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シャード・オブ・マッポーカリプス(5):ウキヨについて


 「ハイ、イラッシャイ」タキは寝ぼけ眼で入店者を見た。気弱そうな男だった。近所の人間じゃないな。真昼間、危険地域を観光にでも来たか? タキは見当をつけた。「あの、ここ……ピザ屋ですよね」男は尋ねた。タキは新聞を見ながら答えた。

 「見りゃわかるでしょ」「いやあ……」 男はあいまいに笑ってカウンターに近づいた。「ご注文は」「どんなピザありますかね……えっと、ポルチーニの……」「ポルチーニ?」タキは顔をしかめた。

 男は慌てて首を振った。「あ……ゴメンナサイ! それじゃあ、クアドロフォルマッジ……」「ア?」タキは顔をしかめた。「ゴメンナサイ!」男は慌てて首を振り、メニュー冊子に目を落した。「あの、これ……このノリとモチの……」「アー、ノリを切らしてる」「エッ、そうなんですか? 困ったなあ」「オレは困らねえな」

 タキは新聞をめくった。「エー……じゃあどうしたらいいんですか。ぼく、辛いのや、お肉が入っているのはあんまりなあ」男が上目づかいでタキを見た。タキは新聞をクシャクシャに丸めて立ち上がった。その手には銃がある。「テメェ、ナメてんのか」「アイエッ!?」「ウチはそういうピザ屋じゃねえんだよ、そういうピザ屋じゃ!」「アイエエ!?」「カエレ!」「アイエエエエ!」

 男はタキの剣幕と銃に恐れをなして店外へ走り去った。タキはドアを開けて店外のストリートを睨んだ。「ッたくクソが……ア?」定位置に戻ろうと振り返ったタキは、階段の脇の椅子に腰かけているオイランドロイドに気づいて仰天した。髪は淡いオレンジ、アオザイを着ている。コトブキだ。

 「お前、いつからそこにいやがる」「さっきですね」姿勢正しく座っているコトブキは少しも身体を動かさずに答えた。「お前、ギョッとするからマジでやめろよ」「何がですか?」「そうやって家具みてえに止まってたり、いつの間にか場所を移動してたりするやつだ」

 「止まったり、動いたりですか?」「自然にしろよ」 「難しいですね」コトブキは立ち上がり、店内をゆっくりしたすり足で往復し始めた。「何やってる」「カンフーのエクササイズです!」「カンフーな……」タキはマゴノテ・マッサージャーで自分の肩を押しながら、その姿を目で追った。

 コトブキはオイランドロイドだが、自我がある。所謂「ウキヨ」だ。情報屋稼業として裏社会に通じ、ソウカイヤの連絡窓口(応答はないが)を持つタキでさえ、ウキヨとこうして言葉を交わし、遠目ではない直接の面識を持ったのは初めてである。

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