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逆噴射小説大賞2024まとめ

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逆噴射小説大賞2024の全応募作品をまとめていくマガジンです。収録漏れらしきものを発見した場合は教えてください。
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#パルプ

2024年10月に「逆噴射小説大賞2024」を開催します

文字数制限は800文字以内! 今回の本文文字制限も、800文字以内です。しかしこれは「800文字以内で物語を完結すること」という意味ではなく「小説の冒頭部800文字で応募する」という意味です。つまり「この続きを読みたいと思わせる、最もエキサイティングなパルプ小説の冒頭800文字」を表現した作品が大賞を受賞し、その応募者は大賞の栄誉とともに黄金のコロナビールを獲得できます。 ◆逆噴射小説大賞とは◆この大賞イベントを主催する ダイハードテイルズ/Diehard Tales は

ノーブックス、ノーライフ

「吾輩は猫である、は当店では取り扱っておりません」  まただ。もう五回目となる回答を背に、綴文緒は夕空の下で書店を出た。 電子残高は、既に文庫本の値段よりも交通費が上回っている。その事実に、文緒はため息をついた。  もう行ける範囲の書店は回ってしまった。とぼとぼと家路に着く少女の影を夕日が長く伸ばす。車のライト、街灯、スマホの明かりが街の暗がりを装飾していく。それらは、発電所が回したタービンで支えられている、らしい。文緒のスマホも例外ではない。 「図書館ならあるのかな…

靴泥棒

 今でも思います。  あの時振り返らなければ、僕は靴を奪われることはなかったのではないか。つまり今でも明るい我が家で妻と犬の温もりを感じることができていたのではないかと。  けれども僕はあの哀れを誘う呼びかけに振り向いてしまったのです。  それが致命的な転落への入り口になるなんて欠片も思わず。  振り返る不安定な体を誰かが突き飛ばしました。  僕は簡単に尻もちをついてしまいました。  顔を上げ、そして戦慄しました。  そこにいたのは襲撃者の二人組でした。二人とも仮面を被って

小説を書く。

「パイプ小説?」 「え?パルプ小説?なんなんだそれ。」 とりあえずわからないことがあったらネットで調べる俺は、パルプ小説の書き方(実践編0)を見つけた。 「パルプ小説の定義とかどうでもいい。」って書かれているのを読んで終わったって思った。だって何を書いていいのかわからないし。 「あーなるほどそういうことかよ。」 読み進めてわかった気がした。だけど同時に、これを読んだら俺が思うホントのパルプ小説を書けないと思ったよ。 まあ、とりあえず机に座ってみたんだ。そしたら何か

オカルティック・ロマンサー ~信じる者は×××る~

「でね?ここでお願いするともざいく様が、交換してくれるんだって」 「うん」 「千沙、言ってたじゃん。鼻や目とか」 「うん……」  黄昏と見まごうほどの暗がりに、その祠はあった。傾き、朽ちていつ頃の物かは定かではない。二人の少女は、手を合わせた。 「もざいく様、もざいく様」  呼びかけは、暗がりに消えた。何も起きない、やはり嘘。そう感じた二人が視線をさ迷わせた瞬間に、帳は落ちた。  二人の周囲に、多種多様な人体が浮かんでは消える。目、鼻、手、乳房、髪、組木細工の様に肉が組