ニンジャスレイヤーTRPGミニゲーム:ボトルネックカットチョップの作法
「国際探偵だと、生意気な……!」アイアンフォージドはガントレットに覆われた拳を握った。「いいか、これを見ろ!」彼は棚から強化ガラス瓶入りのケモビールを取り、それをオー・オーに持たせた。そして上に向けた手のひらを、ケモビール瓶の横にそっと添えた。これは……ボトルネックカットチョップの構えである!
「イヤーッ!」
アイアンフォージドはカラテを一点集中させ、横一文字にチョップを振り抜いた。凄まじいまでの切れ味であった。まるでダイヤモンドカッターで切断されたかのごとく滑らかに、ビール瓶の首が跳ねられたのだ。
それは即ち、このアイアンフォージドという筋骨隆隆たるニンジャが、単なる力任せのカラテだけではなく優れたワザマエをも併せ持つことの、何よりの証左であった。古事記にもある通り、ボトルネックカットチョップはカワラ割りと並び、ニンジャの力量を比べマウンティングを行う為の、もっとも基本的な作法の一つである。
「どうだ、貴様のカラテを証明してみせるがいい!」
アイアンフォージドは切断したビール瓶を持ち、ごくりと煽りながら、サツバツナイトを指差した。他の傭兵ニンジャたちも興味深そうにこのやり取りを一瞥し、ニヤニヤと馬鹿にするような笑みをツインテイルズ、オー・オー、そしてサツバツナイトに向けた。スナブノーズとソリチュードに至っては、アイアンフォージドの後ろで賭けを始めていた。
「よかろう」
サツバツナイトと名乗る男は、投げ渡された強化瓶ビールを木製テーブルの上に無造作に置いた。だが……ビール瓶の固定はしていない。このままでは仮にビール瓶をチョップでカットできたとしても、瓶が倒れ、ブザマな結果を晒すこととなるはずだ!
(なんと愚かな……! ボトルネックカットチョップの作法すらも知らんのか!)アイアンフォージドは思わず、フルヘルムメンポの奥で含み笑いを漏らしそうになった。だがトレンチコートの男は意に介さず、弓を引きしぼるように振り上げ……横一文字に振った!
「イヤーッ!」一瞬、サツバツナイトの瞳が赤く輝いた。次の瞬間、振り抜いた腕は瓶の反対側へと達していた。
瓶は? 一瞬だけその場でカタンと小さく跳ねただけだった。次の瞬間、チョップ手が通過した部分に真っ赤な線が走り、焼き切れた。オー・オーがそれをサイバネ腕で掴み上げると、思い出したかのように、切断面からケモビールが溢れ出してきた。ナムアミダブツ……!
「ワオワオワオ」スナブノーズが身を乗り出し、切断面を指で触れ、残留する確かなカラテ痕跡を感じ取った。「アンタァ、凄いカラテじゃねえの!」
「フゥーム……まあいい! なかなかのカラテだと言っておこう! 頭数は多い方がいいからな!」アイアンフォージドは、ボトルネックカットチョップで開けられたビール瓶二本を不機嫌そうに腕でなぎ払って床に落とした。「今回は特別に俺のチームに加えてやるから感謝しろ! 絶対に勝手な行動は取るなよ!」
- 【クルセイド・ワラキア】より
ニンジャたちはしばしば己の力を誇示するために、カラテ演舞や瓦割り、そしてボトルネックカットチョップなどを行う。ここで紹介するのは、それをニンジャスレイヤーTRPGのルールで再現した簡単なミニゲームだ。基本ルールブックがなくても、下のガイドに沿って作ったPC2人で十分にプレイできるぞ。
ボトルネックカットチョップの作法
このミニゲームは2人のニンジャの間で行われる。片方のニンジャが先攻、もう片方が後攻となる。通常は勝負を仕掛けた側が先行となるので、ロールプレイで解決してもいいし、能力値の合計が高い方にしてもいいし、あるいは単純にダイスやジャンケンなどで決めてもよい。
1:並べる強化ビール瓶の本数を決定
先攻後攻が決定したら、まずは先攻ニンジャが「強化ビール瓶を何本並べるか」宣言すること。その上限は、自分の【カラテ】+【ワザマエ】の合計値までである。これを受けて、後攻ニンジャも「強化ビール瓶を何本並べるか」宣言する。上限は同様に、自分の【カラテ】+【ワザマエ】の合計値までである。
例:エミリーのニンジャとボブのニンジャは、ボトルネックカットチョップの作法で戦うことにした。ボブが先攻となった。ボブのニンジャは【カラテ】3、【ワザマエ】4なので、最大で7本まで並べることができるが、7本カットに成功できる確率はかなり低い。そこでボブは無難に3本の瓶を並べることにした。後攻のエミリーは4本を宣言した。
2:先攻が本数を増やしてもよい
