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第2回逆噴射小説大賞:結果発表

Coronaを奪い合い800文字でしのぎを削る「逆噴射小説大賞2019」、その最終結果を発表いたします。

なお上記の記事が、第1次&第2次選考のもようです。今回の最終選考にあたり、選考基準の前提はこのようになっています。

1:「スキ」の数は選考に影響を与えていない。

2:応募者が投稿した作品の数は選考に影響を与えていない。

3:一人の応募者につき複数作品が第二次選考に残っているものもあるが、今回の最終選考にあたっては、各応募者について、選考陣が最も良いと感じた1作品をもとに選考している。

それではいよいよ発表です。「大賞作品」「最終選考まで残った作品」そして「最終選考までは残らなかったが逆噴射聡一郎先生がコメントしたいと思った」各作品について、コメントつきで紹介していきます!



◆大賞受賞作品◆

逆噴射聡一郎先生のコメント:魔女と呼ばれる占い師のツォ婆さんを殺しに、主人公はNYから倫敦へやってくる。そして殺す。だが彼女が遺したメモには、彼への命令書が書かれていた。ツォ婆さんは自分がこの殺し屋に殺されて死ぬことも全て見抜いており、あらかじめ予言書のように、メモや録音音声を残していたのだ。主人公の殺し屋は、まるで魔法使いの弟子のように事件に巻き込まれていく。コステロファミリーへと殴りこむのだ。・・・筋書きはよくできており、会話も軽妙。余計な部分がなく、ヒネりすぎて解りづらくもなっていない。ただし正直なところ、この作品は小説としての基礎的な体幹がまだいささか甘い。しかし腰抜けというわけではない。全編にパルプの初期衝動がみなぎっているからだ。語りのスピードのあまりのターボ速度に、細かな小説作法の約束事が振り落とされているのだ。そしてそこからも「ああ、この話は楽しい、めちゃくちゃ楽しい」という書き手の楽しさが伝わってくる。楽しいから書き手は展開を惜しまずどんどん話を進めたい。読む方もどんどん読みたい、どんどんページをめくりたい。・・・小説の「お行儀の良い」作法より先に、まずそのようなエネルギーがあるのだ。なりふり構わずに突き進むパンクロックのような爆発力と、パワーと、生命力がある。実際のところ、おれはプロもアマもたくさんの作品を読んできたし、本になる前の原稿も本になった後の原稿も目にしてきた。小説としての体裁を整えたり添削したりするのは・・・・じつは、作家本人ではなくて編集者にもできる(いいやつと組めればだが)。編集者はおまえの冷静な相棒として、エンタテイメントとしての体裁やバランスを整えてくれるわけだ。しかし、たとえどんなにすごい編集者とタッグを組んだとしても、パルプの初期衝動、つまりストーリーテリングの楽しさと勢いは、作者本人にしか生み出せない。A・Iにも無理だ。そしてそれが小説において何よりも大事なR・E・A・Lだとおれは信じている。だから今回おれは、この作品の勢いとそれを制御する技、そして作者がストーリーテリングを心底楽しんでいる感じに対して敬意をはらい、CORONAをやることにした。ただし受賞者に対して言っておきたいが、今回CORONAを勝ち取ったからいって、ミリオネアになった気分になって調子に乗って明日から突然リモに乗って豪遊していたら、END OF MEXICOがすぐそこに口を開けて待つだろう。もしおまえが本気で小説家を目指すならば、このドライブ感は一生ものの武器になる。だがそれを真に使いこなすためには、日々のPRACTICEがまだまだ必要だ・・・・。PRACTICE EVERYDAY。



◆最終選考に残った作品と特別コメンタリー◆

ここからは最終選考に残った作品を一個一個紹介していきます。なお、それぞれの作品の並びは、投稿日時の順になっています(つまり上にあるほど大賞に近いという事ではありません)。それではさっそく行ってみましょう!


