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【ギア・ウィッチクラフト】#1

◇総合目次  ◇全セクション版 ◇「磁気嵐の晴れた世界で」
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 この小屋は電子戦争以前からシュヴァルツヴァルト(黒い森)の中にひっそりと佇む。住人も管理者もないが、壁も屋根も無事である。時刻は既にウシミツ・アワー。闇の中、二人の顔をオレンジ色に照らし出すのは古式ゆかしいアナログ・ランプである。床に置かれたUNIXデッキのライトは仄暗い。

 関節部にあてられた溶接機がパシパシと火花を放つ。サイバネ四肢のアクチュエータ調整、その仕上げの作業を終えると、アキナは溶接眼鏡を外し、一息ついた。「むむ……」ニンジャが声を発した。アキナは四肢をサイバネ置換した彼の専属エンジニアであり、今回の「強行調査」にも同行する事となった。

「終わりましたよ」「……うむ」「寝てらしたのですか」「……まあな」ハンダの煙の臭気を含んだ空気の中で、彼は葉巻に火を灯した。「お疲れですか」「お前はどうだ」「後方作業ですから」アキナはUNIXデッキを操作しながら、ふと問う。「夢を見たりもしますか」「俺を何だと思っている。見るさ」

「今は? 見ていました?」「……」「どんな夢を見ますか」「ネオンライト……それから……スシ・バー」キュイイ。キュイイイ。彼は試すように指を動かし、腕を曲げた。「どうですか」「うむ」「これで遅延はほぼゼロです。夢……記憶の夢ですか?」「さあな」

 彼の名はブラックヘイズ。

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