朔之女学院の呪い(冒頭800字)
伊月ウイは三人の中で一番弱かったが、殺されたのは最後だった。
最初に殺られたのは須藤ミマ。天井から落下攻撃を仕掛けた彼女を、騎士は振り向きざま斬って捨てた。二刀流のカタナ。事前情報通り、近接タイプの騎士だ。だが、速さが異常だった。
ミマの呪いは朔女の第二学年で最強と言われていた。緑のバレイヤージュも似合っていた。その彼女が容易くバラバラになった。
「まず一匹だ!」
甲冑の騎士が吠えた。騎士は人語を解する。なのに人間をただ殺す。身長も三メートルある。最悪だ。
戦場となったのは白昼のバッドバーガーの店内で……既に一般人が沢山死んでいた。このご時世、人々がリモート無しで触れ合える場所はバッドバーガーと温泉ぐらい。安全神話が奪われた。
BRRRRTTT! 赤い火線が閃き、騎士を焼いた。佐々木フミナが召喚したミニガンだ。発射速度毎分3000発の火力を浴びせながら、フミナはウイを促した。
「やれよ!」
「うん!」
ウイは己を奮い立たせた。騎士はカタナで掃射を防御。ウイは背後に回り込み、023式電磁ナイフを虚空より召喚し、甲冑の背中に突き刺す。
騎士の尻尾のヤバさを知ったのはその直後。つまり食らった後だ。だからウイはザコなのだ! ナイフより早く、筋肉の塊がウイの腹を殴った。ウイは吹き飛び、壁に衝突した。
騎士は弾丸の嵐の中で加速し、踏み込んで、フミナを斬り殺した。最後に、ウイにトドメを刺した。
◆◆◆
「どこ」
ウイは焦った。蘇生地点がいつもの校舎屋上と違う。菩提樹……?
「ここは中庭。植物園だよ」
噴水の縁に腰掛けた三年生が、ウイに教えた。ウイは叫んだ。
「一丞、さん!」
「私を知ってるの?」
愚問だ。一丞カノリを知らない朔女など一人も居ない。右脚のクロームの義肢、欠けた右耳。つまり、蘇生経験ゼロの女!
「ここは私の秘密の場所。他の人が来たのは初めてだよ」
カノリは目を眇めた。
「きみは何故、ここに?」
【続く】 (800文字)
今すこしずつ書いているものの冒頭を、少し整形して800字にしてみました。ある程度まとまったら完成品を上げると思います(いつになるかは未定です……日の目を見るかも未定です)。逆噴射小説大賞への参加作品ではありません。
本兌有
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