逆噴射聡一郎:まずタイトルの字面と響きが良く、記憶に残る。内容は古典怪奇幻想の重々しさをうまく維持し、生かしたまま、今風のモチーフに転換できている。怪奇幻想の基本トーンは、いわばミドルテンポの重厚でおどろおどろしいブラックサバスだ。そのトーンをちゃんとやろうとすると、それなりに尺や描写が必要で、現代的な圧縮や借景などのテクも使いづらいため、800文字ではなかなかストーリー展開やキャラ立てまで持っていきづらい。その不利の中でうまくやっている作品だ。ありがちな中世ではなく前近代程度の時代設定にしたのも、独特の雰囲気と情景をかもし出していて効果的だ。魔女のビジュアルも目を惹く。ただ、このコンテストに限っていうならば、魔女が何を求めたのかまで勿体ぶらずに書いてしまうべきだった。400文字ならば無理だが、800文字ならば怪奇幻想の文体やトーンを維持したままでも十分に書けると思われた。


逆噴射聡一郎:これも同様で、バイオレンスやスプラッターを含まない精神的ホラーは、ほんらいならば800文字で戦うのがかなり不利なジャンルだ。特にモダンホラーや因習系ホラーでは、ある程度の尺と時間をかけてじわじわと日常のリアリティを作っていき、そこから恐怖に移行していくのが真骨頂となるからだ。一般的な小説のフォーマットで見た場合、たしかに駆け足すぎて言葉足らずなところもあるだろうが、それでも方言などを駆使し、これだけの尺で「不穏さ」と「怖い雰囲気(これから怖いことが始まる雰囲気)」を出し、続きを読みたいと思わせるのだから、作者のホラー力量は大したものである。ただ、話の筋としてはラヴクラフトの時代からひたすらやり尽くされたジャンルでもあるので、1ワードでもいいから何か異質な要素や捻りがあっても良かったと思う。


逆噴射聡一郎:暗黒剣豪パルプだ。はっきり言って、こいつはめちゃくちゃ面白い。若干脇の甘いところもあるが、やりたいジャンルと見せたい絵がしっかりと伝わってくる。文章は時代小説や剣客小説のように歯切れが良く、かといって古臭さを感じさせはしない、オンタイムなエンタテイメント作品のテンポ感がある。惜しかったのは、最後に登場する敵がインパクトや目新しさに乏しかったことだ。古典的なトーンをリスペクトして外連味を抑えたのかもしれないが、やはり800文字から先に続く引きとしては、アッと驚くような敵が欲しかった。


逆噴射聡一郎:ダイハードテイルズ内で「お仕事もの」と呼ばれるジャンルだ。お仕事ものは、キャラ造形よりもまず、プロフェッショナルの仕事ぶりを垣間見たいという読者の知的欲求を強く満たせるかどうかがフックになる。それは気の利いた一文の描写かもしれないし、あるいは全体的な言葉選びや筆致から言外に滲み出す「作者はこのジャンルに詳しそうだ」という信頼感かもしれない。どちらにせよ、そのようなプロの仕事に関する説得力が必要なのだ。これは全体に言えることだが、パルプという事でなんとなくアメリカ人を出したりメキシコにしたりしようとするものも多かったが、はっきりいって書いてる奴自身がそれら描写対象・描写世界を咀嚼し己のものにしていないと、単に付け焼き刃で浮ついてしまい見苦しくなるし、ちゃんとやれるのか? という疑念もわいてしまう。そのてん、こいつは800字の時点で、このジャンルに関してR.E.A.Lなのだという安心感のようなものがあった。読めばなにか知らない知識なりノウハウやあるあるが展開し脳が刺激されそうだという期待・・・この作品からはそれを感じられた。


逆噴射聡一郎:800字を使ってしっかり興奮させた。虚空太郎のオリジンを描き、怪物の悲哀も端的に表現し、まずこの時点で読ませたうえに、それを倒しにゆく英雄を配置して、ワクワクさせるところまで持っていく事ができた。ここまでやれているのがとても大きい。応募作品群全体を見渡した時、たとえば虚空太郎のオリジン部分までで終わらせてしまうケースが多いのだ。それではアイデアを出しただけでまだ物語がキックスタートできていない。いっぽうこの作品はそこで止まらず、アイデアだけではなく物語を発生させ、エンタテインメントしていく最初の加速を果たしている。だから実際面白くなりそうな予感も感じさせた。桃太郎と金太郎をねじれさせたキャラクターも、実際そういった童話をベースにする試みでよく見られる失敗としては設定だけで手一杯になってしまい頭でっかちになる場合が多いものだが、この作品での彼らは地に足がついたキャラ造形で、語り口が丁寧なのでそういうマイナスはなく、深みを期待させたし、太郎を殺しに太郎がゆく流れにも、漠然とした運命の必然を感じさせもした。


