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マッド・ドッグ・ジョーンズ展と精神的サイバーパンク(杉ライカ)

前回の記事でも書きましたが、1日だけアーティスト本人の来場するサイン会があったので、そこを狙って渋谷DIESELギャラリーの「マッド・ドッグ・ジョーンズ展」に行ってきました。マッド・ドッグ・ジョーンズさんの初来日個展です。

マッドドッグジョーンズ展へ

ちなみにDIESELはロックテイストがある近未来的なウェアや、異文化ミクスチャー系のサイバーパンク風ウェアなども多く、個人的に昔から好きなアパレルブランドだったので(もう20年近く好き)、好きなアーティストとのコラボで二重に嬉しいです。

会場はこんな感じになっていて、目を引くのはなんといっても過剰なまでのネオン風の光を放つ棒・・・・ネオン棒ですね(ネオンではない)。これだけでもまず最高にサイバーパンクでテンションが上がるのですが、それだけでなく、この照明効果によってデジタルのプリントアートが適切な照り返しを受け「ここでしか見られない」色彩を生み出しています。

デジタルアートの場合、それをギャラリーで物理的に展示すること、そしてそれをプリントとして販売することの意味づけというのは、特に重要だと思うのですが(もちろんサイズのデカさも一つの答えなのですが)、このネオン棒はそれらの課題を軽々とクリアしています。

立体もあったよ。ディスプレイ台への映り込みも美しい。

ネオン棒の効果は、例えば下のこれなんかわかりやすいと思いますが、インスタとかに上がっているデジタルの原画がこれ。

そして下が、会場で展示されていたもの。

もういっこ例示します。これが原画。

下が展示物です。女性の顔の横にあるピンク系のネオン棒と、フグのあたりにあるブルー系ネオンが照明効果です。

ネオンの映り込みは、鑑賞者の立つ位置や写真を撮ったりする角度によって、全く違う表情を帯びるわけです。

普通の白い壁に掛けられて白いライティングがなされた現代アートの展示だと、むしろ照明の白い映り込みなどは、単なるピクセルの欠損なので、避けるように撮影したくなるのが普通ですが、こういうライティングならばどんどん「不完全な形で」何枚も撮りたくなる。むしろ照明によって「不完全な形で」あるほうが楽しく、そのほうが完全であるように思える。この辺りの楽しさは、インスタで一躍有名になったマッド・ドッグ・ジョーンズさんならではだと思います。

これにより平面のプリントに三次元的な奥行きと、ここでしか見られない一回性が、鋭いセンスと適切な低予算で(ここ大事)クレバーに付加されているのだと思います。たとえばチームラボなんかは、ものすごい予算をかけて100%力技で、完全に視覚的、空間的なAR効果を生み出しているんですが(それはそれで凄いし好きなんですが)、こちらの場合は半分以上イマジネーションというか鑑賞者の人力を使って拡張しているわけですよね。そこが好きです。

ちなみに、個人的に昔からこの「ー」が縦書きなのに横に入っているネオンカンバンが非常にサイバーパンク的、ネオサイタマ的で大好きです(「コレジャナイ日本」とか「勘違い日本」とかいう言い方は否定的で狭量なニュアンスが含まれるためあまり好きでないので、こうした多様性を肯定して飲み込む器として、ネオサイタマ的、という表現がメジャーになって欲しい。もしくは単純にサイバーパンク的、と呼ばれるようになって欲しい)。なんかこう、シノワズリみたいに早めに名前をつけたほうがいいんじゃないですかね。

これらがあるだけで簡単に、そこは「見慣れた渋谷ではない、どこかの異空間」になるからで、いわば精神的、イマジネーション的なARといえます。一昔前は、どれだけこういうものの良さを周りに伝えても「こんなのはゲテモノ」「絶対に支持を得られない」「間違った日本であり認められない、それが好きなお前は変」的に言われていたものですが、「エンドゲーム」とかの日本シーケンスの受容のされ方を見ても、最近は以前よりこういう表現に対する国内のアレルギーが減ってきている気がしているというか、楽しみ方のわかる人が増えてきている気がして嬉しいです。

そのような変化の理由は専門家の人に分析して欲しいのですが、いい加減もう「正しい日本文化警察」的なものや過剰なクラスタライズに飽き飽きしたり、息苦しさや狭苦しさを感じたりして、無意識のうちにその先の楽しそうなものに進みたいと考えている人が増えているのでは……? そうだといいな。そうあってほしい。的な気分になりますね。それこそがサイバーパンクやミクスチャーの精神性にも直結しているわけですし。

というか単純にまず、カッコいいんですよね。カッコいい。それが大事。そしてその楽しみ方とか、キーワード的なものがすごく簡単に言語化されれば、もっと楽しみは広がるはず。理論を一旦すっ飛ばして、まず感覚から入れるのが、アートの力でもあるので、ダイハードテイルズでもそういった良さを引き続き発信していけたらと思います。

ちなみに開始から1週間足らずで、プリント含めアートワークはほぼ全て完売していました(グッズ系もいくつか売り切れ)。もし残っていたらサイン入りプリントかパネルを買いたいと思っていたあのフグの絵も残念ながら完売。大盛況ですね。

会場は渋谷のDIESELギャラリー(地下鉄出てすぐのディーゼル店舗の地下にある)で、会期は11月までと結構長いので、渋谷に行く機会のある人はぜひ立ち寄ってみてください。オススメです!

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