後攻の宣言が終わり、かつ、その宣言した本数が先攻よりも1本以上多かった場合、先攻ニンジャ側は「並べる瓶ビール数を増やす」ことを宣言してもよい。ただしこれには【ニューロン】値の判定が必要に成功する必要がある(難易度:NORMAL)。成功した場合、最大で後攻と同じ本数になるまで何本でも瓶の数を増やすことができる。
先攻ニンジャが瓶を増やす必要はないと思えば、これを飛ばしてよい。
3:先攻がカットを行う
先攻ニンジャが先に、目の前に置かれた自分の瓶ビールと向き合い、カットを試みる。自分の【カラテ】+【ワザマエ】の合計値に等しい個数のダイスをまず用意すること。そしてあたかも、その瓶ビールの本数に等しい回数の『連続攻撃』を行うかのように、このダイスを分割するのだ。
例:【カラテ】+【ワザマエ】の合計が7、つまりダイス7個で判定できるボブのニンジャは、「ビール瓶を3本並べる」と宣言していた。よってこの7個のダイスを『連続攻撃3』のように3個+2個+2個と分割する(なるべく均等に、かつ最初に行う判定の方が多くなるようにする)。同様に「2本並べる」と宣言していた場合は『連続攻撃2』であり、4個+3個である。同様に「4本並べる」と宣言していた場合は『連続攻撃4』であり、分割は2個+2個+2個+1個である。ボブのニンジャがかなり野心的で「7本並べる」と宣言していた場合は、『連続攻撃7』であり、分割は1個+1個+1個+1個+1個+1個+1個となる。
分割するダイス数が決まったら、『連続攻撃』の1発目から判定するようにして、順にダイスを振っていく。なお、ボトルネックカット判定は【難易度:EASY】、つまり出目3以上で成功だ。判定に成功したら、2発目、3発目のように処理していく(実際はチョップ一閃が行われているわけだが、スローモーションで動いていると考えよう)。この時、各判定で出た出目6の個数を控えておくこと。
判定に失敗した場合(つまり出目3以上のダイスが1個も無かった場合)、後に何本ビール瓶が残っていようとも、そこで判定は終了する。単にカラテが足りずに手が止まってしまったか、あるいは、ワザマエが足りずにそこで瓶を粉々に砕いてしまったのだ。どちらにせよ、これはかなりの恥ずべき結果であるといえるため、評価に大きなマイナスとなる。調子に乗って本数宣言を多くしすぎると、自滅してしまうのだ。
こうして、並べていた全ての瓶のボトルネックカット判定に成功した場合、チョップ手は反対側までスムーズに通過し、ボトルネックカットチョップされたビール瓶からはビールが溢れ出す。……完全成功である!
4:後攻がカットを行う
次は後攻ニンジャが同様に判定を行う。
5:勝敗の決定
何本カットできたかを比べ合うこと。より多い本数をカットできていた側の勝利となる。
カットした本数が同じになることも多いだろう。カットできた本数が同じだった場合、各判定時に出目6で成功していたボトルの本数を比べること。それは見事な切り口であり、このようなボトル本数がより多かった側の勝利となるのだ(周囲で見ていた者たちは、高いワザマエを讃えるだろう)。
「おい待て……見てみろよ、この見事なチョップカット断面を……!」
これもまた同じだった場合、最終的には出目6が2個以上(すなわち『サツバツ!』)で成功しているボトルの本数を数えて比べよ。このようなボトル本数がより多かった側の勝利である。これすらも同じだった場合は……引き分けだ!
先行後攻どちらも途中で失敗してしまった場合、それまでにカットした本数で決めてもよいし、あるいはお互いに恥ずべき結果であったと認め合い、奥ゆかしく引き分けにしてもよい。
先行後攻どちらかが途中で失敗し、もう片方は最後までカットに成功した場合、本数に関係なく、最後までカットした側の勝利である。
その他オプションなど
NMが許可するならば、【カラテ】や【ワザマエ】に対応するサイバネなどで振れるダイスの総数が増えることにしてもよい。【精神力】による自動成功はややこしくなるので使用しない方がいいだろうが、成長したPC同士なら逆に駆け引きが生まれて面白いかもしれない。他にもNMと色々とオプションを考えてみよう。セッションに仲間が遅れている時の暇つぶしとして、もう集まっているPC同士でミニゲームを遊ぶのもいいし、ちょっとしたアクセントとして、ボトルネックカットチョップの結果によって物語の進行を左右するようなシナリオを考えても面白いかもしれない! 何かいいアイディアを思いついたら、ぜひ記事やDiscordなどで報告を!