逆噴射聡一郎:エキゾチックな内容を、冷静な語り口で淡々と、かつ大胆に、そして凄まじいスピード感で語るところに、強い魅力を感じた。おそらくこの作者は、文体やトーンとは何のために存在するかが、よくわかっている。こうゆう一見突飛だったりワン・イシューで突き進む作品はいくつもあるが、選外になる作品でありがちな失敗が「地の文も突飛にハシャいで、必要以上に崩した文体になっている」「地の文が妙に主張が激しく、ここが面白いですよ! と強調してくる」などがある(いわば、自分の話で笑いながら話す落語家問題だ)。だが、この作品はそうした罠にはまっていない。イントロのつかみはこれで完璧だ。あとは小説としてそれなりの量になった時に、どのように展開されるかだ。


逆噴射聡一郎:古典的なウェスタンものに、不条理もののテイストが混ざったような感じだ。実際その発生する不条理は興味深く、語り口が面白いので、ショートショートのような出落ち感や「800文字で全部終わった」感がなく、全体の説得力が出ており、先を読みたいと思わせられた。惜しかったのは、この文字数時点ではややキャラが弱かったことと、目新しさに乏しかったことだ。それゆえ相対的に大賞にはならなかった。続きが書かれているようだが、今回の審査ではおれはそれらを読んでいない。今回の審査はあくまでこの800文字だけで行なうからだ。しかしこうして最終選考まで行った以上、話の滑り出し自体は一定の成功をおさめているわけだから、とにかくこのまま書いていけばよいと思う。


逆噴射聡一郎:エキゾチックなアジアン風味の猥雑パルプもの。視点カメラのダイナミックな移動を感じさせ、それは時に壁などを問答無用でスリ抜けて、縦横無尽に動きまわる。強いパルプ初期衝動と、独特のリズム感を感じさせ、読んでいるうちに平衡感覚が乱されて、どんどんアッパーになってくる独特の味わいがある。もしこのテイストと文体を活かしたまま、短編以上の尺の小説として一本描きあげられれば、そうとう映画的な作品ができあがると思った。魅力的な文体を持っている。


逆噴射聡一郎:ストーリーの構成要素は、クライムものやバイオレンスものの定番中の定番。それを料理する語り口がうまい。うまいものをたくさん食って、うまいものは何がうまいのかを知っているというタイプの作者だろう。中でも「スカルピオの工作員」という造語が極めて強力で、笑ってしまうほど格好良くかつローファイで、印象に残り続けた。「月の光が人を焼く」も最終候補に残っており、古典バイオレンスアクションをより現代エンタテイメント的にアプローチしていて、これもまた悪くない。どちらにもあった独特のえぐみを消すか、あるいは逆に強めれば、もっと突き抜けられるかもしれない。


逆噴射聡一郎:この作者も何本かが最終選考に残った。どれも設定は群を抜いて面白く、単なる設定の開示で終わらないだけの筆力も感じられた。こうした世界設定がウェイトを大きく占めるタイプの作品は、冒頭800文字でのパルプの戦いにおいて、通常、かなり分が悪いもので、説明に文字数が費やされ話を進めるのが難しくなる。つまり「遠い昔、はるか彼方の銀河系で……」みたいなスターウォーズの最初の字幕部分を800字書いて終わってしまうようでは、それは物語のスタートとはいえないのだ。そのてん、この作品ではキャラを動かしながらその視点に立脚した周辺の情景を自然に説明できており、世界自体も奇抜で、ワクワク感が勝った。つまり、やりようはあるのであって、それがこの作品だといえる。あとはストーリーがさらにドライブし、読み手の没入感を生み出せるところまで行ければ、大賞が狙えただろう。


