルチバース・スピンオフ・シリーズとして、ボンド&モーゼズによって習作としてしたためられたエピソードのひとつです。末尾にライナーノーツがありますので、本編とあわせてお楽しみください。

◆猥褻しかない◆


 ワルサイタマ。邪悪と退廃を煮詰めた貪婪の都。明るい都市計画は中途放棄され、市議会が機能停止してから五百日以上が経過していた。眠る事を知らないこの街の空は有害スモッグに覆われ、スカムTVプログラムのホロ映像が縦横無尽に投射され、警察権力は昼夜を問わぬカツアゲ行為に明け暮れていた。空に浮かぶワルサイタマ・キャッスルは月を隠し、きらびやかな宮殿の庭では夜な夜な遺伝子貴族たちの無意味なパーティーが行われていた。それを羨む想像力すら持ち合わせぬワルサイタマ市民たちは、耐用年数の過ぎたコンドミニアムや複合路地の狭間で暮らし、ドラム缶を破壊し、殴り合い、盗みと刹那的性的快楽にまみれて暮らしているのだった。

 ワルサイタマ北東区画、サイテイ・シティ。雑居ビルの一角に、ワルキド・ゲンの事務所はあった。

「来ました! 来ました! テクノコケシ! 大外から……抜いた! 凄い! 万馬券! 万馬券出ました! 来たぞ! こいつは凄いぞ! ウワーッ!」

「ザッケンナコラー!」

 KRAAASH! ワルキド・ゲンは競馬放送の終了を待たず、テレビモニタに蹴りを食らわせ、強制シャットダウンさせた。

「畜生! フザケルナ!」

 ワルキドは感情のやり場を失い、残骸と化したテレビモニタに繰り返しストンピングを行った。オッズは1.07倍という、カタいカタいレースだった。そこにブッこんだ。これは投資活動だ。そう確信していた。結果は……このありさまだ!

「ウオオーッ!」

 KRAAASH! KRAAASH! ワルキドは更に、ケモビールの瓶を窓ガラスに投げつけ……ようとして、やめた。あぶない。修繕費がバカにならないからだ。

「これぐらいで勘弁しといてやるぜ……」

 それから彼はスケベ・ピンナップの山に埋もれたIRC電話番号メモを掴み取り、通信を行った。通信相手はジェンシー・リキ。トクマル銀行のサラリマンというエリートでありながら、その収入を妻に完全管理されている為、遊ぶカネほしさにハッキングを繰り返す小物である。ワルキドはロッポンギで悪漢に絡まれていた彼をふとしたことで助け、その恩を着せてタカっているのだ。

『モシモシ? モシモシ?』

「モシモシ。俺だ」 

『エッ!? ワルキド=サン? この前は……』

「例の件、やっぱ請けるぜ」

『エッ、マジで!? どうして?』

「だから請けるッつってんだよ。カネが要るんだよ」

『カネ……ははは! そうか! まさか前の報酬、当座の家賃とか生活費とか、スッちゃったんじゃないの? 競馬とかで!』

「ウルッセッゾオラー!」ワルキドは激昂した。図星だ!「テメッコラー! 人のプライバシーに何オラー!」

『アイエエエエ! ゴメン!』

「ガタガタ言ってねえで詳細送ってこいって話ッコラー!」

『わかった! わかった! 今送る!』

 通信終了! そして、キャバアーン! データが送信されてきた。彼は声を上げてデータを読み上げる。

「ターゲット:ワースクエイク。危険度:A。コウカイ・シンジケートの上級戦士。身体が大きいビッグニンジャで、常に相棒のクルードシュリケンを伴う。クルードシュリケンの危険度はB。ついでに倒しても構わないが報酬額には変化なし。……ケチめ。まあいい」

 彼の目は戦闘衝動と欲望に青黒く輝いた。(ダラク! 起きろ、ダラク!)ワルキドはニューロンに念じた。内なるニンジャソウルが身じろぎした。そう、ワルキド・ゲンはただの人間ではない。ワルサイタマの底辺で暮らしていた彼のもとに、ある日突然、謎のニンジャソウル、ダラク・ニンジャが訪れ、憑依融合した。そして彼は恐るべきニンジャ戦士……ニンジャスレイヤーイビルとなったのだ!

(((ア? 何? やんのか?))) ニューロンの同居者、ダラク・ニンジャは精神のフートンの中で寝返りを打った。(((面倒くせえよ)))

(黙れ、ダラク。身体を貸してやらんぞ)

(((しょうがねえな。ブッ殺すのか?)))

(ああそうだ。大儲けのチャンスだぜ! お前もちゃんと働けよ……!)

(((気が向いたらな)))

 ダラクは精神のフートンで浜辺ビキニ・ビデオのチャンネルを切り替え、欠伸をした。

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「ここでドン! おでん倍点チャンスです!」「アーッ! ヤメテーッ!」「これは熱い! すごい量だぞ!」「私だったらご勘弁ねがいたいですね!」

「ギャハハハハ! ギャハハハハハ!」

 バーカウンターに据えられたテレビに映っているスカム・バラエティ番組に手を叩いて笑っているのは店主のイービアス。銀色の髪を丸いボブカットに切りそろえ、シースルーと合成レザーを多用したホットな服に包まれるボディはスゴイセクシーだ。彼女は生まれたときは男であり、精神的にも男だが、今は女の身体にしている。ワルサイタマ・テクノロジーの産物であった。

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