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ニンジャスレイヤーPLUS

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サイバーパンクニンジャ小説「ニンジャスレイヤー」の連載まとめに加えて、書下ろしのスピンオフエピソード、コメンタリー、資料集などがまとめられたマガジンです。PLUS系のメンバーシッ…
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#小説

PLUS目次(2024年11月2日更新)

🍣「ニンジャスレイヤーPLUS」は2022年8月からメンバーシップシステムに移行しました(従来の定期購読マガジンは9月移行徐々に更新停止となります)。PLUSは最新スピンオフや設定資料集の公開場所であり、2010年から続くTwitter無料連載支援のためのドネート窓口でもあります。 📡総合ニュース / 大きな更新まとめ◆AoM本編AoM本編はTwitter上で連載され、加筆修正版がnoteにまとめられています。連載ログや実況ログは三部作と同様、全てweb上に残り続けます。

S5第8話【アクセス・ディナイド・666】全セクションまとめ版

1  オノマチ・ツルゴは曇った表情で三名の名前を入力し、推定死亡時刻を追記する。 「AM01:22……ぐらい、か……」ぶつぶつと呟きながら、監視カメラ映像を送ってゆく。灰色の、ザラザラとおぼつかない映像。複数のカメラを切り替えてゆく。地下サーバールームだ。  ここトクボ・ファイナンス本社ビルの地下2階は、地下駐車場めいて広大なフロア空間となっている。カメラが映すフロアには、四角い柱が等間隔に配置されている。シメナワが巻かれた柱……それら全てが、トクボ・ファイナンスを支え

【アクセス・ディナイド・666】#4

3 ← 4 サーバールームに出現した怪異によって社員がメンテナンス作業から遠ざけられ、関わった13人が死亡している。その経緯を「ニンジャスレイヤー」に語って聞かせながら、オノマチは完全な絶望の沼に首まで浸かっていた。ミタラシパフェは粘土めいて無味で、スプーンはカチャカチャとガラスにぶつかる。  アンダーテイカーが死に際によこした財布には、何枚もの名刺が挟まっていた。それは取引先の企業担当者であったり、同業の神秘修練者と思しき者たちの連絡先であった。中には、TV放送やIRC

【アクセス・ディナイド・666】#3

2 ← 3 オノマチ係長は冷蔵庫を開け、追加のバリキドリンクを取り出した。長い夜になる。サラリマンは身体が資本だ。「やってやるよ……!」オノマチは呟いた。その背後で、アンダーテイカーは無表情にそのさまを見つめていた。オノマチは振り返った。「エ、アイエッ!? あ、飲まれますか? センセイも?」 「ノンアルコールではエーテルを高める役には立たない」アンダーテイカーは首を振った。「私はこれです」彼女は強力な缶チューハイ「極寒度シトラス」のプルタブを開け、ストローを挿し込んで、飲

【アクセス・ディナイド・666】#2

1 ← 2 その日の夜、オノマチ係長とホイスラーは休日で人気のないオフィスに居た。「とはいえ、こちらの入館証を身に着けてください」オノマチはホイスラーにカードを渡した。ホイスラーは頷く。首から下げているロザリオやオマモリ、数珠、アミュレットに、神秘的でない仲間が加わった。 「ああ。これらの品に、節操がないとお考えでしょうねえ」ホイスラーはにっこり微笑んだ。「わかります。しかし、神秘修練者は、究極、人の想いというものが結局は収斂するという観点から、ありがたいもの全てを採用す

【アクセス・ディナイド・666】#1

1 オノマチ・ツルゴは曇った表情で三名の名前を入力し、推定死亡時刻を追記する。 「AM01:22……ぐらい、か……」ぶつぶつと呟きながら、監視カメラ映像を送ってゆく。灰色の、ザラザラとおぼつかない映像。複数のカメラを切り替えてゆく。地下サーバールームだ。  ここトクボ・ファイナンス本社ビルの地下2階は、地下駐車場めいて広大なフロア空間となっている。カメラが映すフロアには、四角い柱が等間隔に配置されている。シメナワが巻かれた柱……それら全てが、トクボ・ファイナンスを支える屋

【トレイス・オブ・ダークニンジャ】#11

10 ← 11 ヴォーテックスは巨大なジェットエンジンの中へ叩き込まれた。内部のエメツ・タービンが黒い閃光を発し、オムラの先端テックとニンジャの屈強な身体を高次融合させ年収で鎧ったヴォーテックスを飲み込んだ。「サヨ、ナラ!」ヴォーテックスはエンジンの中で粉微塵となって爆発四散した。  KA-DOOOM……ZZZGT!……DOOOOM! 爆炎が上空に厚い塊を生じ、衝撃波が城下町の瓦を撒き散らした。「ウオオオッ!」オッドジョブは側転して瓦を躱し、すぐそばで死んでいるロクハラ・

