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【帝都探偵奇譚 東京少年D団】キャラクター紹介3:怪人二十面相

怪人二十面相。本名不詳。年齢不詳。知能指数180〜350。帝都を騒がせる魔怪盗。いかなる姿にでも変装でき、その素顔を知る者はいない。誰も予想だにしない奇抜かつ魔術的な手腕によって、狙った美術品を予告通りに必ず盗み出す。社会を憎み、資本家、支配階級の財産を奪い辱める事に無上の喜びを見出す凶賊だが、直接的な殺人行為は決して行わない。またジュージュツの達人でもあり、大勢の警官を相手にしても火の粉混じりの黒い蒸気のように包囲を突破し、鮮やかに逃げおおせる。

「だがあいにく、ぼくは真に自由な存在であり、真実を弄ぶ資格を持つアーティストなのだよ」


帝都を騒がせ人心に悪の種を蒔く、邪悪な魔怪盗

「東京少年D団」の舞台となる1920年の帝都は、蒸気機関産業の利益を握った資本家の経済的暴力と経済格差、特高警察による締め付け、そして暴発寸前のアナキストやコミュニストらが渾然一体となった、まさに魔都である。帝国臣民は常に、お上の機嫌をうかがい、びくつきながら暮らしている。しかしそうした重苦しいアトモスフィアに少しも縛られず、欲望の赴くままに犯罪行為を成功させ続ける邪悪なる怪盗が存在していた。その者は現金や株券には目もくれず、専ら、貴重な美術品や歴史的遺物を盗み出す。しかも盗む日時をあらかじめ被害者に知らしめた上で犯行に及ぶ。大胆不敵な悪夢的犯罪者……その名は怪人二十面相だ。

 二十面相は日夜、帝国臣民の噂の種となっている。その年齢、性別、素性、背格好、何もかもが謎である。なぜなら二十面相は変装の達人であり、犯行に際し、その外見を自由自在に変えて現れるからだ。あるときは老人、あるときは若い男、あるときは貴婦人、あるときは浮浪者……。彼が化ける事ができない姿はなく、その真の姿がどのようなものかを知る者はいない。


冷酷かつ鮮烈な盗みの手口

 二十面相は冷酷非情な犯罪者であり、他人に対する慈しみの心やリスペクトは欠片も持ち合わせていない。必ず詳細な犯行予告を行うのは、彼の自信と美学に裏打ちされた行動であると同時に、標的を恐れさせ、じわじわと苦しませる為の演出でもある。彼は専ら、名家・資産家を狙うが、盗み出した財産を貧民に分け与えるような義賊的行為には興味がない。犯行の際に直接的な暴力をふるう事はしないが、被害者に対して極めて残忍な精神的外傷を与える行為を厭わない。行方不明の子息に化け、家長のもとに現れ、再会と子息の無事の喜びの絶頂の中で正体を明かし、子息はいまだ行方不明のままである事を知らしめ、家宝を盗む……しかもそのうえで他の家族を誘拐し、人質として更に大胆な要求を行う。悲しみの傷をえぐり広げ、尊厳を奪い、屈辱の奈落に落とすようなふるまいに、容赦は一切ない。


庶民からの歪んだ支持と虚像

 二十面相の犯罪は常にトップニュースとして報道され続けている。しばしば三文パルプ小説や扇情的キネマの題材となり、黒マントを身につけ黒マスクをした口ひげシルクハットの変質者として描かれる(だがこれは、タナカ・ブラザーズ・キネマ社が作り出した虚像である)。

 彼の犯行が帝都臣民の噂にのぼらぬ日はない。上流階級の者たちは、いつその犯罪の矛先が自身に向くのかと心配し、眠れぬ夜を過ごしている。一方、持たざる者たち、日々の苦しい暮らしに鬱屈をかかえた庶民たちは、二十面相の大胆不敵の犯罪に驚き呆れ、恐怖しながらも、心の暗い部分では密かに快哉を叫んでいる。彼らは、持てる者たちへの妬みや反抗心、理不尽な現実への怒りを、二十面相という正体不明の存在に仮託し、灰色の日々における清涼剤としているのだ。賊一人取り締まれぬ警察権力への侮りが蓄積し、模倣犯は後を絶たず、アナキスト達は増え続けている。二十面相は己の犯行を通して人々を堕落させ、自発的に悪の道に進ませてしまう。二十面相とは、帝都の構造的な歪みが生み出した怪物でもあるのだ。


悪の組織

 怪人二十面相は単独犯ではない。彼は帝都のあちこちに隠れアジトを持つ。それらは一見、廃屋めいているが、奇妙な仕掛けによって秘密の地下室を隠しており、その奥底には不穏な邪悪犯罪者(ヴィラン)達がたむろしている。彼らは二十面相のカリスマに魅せられた者達で、まるで手足のように動き、邪悪な任務を遂行する。誘拐や破壊行為はお手の物だ。とくに腹心の部下達はコックとして二十面相の身辺の世話をし、おにぎりやハム、ゆで玉子を作るし、護衛としても働く。二十面相は己が逮捕されかかった時の身代わりとして、平気で彼らヴィランを使い捨てる。そしてヴィランたちも、自分が身代わりとなって警察機構を欺き手玉にとることに、この上ならぬ充足感を覚えるのだ。


小林少年への執着、封印されたトラウマ

 明智探偵事務所のかわいらしい天才助手・小林少年に対し、二十面相は並々ならぬ執着心を抱いている。彼は折に触れて小林少年に語りかけ、誘惑し、あるいは脅迫し、悪の道に引きずり込もうとする。小林少年は輝くような美貌の持ち主であり、知能指数も高い。その魅力には彼のような凶悪犯罪者ですら抗いがたいのかもしれない。あるいは、それは二十面相の封印された過去のトラウマに根ざすものであろうか。

 上流階級に対する二十面相の憎悪と害意は常軌を逸するものがある。犯罪の残酷さを見ればわかる通り、二十面相の中には確かに、社会に対する何らかの歪んだトラウマと復讐心が見え隠れする。だが悪魔的で虚無的なモチベーションだけではなく、稚気じみた無邪気な邪悪さも見え隠れする。実のところそれが、本来肉体的には絶対に敵わないはずの少年探偵らが二十面相に真っ向から対抗しうる理由となっているのだ。彼の精神が極限状態にあるとき、時折そのトラウマの一端が表層に浮かび上がる。炎上するサーカス団「大享楽天空団」とは……? 「20」の意味とは……?


次回の紹介記事は、帝都東京とサブキャラクター!

 いかがだっただろうか。江戸川乱歩における原作からして、怪人二十面相の行動には不可解な点が多い。小林少年に対してのみならず、少年探偵団と対峙した際にも、二十面相の行動は著しく精彩を欠く。彼は高い知能指数を持つ大の大人でありながら、しばしば子供だましのトリックを真顔で行使し、少年たちにまんまと出し抜かれ、逆にそれが彼の行動の異常なまでの猟奇性を炙り出し、我々の心胆を寒からしめる。この長年の問いに答えるため、「東京少年D団」では、怪人二十面相の生い立ちについて独自の設定を行っている。さらなる真実については、是非本編を読んでいただきたい。次回の更新は、帝都東京と怪人二十面相に翻弄されるサブキャラクターたちの紹介記事を予定している。お楽しみに!


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