逆噴射聡一郎:「リアル・スティール」みたいな感じのロボットバトルで、ロボットのレギュレーションも奔放、というものだ。ただし主観視点の語り手となる主人公が操縦者の人間ではなくロボットAIそのもの、というのは意外と珍しく、新規味を感じた。その語り口は均整が取れており、奥ゆかしく、この主人公自体にキャラクターとしての不思議な魅力を感じとれる。主人公キャラクターの魅力があるのだから、この作品はこのまま800字から先を書き続けていって面白くなるだろう。


逆噴射聡一郎:死んだはずの英雄が何かの理由で蘇り、現れた案内人とともに変貌した世界をさまよい始める。魔物との戦い等に関しても言葉は少ないがさりげなく丁寧であり、抑制が効いている。生き返った理由自体が謎で興味を惹き、何が起きたのかどんどん気になっていく。時間経過から放り出される主人公の困惑は、急にこの話を読む読み手の感覚とシンクロしており、自然に受け止めることができ、世界のひろがりと質感、それらが孕んでいる秘密に興味が向いた。ダークファンタジーの手応えはじゅうぶんだ。残念なのは太字表現の濫用などだ。今回の賞の応募作品群全体でしばしば見られたのでここで言っておくが、太字表現や書体遊びは必ずしも禁じ手ではないものの、濫用は目が滑るだけだ。実際使いこなせてるやつはほぼいなかった。やりすぎはだめだ。少なくとも、書いてる自身の中で明確に使用ルールを定めたうえでやったり、過剰にならないように頻度を控えたり、とにかくもっと自覚的になり気をつける必要のあるテクニックだ。この作品においても太字はまったく不要だったが、作品そのものはそれを補って余りあるくらいダークファンタジーとしての魅力を感じたので選出した。おれは続きを読みたいと思う。


逆噴射聡一郎:第1回のCORONA受賞者による作品。得意とするブラックカルチャーをメインモチーフに、大統領をフリー素材としてミキシングし、ホワイトトラッシュ小説のような軽妙な語り口でまとめている。最新のアメドラや映画のどこかでみたような風景、どこかで味わったような空気感を効果的に借景し、最低限の描写だけで話の本題をグイグイと進めていく手腕は、相変わらず上手い。筆力があり、読んでいるだけで爽快だ。残念ながら今回の応募作においてはシチュエーションの中でのやり取りに終始した感があり、サグ要素のある単語が活ききっておらず、突き抜けるパンチがもう一歩ほしかった。そこが大賞候補に残らなかった理由となった。この作品は最も良かったものの、売人のところに大統領がやってくるくだりそのものが説得力・必然性に欠け、うまくハッタリがきかせきれていなかった。この作者は実力・才能自体は疑いがないので、このままたくさん書いていき、中編・長編を作っていくべき時がきているのではないかと思う。


逆噴射聡一郎:レトロで耽美な、日本の古典怪奇漫画を思わせる一貫した雰囲気に魅力があった。アングラ的なテイストの作品はそのアングラさを提示するだけで終わりになってしまう場合が多いものだが、この作品は夢の吸引行為にロマンがあり話に強く興味を持った。後半の突然夢から覚めたような転換もよい効果をあげていたし、実際このまま話が続いたら面白いものが読めるだろうと思わされた。土台は十分しっかりとしているし、これならば多少いじっても揺るがないのだから、もう少し現在のタイム感を感じさせる要素を配合しても良いのではないか。


逆噴射聡一郎:ゲーム配信におけるスワッティング問題を扱った作品。スワッティングとは銃社会においてヘイターの連中がSWATを通報し配信者の家に踏み込ませる悪質ないたずらで、実際死者も出て最悪なこととして、現代社会において特殊で興味深いトピックとなっている。つまり題材選択とドライブ感あふれる展開のさせ方で、戦略勝ちができている。ただしスターウォーズの冒頭あらすじ字幕的な説明に終始しているのでショートショートっぽくなっており、そこが改善の余地だ。逆に言うと、それを補っても選びたいと感じた魅力があったので、この題材と展開で実際にキャラクターを配置して動かしていくとよいだろう。うまく現実の要素を配合できれば、社会的問題の最新トピックとしても、かなり広い層にアピールできると思う。