【トレイス・オブ・ダークニンジャ】#10

9 ← 10 ネオサイタマ郊外、キルゾーン! 南には高層ビル群が遠く光り輝き、空は明け方を迎え、薄ぼんやりと白み始めている。浮遊するキョート城を取り囲む地上戦力のなかに、黄色の帷幕で囲われたポイントがあった。ロクハラ社の司令部である。  帷幕には「六波羅」「羅」「科学力」「最高戦力」「怒涛」などの勇ましい文言の書かれたノボリ旗が立てられ、ボンボリには火が焚かれていた。そこには戦場パイプ椅子に座ったロクハラ社専務がいる。彼は黄色いパワード武者鎧を装着し、グンバイを構えて、ヤ

【トレイス・オブ・ダークニンジャ】#9

8 ← 9「バカな」「早すぎる」「予兆なき攻撃だと!?」天守閣のニンジャ達が腰を浮かせた。「ウウッ……」パープルタコはうめき声をあげ、頭を押さえてうずくまった。ネクサスの投射映像が乱れた。「申し上げます。コトダマの帳が貫かれ、破壊されました」「アナヤ」パーガトリーが眉をしかめた。 「ネクサス=サン。パープルタコ=サン!」パーガトリーはまずは叱責の言葉を浴びせる。「コトダマとジツを織り合わせし防備はオヌシらの自慢のセキュリティであったろう。何故、かようブザマに破られしか?」

【トレイス・オブ・ダークニンジャ】#8

7 ← 8 ドオン! ドオン! ドオン! 遠い太鼓の重低音が鳴り響き、霞に覆われた空には割れた月と黄金の立方体が重なり合う。黒のタタミが敷き詰められた正方形の広間を、囲うように立つ無数の柱が支えている。柱と梁には精緻な彫刻が施され、時代がかったゼンを醸し出す。……キョート城、天守閣。  カミザには紫のビヨンボが立ち、オブシディアンの甲冑、大剣、リアルニンジャの頭蓋、ダーククリスタル、「不如帰」の掛け軸が飾られている。その前で、四人のザイバツ・グランドマスター・ニンジャ達が

S5第7話【トレイス・オブ・ダークニンジャ】#7

6 ← 7 落ち着かない様子で周囲に注意を配るオッドジョブは路上に一人。そこに、走り来たハンザイ・リムジンが停車した。しめやかに防弾ドアが開き、ハットをかぶったハンザイクローンヤクザが手振りで合図した。「受け取れ」オッドジョブはアタッシェケースを投げ渡した。 「オタッシャデー」ハンザイクローンヤクザはドアを閉め、早々に走り去った。オッドジョブは鼻を鳴らした。走り去るハンザイリムジンはクロームの蜘蛛型エンブレムを掲げている。ハンザイ・コンスピラシー。オッドジョブが籍を置く謎

S5第7話【トレイス・オブ・ダークニンジャ】#6

5 ← 6「ニンジャスレイヤー=サン。我が社のプロパティを回収して回っているのは貴殿だな」アルカナム2名の肩越しに、クルタナが言った。「貴殿は我が社のネオサイタマ展開において、決して小さくない懸念事項のひとつとなりつつある」「せいせいする話だ」ニンジャスレイヤーは睨み返して言った。  クルタナは電子的に美しく咳払いした。そしてニンジャスレイヤーがヒキャクめいてスリング状に胸に縛ったフロシキ包みを見据えた。「量子レリックレーダー反応は誤魔化せはしない。なぜ集めている?」「レ

【ネオサイタマ湾岸、99マイルズベイ:プライベティア】 スレイト・オブ・ニンジャ

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S5第7話【トレイス・オブ・ダークニンジャ】#5

4 ← 5 正午。その日のキタノ・ストリートは晴れていた。キタノスクエアビル、「ピザタキ」の前で、ニンジャスレイヤーとダークニンジャは対峙した。獲物に襲い掛からんとする獣めいたカラテと、研ぎ澄まされたカタナめいたカラテ。空気が歪み、陽炎めいて二者の背中が烟る。  半透明のゴミ袋が風に乗り、タンブルウィードめいて転がってゆく。動けば、仕掛ける。一触即発の空気のなか、ピザ配達バイクが停まり、明るいオレンジの髪の娘がヘルメットを脱いだ。コトブキだ。彼女は明るくニンジャスレイヤー