灰都ロヅメイグの夜 7:月の裏の猫
【承前】
常人ならば卒倒する程のスタウト酒を煽ったゼウドであったが、ものともせず、神託亭からさらに二軒を渡り歩いた。そこで流石に金も尽き果てたので、黒い象牙亭への帰途につく事とした。
夜風を浴びながら、人通りのまばらになった街路橋を歩んだ。
だが、進む足音は一つでは無かった。メリサもまた、彼と共に在った。そのままどこぞの宿にしけ込む手もあったが、ゼウドは心の何処かで、あの隻腕剣士の事を案じているのだった。しかし、どこか暗い魅力を持つこの女、メリサとも別れ難かった。