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ニンジャスレイヤーPLUS

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サイバーパンクニンジャ小説「ニンジャスレイヤー」の連載まとめに加えて、書下ろしのスピンオフエピソード、コメンタリー、資料集などがまとめられたマガジンです。PLUS系のメンバーシッ…
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#AOM

PLUS目次(2024年11月2日更新)

🍣「ニンジャスレイヤーPLUS」は2022年8月からメンバーシップシステムに移行しました(従来の定期購読マガジンは9月移行徐々に更新停止となります)。PLUSは最新スピンオフや設定資料集の公開場所であり、2010年から続くTwitter無料連載支援のためのドネート窓口でもあります。 📡総合ニュース / 大きな更新まとめ◆AoM本編AoM本編はTwitter上で連載され、加筆修正版がnoteにまとめられています。連載ログや実況ログは三部作と同様、全てweb上に残り続けます。

S5第8話【アクセス・ディナイド・666】全セクションまとめ版

1  オノマチ・ツルゴは曇った表情で三名の名前を入力し、推定死亡時刻を追記する。 「AM01:22……ぐらい、か……」ぶつぶつと呟きながら、監視カメラ映像を送ってゆく。灰色の、ザラザラとおぼつかない映像。複数のカメラを切り替えてゆく。地下サーバールームだ。  ここトクボ・ファイナンス本社ビルの地下2階は、地下駐車場めいて広大なフロア空間となっている。カメラが映すフロアには、四角い柱が等間隔に配置されている。シメナワが巻かれた柱……それら全てが、トクボ・ファイナンスを支え

S5第7話【トレイス・オブ・ダークニンジャ】#1

前話【ゼロ・トレラント・サンスイ】← 1 ネオサイタマ郊外北部にひろがる不毛の荒野は、暗黒メガコーポ諸企業が紛争を繰り広げる交戦可能域、通称「キルゾーン」として知られる。都市の選択と集中の結果、打ち捨てられ廃墟化した人口ゼロ地域だ。かつてここに存在した市街は絶えざる砲撃でほとんど更地と化し、ネオサイタマ摩天楼が遠くに霞む。  この地域では、ほぼ週極めのスケジュールで一対の企業が相互に軍隊を展開。激しい交戦を繰り広げている。文明の先端たるネオサイタマでしのぎを削る暗黒メガコ

S5第6話【ゼロ・トレラント・サンスイ】

前話【ダイハンジョウ・グッド・ビジネス】← 【ゼロ・トレラント・サンスイ】  ぞっとするほど冷たいコンクリートの感触を全身で味わいながら、ミニットマンは十年前の「戦争」を思い出していた。  絶望的な防衛戦の中、彼の部隊は母隊から切り捨てられた。トカゲの尻尾のように。指揮系統の崩壊を知ったのは、何もかもが終わった後の事だった。生き残ったのは彼を含め二人。あの時もこうして冷たいコンクリートに腹ばいになり、機をうかがっていた。今は、一人だ。  降りしきる重金属酸性雨の中で、

S5第5話【ダイハンジョウ・グッド・ビジネス】

前話【ゲイシャ・フラッシュバック】 ← 1 ダイハンジョウの創業は江戸時代。現在の2049年のネオサイタマまで古物業を営み続けてきた、誇り高き一族経営の店である。幾度もの苦境と移転を経て、現在は、バイオウナギのカバヤキの香り高いナバ・ストリートに店を構える。建物は実際小さく、ガラスは曇り、通行人を見守るフクスケの目つきは不穏だ。  店主の名はカワダ・イチロク。カワダ家の婿養子であり、二人の子を設け、妻には先立たれた。カウンターで黙々とUNIXデッキでインターネットする彼の

S5第4話【ゲイシャ・フラッシュバック】

前話【ジ・インターナショナル・ハンザイ・コンスピラシー】← 1 イツコはうたた寝から覚めた。ウオヤマ・サンドの小綺麗な坂道、半地下のクラブ「ダモの」。イツコは廊下の椅子に腰掛けている。目の前の鉄扉が開いたり閉まったり、客がフロアを出入りするたび、爆音が断続する。時計を見ると午前4時。電車が動き出す頃だ。  イツコは立ち上がり、欠伸をした。顔見知りのイシカワが、壁に寄りかかって電子タバコを吸っている。「あれ? 帰るの? イツコ=サン」「うん、帰る」イツコは目を擦った。イシカ

