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レリック・オブ・マッポーカリプス(4):魔剣ヘシキリブレード

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ヘシキリブレード / Heshikiri Blade

戦国武将「織田信長」ことオダ・ニンジャがコレクションした魔剣の一本。もとは平安時代後期にモータルの刀匠によって鍛えられ、無数のサムライの血を吸った業物である。カタナとしては比較的刀身が長く、騎乗時の得物としても適している。

刀身に刻まれた銘は「ヘ シ キ リ ブ レ ー ド」。かつては無銘であったこのカタナが何故、そのような銘を戴き、さらには魔剣とまで呼ばれるようになったのか。それは織田信長の抱えていた〈黒衣の小姓団〉と深い関係があった。


〈黒衣の小姓団〉 / the Dark Shroud

織田信長ことオダ・ニンジャは、己の喜怒哀楽や欲望を抑制せず、美や芸術、酔狂や享楽を重んじたセンゴク・ウォーロードである。

当時、ニンジャは平安時代ないしは神話時代より悠久の時を生きる半神的存在であって、支配階層についた伝統的リアルニンジャの多くは、卑近な人間的性質を「無作法」「他者に付け込まれる弱み」とみなした。それゆえ彼らは数百年から数千年の時を経て、爬虫類じみた、フラットで超然とした精神性を帯びていった。

しかし、オダ・ニンジャはむしろ自ら進んで刹那的なモータルの生きざまに学ぼうとした。彼は様々な美術品を集め、最新の演劇や音楽を愛好し、また、名匠や名工の類を庇護した。戦国武将としてモータルの生き様をつぶさに見つめ続けたオダ・ニンジャは、不朽不滅なる美術品だけでなく、ほんの数年で枯れ果て失われてしまうモータルの儚き美しさや情熱をも愛でたのだ。

そうした「酔狂」の一環として、彼は己が抱える小姓(身の回りの世話をさせる貴族の子弟)の育成にも力を入れていた。オダ・ニンジャは己の手の内の美少年たちを磨き上げ、上洛などの際には必ずこの「信長少年団」を引き連れ、他の武将に見せつける示威とした。やがて美しきランマル・ニンジャが織田信長の家臣に加わると、小姓たちは単なる酔狂の対象ではなく、恐るべき密偵団としての実用性をも帯び始めたのである。彼らは全員が黒衣を纏っていたことから、ダークシュラウド / Dark Shroudのコードネームで呼ばれることとなった。

〈黒衣の小姓団〉の筆頭として立ち働いたのはランマル・ニンジャであるが、それ以外は全員がモータルであり、カラテトレーニングすらも受けてはいなかった。「超常の力もカラテも持たぬモータルに、果たして密偵など務まるであろうか?」という疑問符はニンジャの傲慢そのものであり、むしろ付け入る隙であったのだ。確かにニンジャの中には、容姿変貌能力であるツツモタセ・ジツや、小動物などに化けるヘンゲヨーカイ・ジツ、あるいは非接触型のサイコメトリー系ジツなどを持つ者すらおり、密偵とするならば明らかにモータルよりもニンジャに分があると思われる。

だが平安時代から戦国時代において、ニンジャの密偵や間者は、むしろニンジャソウル感知系のジツによって対抗されやすかったのである。さらには「ニンジャであらずんば人にあらず」といった慢心が多くのニンジャ・ウォーロードたちの間で蔓延してもいたため、彼らの身の回りの世話をするような無力なモータルに対して、ニンジャの多くは羽虫を見るかのごとき注意しか払わなかったのだ。これを逆手に取った勇敢なる〈黒衣の小姓団〉の美少年たちは、ソーシャル活動の場でチャの手伝いをするだけでなく、斥候として働き、ときには他のウォーロードの領地に忍び込んで、様々なミッションを行ったのである。

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