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【フォ・フーム・ザ・ベル・トールズ】 後編


【承前】

「見張り塔にいるニンジャがレーザーを撃つんです。だから、ここからは絶対に逃げられないんです……」消灯時間近く、テマリは声をひそめ、ヤモトの耳元でその恐るべき秘密を明かした。「レーザーか……」ヤモトは思案した。

 敵は間違いなく手練れだ。下手に動けば他の女子高生を戦闘に巻き込んでしまう。可能な限り開けた場所でアンブッシュを仕掛け、ニンジャを一撃で倒さねばなるまい。仕留め損ねて長期戦になれば、敵は闇雲にレーザーを照射するやもしれぬ。たとえ流れ弾であろうと、レーザーが掠めれば、間違いなく女子高生は原子分解して死ぬだろう。

「……それに」テマリは、ミラの哀しげな顔を脳裏に思い描きながら、続けた。一時の恐怖と混乱が去ると、今度はミラへの同情の念が湧き上がってきたからだ。「もし私だけ逃げられても、きっと他の女子高生が酷い目に……」そこまで聞くと、ヤモトは彼女を勇気付けるように微笑んだ。「解ったよ、作戦を練ろう。もっとこの施設のことを調べなくちゃいけない」


◆◆◆


 それから数日が経過した。ヤモトはニンジャの力を隠しながら、女子高生たちに紛れ、材木や石材の切り出し、運搬、オリガミ作成などの強制労働に従事し、テマリと寝食を共にした。

 女子高生たちが死んだマグロのような目でオリガミを折り、折鶴を重箱の中に並べ、重ねて蓋をしてベルトコンベアに流してゆく虚無的光景は、ヤモトの目に静かな怒りを燃え上がらせた。だが……それらオリガミを集めた大型廃棄箱は、ヤモトにとっての火薬庫ともなるのであった。

 決行は七日目の午後と決まった。その日、その時間、テマリとヤモトは大量の廃棄折鶴が入った大型台車を、トーチカ状収容施設の裏口から採石場付近の焼却炉へと運ぶことになる。その時間帯が勝負だ。それまでに二人は、女子高生収容所の監視やシステムについて可能な限り調べ上げ、作戦を練った。

 ニンジャは見張り塔に一人。他にはクローンヤクザが多数。職員はすべてクローンヤクザであった。

 収容所から女子高生全員を安全に脱走させるには、これら全てを排除する必要がある。加えて、非常時用の警報や緊急ロック隔壁があることもまず間違いない。そしてニンジャか、クローンヤクザか、緊急ロック装置、いずれかに対して攻撃を加えた時点で、敵はそれを察知するだろう。

 ゆえに、まずは最大の脅威である見張り塔のニンジャを、そして可及的速やかにクローンヤクザを殺さねばならない。それが二人の出した結論であった。そのためには、テマリも危険を冒さねばならない。だがニンジャであるヤモトが側にいることで、テマリは勇気を奮い立たせることができた。

 かくして、運命の七日目が訪れた。

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