逆噴射聡一郎:プロレス殺人シチュエーションもの。メタさや不条理さのあるものは、相当うまくやったり話自体を面白くしないと虚無的で読めたものではなくなる危険があるが、この作品はまず絵的に面白かったうえに、勢いがあり、「プロレスで殺人おもしろいでしょ?」で出落ちにせず、そのまま話を本気で進めにいっており、メチャクチャな出来事でありながら先を気にさせて、エキサイティングを感じさせ、魅力があって捨てがたい感じがした。やや癖のある文体は、数万文字を読み続けることを考えるとやや不安があるので、いっそ奇をてらわず平易に書いたほうがよいだろう。とはいえ、ここぞという場所でこのドライブ感を出せれば、非常に効果的に仕上がるはずだ。800文字のうちにこの後の緩急のメリハリまでも予感させれば、さらに評価は上だった。


逆噴射聡一郎:織田信長の正体が吸血鬼であり、その復活を察知したヴァンパイアハンターの第十八代目明智光秀が戦いに臨む、という流れ。いわゆる歴史マッシュアップもの、かつハンティングものの2要素を持っているが、消化不良を起こさず適切にまとめあげている。この大賞においてハンティングものは「800文字使って狩りの準備や設定開示ができて、さあ出発」となり、何も話が動いていないために選外となることが多かったが、この作品は無駄な描写をうまく省いている。文章からは安定した力量が感じられ、続きを読んでみたいと思わせたし、また話のモチーフも王道中の王道なので、おかしなことにはならないだろうという良い意味での安心感があった。そういう意味では、素材やマッシュアップテーマの適切なチョイスの好例だと思う。とはいえあと一歩、キャッチーな要素も欲しい。例えば魔狩人ものの定番といえば、「なんだそれ?」と思わせるような奇妙でかっこいいガジェット装備だ。これはインパクトのある造語を短い文字数で見せつけるチャンスでもあるので、冒頭のフックとして隙あらば仕込んでいくのが(この大賞においては)正解と言えるだろう。やりすぎは良くないが、そうした魔狩人アイテムがハーレーダビッドソンと倶利伽羅江だけというのは、やや寂しく感じられた。


逆噴射聡一郎:パルプの精神とは古典的なクライムやハードボイルドや剣と魔法だけではない。現在はポップなシュールレアリズムもそこに含まれている。この作品は一見するとただの絵本であり、小説大賞において場違いなように思えるかもしれないが、パルプ的な勢いと語りのエネルギーをスパイスとして転化し、児童向け絵本のフォーマットに落とし込んでおり野心的だ。そして面白い。面白さがすべてだ。「特にドーナツ!」「ドーナツの穴にはまりながら食べるのが大好き!」などにかなりのパワーを感じる。おれは児童文学は専門外だが、絵本としてちゃんと仕上げて、しかるべき場所に持っていけば、普通に出版されるレベルの作品になると思った。



以上で大賞&入選作品群の紹介とコメンタリを終了いたします。全作品に1個1個目を通して行った逆噴射聡一郎先生、および審査員の皆さん、お疲れ様でした。そしてこのイベントに参加してくれた皆さんへ、ありがとうございました!


選考に際しての雑感

選考に関して審査員の間で交わされた言葉などをここにメモ的にまとめておきます。「なんであの作品が選考外なんだろう?」と疑問におもった方は、ぜひ目を通してみてください。


・タイトルは大事:あまり奇をてらい過ぎず、なおかつ内容に興味を持たせる過不足ないタイトルが理想である。究極をいうと、そのタイトルで書店に並べられるか? という緊張感を持つ必要がある。タイトルは作品の看板であり、もっというと、並んだ選考通過作品のタイトル群は今回の逆噴射小説大賞の看板でもあるから、選考する者も慎重に吟味する。「タイトルが惜しい」という理由で最終選考に残らなかった作品は実際いくつかあった。

・きれいにまとめすぎない:「これは面白いが、ここに書かれた内容で既に完結してしまっていないか?」「このアイデアは面白いが、そこから先の話に繋がっていきそうか?」という判断は、二次選考の時点でも行っていたが、さらに慎重に考えた。800字内で閉じていなくても、「展開が予想でき、予想の範囲内で終わってしまいそうだ」と思われる作品も、やはり最終選考には残りにくかった。逆に言えば、落選となったものの中には、800文字ショートショート大賞であれば最終選考に残っていたであろう作品はいくつも存在する(「なぜあの作品が?」の答えは大抵これだ)。しかし今回は、ワン・アイデアの巧みなひねりや小作品としてのまとまりよりもむしろ、その先に広がる「続きの読みたさ」が重視された。あくまでもこれは、逆噴射小説大賞だからいえることだ。