S5第3話【ジ・インターナショナル・ハンザイ・コンスピラシー】

前話【スクールガール・アサシン・サイバー・マッドネス】 ← ◆◆◆  リロン・ケミカル社ヘッドオフィス、13階。通路は黒漆塗りで、等間隔に配置された鉢植えには蘭の花が植えられ、ゼンのアトモスフィアを生み出している。ゆるやかに湾曲した通路の形状すらも、そのゼンに寄与するべくデザインされたかのようだった。だが彼女は今、必死で全力疾走し、この空間のゼンを乱している。 「クソが……!」カチグミ・サラリマンらしからぬ罵り声とともに、彼女は後方を見る。連なる複数の足音。近づいてきて

S5第2話【スクールガール・アサシン・サイバー・マッドネス】

1「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」「アイエエエエ!」複数のヤクザスラング、そして悲鳴、打擲音。表通りの光が、ヒビの入った壁に、暴力の光景を影法師として映し出す。囲んで棒で叩く影を。 「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」「は……払う、払いますからァ……」「……」暴力が中断した。ヤクザ達は顔を見合わせ、サイバネアイの緑光が闇に浮かぶ。「……払うカネなんざ、ねェーだろうがコラァ!」「アイエエエ! ありません!」「ザッケンナコラー!」「アイエエエ!」暴力再開!  

【スクールガール・アサシン・サイバー・マッドネス】#4

3 ← 4 ファオー。通信確立ファンファーレが鳴り、モニタの01ノイズのモヤが晴れて、八卦のテーブルが映し出されると、トジカタ・ウルフは息を呑んだ。八人が座する八卦の卓。その中央、卓上の空中に、九人目がアグラ状態で浮遊出現したのである。『ドーモ。トジカタ・ウルフ=サン……』 「ウ……!」老ヤクザの眉間を、汗の粒が流れ落ちた。電子通信でありながら、脳に直接語りかけるが如き迫力であった。トジカタは引退年齢を重サイバネで上塗りしてまで現役にしがみついてきた鬼気迫るヤクザ・オヤブ

【スクールガール・アサシン・サイバー・マッドネス】#2

1 ← 2『集合的殲滅全体! 高揚感撃滅満載! 最強高機動! 最強高機動! 最強高機動! 脳にブチ込んでくれようか! 頭蓋!』  ヒリヒリ割れた叫びのボーカルを引き継いで、高音をいからせたベースラインが迫り出してくる。ベオベベオベオベベオ! ノイズパンクバンド「夏のあなた達」の名曲「最強高機動」だ。  ピアス型の骨伝導イヤホンを通し、フルボリュームの「最強高機動」を鳴らしながら、リンホの歩みは早歩きに、そして疾走になる。リンホは走りながら笑った。そして跳んだ! 「オラ

【スクールガール・アサシン・サイバー・マッドネス】#1

1「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」「アイエエエエ!」複数のヤクザスラング、そして悲鳴、打擲音。表通りの光が、ヒビの入った壁に、暴力の光景を影法師として映し出す。囲んで棒で叩く影を。 「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」「は……払う、払いますからァ……」「……」暴力が中断した。ヤクザ達は顔を見合わせ、サイバネアイの緑光が闇に浮かぶ。「……払うカネなんざ、ねェーだろうがコラァ!」「アイエエエ! ありません!」「ザッケンナコラー!」「アイエエエ!」暴力再開!  表通

S5第1話【ステップス・オン・ザ・グリッチ】

 世界全土を電子ネットワークが覆いつくし、サイバネティック技術が普遍化した未来。宇宙植民など稚気じみた夢。人々はサイバースペースへと逃避し、重金属酸性雨のメガロシティに生きる。神殺しに沸くメガコーポ群は、割れた月へと手を伸ばす。……ここはネオサイタマ。欲望渦巻く電脳犯罪都市だ。  国家は滅び、国境は失せ、傷ついた都市が文明の灯火となった。その輝きは暗黒メガコーポのパワーゲームの標的となり、新たな秩序の重みが市民にのしかかる。人々は知らぬ。街が邪悪なニンジャ組織に蝕まれて

【ステップス・オン・ザ・グリッチ】#4

3 ← 「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。パイドパイパーです」パイドパイパーは困惑をカラテと邪悪な殺意で塗り潰し、アイサツに応じた。アイサツは神聖不可侵のイクサの礼儀であり、オジギ最中の相手に攻撃をくわえる事は厳かに禁じられている。古事記にも書かれている掟であった。  ゆえに彼らは名乗りあい、互いの名をニューロンに刻んだ。殺すべき相手として。そしてオジギ姿勢から同時に頭をあげ、カラテを構えたとき、首なし死体の転がるネオサイタマの雑居ビルの谷間の路地裏は、無慈悲なる殺戮の

【ネオサイタマ・アンダーグラウンド:ディスカバリー】スレイト・オブ・ニンジャ