・ルサンチマンにとらわれ過ぎない:世の中や世間をクソだと感じる怒りのパワーは、時として創作のエネルギー源にもなるが、その発露には注意が必要だ。エンタテインメントに適切に落とし込まれないと、読者が読んでいて単に苦しいものになる。パルプはエンタテインメントであるので、この観点は重要だ。過剰な暴力表現やゴア、攻撃性、憎悪の表現は、ときとしてアッパーなハイテンションを得られるが、意識して手綱を握っておかないと、たんなる露悪やニヒリズムに終わってしまう危険がつねにある。

・R・E・A・Lさ:これに関しては、パルプ小説講座13章に詳しい。

・文章力ももちろん大事:R・E・A・Lを文章に落とし込むには文の質感が要求される。それを裏付けるのは文章力そのものである。基礎的な文章力の確かさは、書き手の夢、瞬発力、勢いのパワーを読者に届けるための重要なレールである。文章力がおぼつかないと、情熱は届ける途中でボロボロと空中分解し、スポイルされてしまう。主語述語、てにをは、そういった基礎文章力は、(後から敢えて崩すとしても)一度は真剣に向き合う必要が絶対にある。適切に崩すためにはまず相応の文章力が必要なのだ。

・斬新さをアピールしすぎない:目新しさや現代性(今それをやる意味)はもちろん必要だが、いわゆる「斬新な設定」というのはあまり必要ない。現代において、既視感のない設定は稀で、基本的にさまざまな既存要素の組み合わせだ。だが別にそれでいいのであって、むしろ渾然一体となったミームの延長線上、巨人の肩の上に構築した設定において、どれだけディテールや展開やテンポを洗練させるか、語り口を工夫してアッと言わせるか、実際に読み手にとっての面白さに繋げられるかが大事なのだ。そこに気づかず「どうですか、これは斬新ですよ!」と主張することをメインにした場合、実際には斬新ではないので、強みがゼロになる。そうなるともはや、作品自体が宣伝文句のようになってしまい、作者の表情が透け、独りよがりで上滑りしてしまうため、マイナスになることすらある。「斬新です。当たり前です」くらいの地の文のテンションで臨み、プロフェッショナルなストーリーテリングに集中するべきだ。

・文で笑わない:「文が笑っている」というのは悪文の1つの類型である。これはいわば、読み手が「自分のネタでクスクス笑いながらネタを披露するコメディアン」を前にしたような気分になる文章を指す。破天荒な内容であったり笑いを誘う内容であっても、登場人物の態度は物語に対して真面目であるべきだし、文章自体は、まずは平易な筆致を心がけたほうがよい。笑っている文を自覚的にやる場合、それは「敢えて行う」たぐいの高等テクニックであり、語り口の一貫したテンション調整、読者とのコンテクストの共有などが条件となったりもする。どちらにしても挨拶代わりの作品には「笑っている文」は稚拙な印象となるので避けたほうがよい。

・体験の反映:犯罪をやっていないと犯罪を書けないなどという事はないし、ルーマニアに行っていなくてもドラキュラは書ける。しかし少なくとも、実際に体験していない物事を「頭の中で考え、想像し、体験する」やり方を確立しなければ、説得力をもってアウトプットする事はできない。中学生や高校生が、何の努力もなしに、NY市警の日々の苦闘の話を正しく書けるだろうか? 西部劇を見たこと無しに酒場の諍いを書けるだろうか? 今まで音楽を聴かずクラブカルチャーに触れてきていない人間が、何も考えずにダンスフロアを描写できるだろうか? 体験がなければ資料を集めて想像する必要があるし、体験があっても血肉化できるまで考え抜く必要がある。ディテールを知るほどに怖くなり書けなくなるが、それでも試行錯誤して書いていく。その葛藤を経ていないテキストは緊張感がなく、見透かされる。日々、推察の力、人間を理解する力を磨き、筆致を突き詰め・あるいは上手にごまかす技を身に着け、知識を学び、蓄積していく必要がある。Practise Everyday.....



未来へ

いかがだったでしょうか。逆噴射小説大賞は通常の小説大賞とは根本から異なるかなりピーキーなレギュレーションなので、いわゆる名作の冒頭800文字をそのまま持ってきてもインパクトが出るとは限らないし、逆にこのレギュレーションに特化しすぎても小説として本当に面白くかつ広い層に楽しまれるものになるかどうかは、全くの別物です。審査自体も、逆噴射聡一郎先生のその時の気分で選ばれたものであり、あまり重く捉えすぎないでいただければと思います。

コンテストの形式をとっている以上、やはりどうしても「選ばれた作品」と「選ばれなかった作品」は出てきてしまいます。特に今回はファンイベントではなく、CORONAという黄金を奪い合う「コンテスト」であり、中には小説家を目指す人も多いでしょうから、この結果を重く受け取ってしまう人もいるかもしれませんので、あらかじめて書いておきたいと思います。

エントリー作品収集マガジンを見ていただければわかる通り、驚くほど幅広いジャンルの、多種多様な作品群が集まりました。パルプには無限の可能性があり、ほぼ全てのジャンルを内包しうるタフさがあることの証明と言えます。しかし正直に言ってしまうと、審査員である我々が、その全てのジャンルを守備範囲としてカバーしているかどうかは、また別の話です。当然ながら、ダイハードテイルズのカラーだけがパルプの全てではありません。パルプの中でも、我々は我々の独自のカラーとカルチャーを持っています。また、コンテストというのは、半分、運もあります。審査員のバイオリズムも毎日同じではありません。たまたま何らかの理由で、選ばれるべきだった作品が電子的なエラーで表示されず、選考に含まれなかったなどということさえ起こりうるかもしれません。

要するに、どんな規模のコンテストもそうですが、それは人生のゴールインでも世界の終わりでもないのです。たとえどこかで新人賞を取ってデビューが確定したとしても、創作はそこから先も一生続いていきます。毎日プラクティスなのです。なので、こういった賞への応募活動に参加するにあたっては、選ばれなかった事を理由に自らのモチベーションを減退させるべきではありませんし、納得がいかないからと運営サイドに掛け合おうとしたり執着してはいけません(そんなことをしている暇があるならとっとと次の作品を書くべきです。どんなステータスのクリエイターであれ、結局最後は自分自身との戦いであり、外部の力に期待しすぎてもいいことはありません)。今回だめだったら単に気持ちを切り替えて次にいけばいいだけの事です。

特に、逆噴射小説大賞は冒頭の書き出しを競うかなり尖ったコンテストです。仮にそれが賞を得られなくても、そのまま書き続けていった結果、一個の作品としてアッと驚く内容に仕上がる可能性も当然あります。今回二次選考に通らなかった作品も、ぜひ、他の発表の場で公開してみてください。どれがそうだ、というのは特に明言しませんが、今回選考突破作に含まれなかった作品のうち「この作品、最後まで仕上げてうち以外のところに出せば、いいところまで行くはずだな」と思われた作品も少なくありません。

また逆噴射小説大賞は、大賞を受賞してもコロナと栄誉がもらえるだけで、我々ダイハードテイルズ側は一切出版などの権利を主張しないという稀有なコンテストです。受賞しなかった応募作についても同じです。あなたが書いた作品はあなた自身のものです。ですから、書いていてあなたが手応えを感じた作品は、ぜひ仕上げて、その作品が最も向いていると思われる場に投稿してみていただきたいと思います(もちろん #逆噴射プラクティス への投稿も引き続き歓迎です)。

このイベントを「生まれ出なかったかもしれなかった物語を書くきっかけ」にしていただければ、ダイハードテイルズ一同、これに勝る喜びはありません。実際、既に、自身の応募作品の「続く」の先を書いていっている方々を散見できます。是非完成させて、世に送り出してください!


次回「第3回逆噴射小説大賞」は、2020年10月に開催予定です。文字数などのレギュレーションはまた変わる可能性があるので、2020年10月の発表をお待ちください!

(ダイハードテイルズ出版局)


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