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逆噴射小説大賞2024まとめ

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逆噴射小説大賞2024の全応募作品をまとめていくマガジンです。収録漏れらしきものを発見した場合は教えてください。
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#逆噴射小説大賞

2024年10月に「逆噴射小説大賞2024」を開催します

文字数制限は800文字以内! 今回の本文文字制限も、800文字以内です。しかしこれは「800文字以内で物語を完結すること」という意味ではなく「小説の冒頭部800文字で応募する」という意味です。つまり「この続きを読みたいと思わせる、最もエキサイティングなパルプ小説の冒頭800文字」を表現した作品が大賞を受賞し、その応募者は大賞の栄誉とともに黄金のコロナビールを獲得できます。 ◆逆噴射小説大賞とは◆この大賞イベントを主催する ダイハードテイルズ/Diehard Tales は

巌龍島異聞

 慶長十七年四月十三日朝。長門国と豊前国の境、船島。ここに二人の兵術の達人が相対した。一方は円明流、宮本武蔵。他方は巌流、佐々木小次郎。立会人と互いの弟子たちの見守る中、両雄は一礼する。 「まことに木剣で挑まれるとは」 「木剣だからと油断めされるな」  小次郎は目を細め、刃長三尺の野太刀を大上段に構える。対する武蔵は二刀流、二尺五寸と一尺八寸の木剣を構える。空が白み、潮が流れる。両者は間合いをはかり睨み合い、微動だにせぬ。  ちゃぷん。魚が武蔵の背後の海で跳ねた。武蔵は

【逆噴射小説大賞2024】ネオカンガクアンサブル!

ネオン輝く街『フェスティバル』。 ここでは政府主催のニューネオカンガッキを広める一大フェスが開かれていた。 その裏では怪しい影が蠢いているとも知らずに…。 「いそげ!実験体F!お前がいなければこの計画は成功せず、廃棄処分されるんだからぁなっ!」 白服集団はみすぼらしくうずくまる少年の首輪を引き摺りながら乱暴に外に出す。 ネオカンガッキを抱え乱暴により咽せながら少年はしゃがみ込んだ。 「もう、嫌だよ…っ」 そう少年が呻いた時だ。 「ファントムフルスコア流・ネオカンガッキ…

「インドラの僕(しもべ)」

 漆黒の雷雲は去り、瑠璃色に澄んだ空が広がる。  乾季のカトマンズを突如襲った局地的な落雷は、僅か十分間で千発を超えた。煉瓦造りの家々は崩れ、焦げた衣服を纏う人々が路上に伏す。千切れた電線の束から噴出した火花が、泥水に溺れ弾ける。  肌はおろか瞳さえ灼かれることなく、異邦人たちは平然と焦土を歩んでいた。 「良い撮れ高だ」  惨状を嬉々として写し続けるチャドの姿に、ギルは息を飲んだ。 「お前はどうだった?」  無邪気な声に促されるまま、ギルは撮り溜めた雷を見返した。寺院への直撃

露光のしもべ

地面に突き刺した三脚杖にガラス玉を載せ、手を添える。露光魔法によって風景をガラス玉に刻む。焦点や光量を自在に操り、描き変えた世界をガラス玉に刻みつける快感は何ものにも代えがたい。 今から私は、嵐を刻む。 『嵐が来る!』今朝に道すがら出会った占い婆が私の顔を見るなり叫んで一目散に逃げ出した。嵐とは何か?決まりきっている。雨風でも、魔法でも、騎馬隊でもない。たった今戦場をなぎ倒し、大地を引き裂いて降り立ったもの。 竜である。 パシッ、ガラス玉に景色が刻まれる音がした。

ヴェロニカが死んだ

 深夜の廃棄場には異様な、非常に…………元気な歌声が響く。  だが、敬虔なる心を露わにし、美声を称える御仁は現れまい。  俺? 俺も遠慮する。  顔面と四肢の骨を折られたうえパイプ椅子にしばられ…………愛するワイヤレスイヤホンは地に落ちた。故に怠い。  ちなみに、他の紳士諸君――――俺への実験に励んだ十数人は、既に逝った。  十数人、とぼかしたのは、俺が数学の授業を睡眠時間であると勘違い中なのもあるが――――数える方法もあるまい。  それでも、床に散らばるチキンのトマトソース

熊の掌

 私が白野壮太を殺したのは、彼が毛深かったからだった。彼は太鼓腹を含む全身に黒く強いぴんぴんと立った毛が生えていて、手の甲は黒黒とし、爪は肉に食い込むようだった。だから、熊の掌を蒸して毛を抜くのときっと同じ体験ができると思ったのだ。  Youtubeでジビエ好きの男が熊の掌料理を作って以来、私にとって同じことをするのは夢だった。茹で、さらに蒸した熊の掌は皮膚が柔らかくなり、あれほど強い毛が、尖った爪がほとんど苦労なく剥けてしまう。そして、いつの間にかゼラチン質の無力なふやけ

ドリーム・キャッチャー

 格付けは、済んだ。  第三世代夢鯨が魚群に食い尽くされていく。 「今……しかなイ…瞬間ヺ……」  若年層向けローン広告のフレーズを言い終えぬまま、夢鯨は消滅した。 「うーむあの第三世代を完全排除とは……」 「デカいのが取り柄ならバラバラにして砕く、簡単なアプローチですよ」 「いやぁよくやってくれた。このピラニアの発表で株価は急上昇だな」  社長が笑顔で俺の肩を抱く。アドブロックの開発ベンチャーは数多あるが、第三世代夢広告の完全排除はうちが世界初だ。 「大学仲

戦場を着た男

 倉庫を整理していると、隅に耐火布の被さった小山があるのに気づいた。  近くで札束を数えているボスに訊いてみると「軍の放出品、年代モノ」というので、布をはぐると、巨人が喰うような鉄色のピーナッツが二本足で立っていた。  6発の銃弾。  戦闘服の装甲は滑るように受け流した。  真っすぐ伸ばした左腕の先、砲口が赤い火柱を噴いて、弾を撃ち尽くしたボスの腰から上を、後ろの壁まで丸く抉るように溶かした。  メカオタクを拉致したまぬけ。  自分の顔がニヤけているのに気づく。嫌な感じがし

「JIRAIYA No.49」

 そり立つ壁に挑む48番の義足が爆散した。ジェット噴射の使用は定石だが、出力制御を失敗しては無意味だ。  義体の破損は即失格となる。コースの床が抜け、48番は1stステージ37人目の犠牲者となった。  控室のモニターを前に、選手たちは猛々しい歓声を上げた。最先端の全身義体さえ買える大金を得るのは、完走者唯一人。サドンデスの脅威は少ないに限るが、結局JIRAIYAは己と戦う競技だろう。彼らは理解しているのか? 「本家で見た顔だな」  喧騒から離れ屈伸していると、53番の伸縮

あの子を誘拐します

 あの子を、暗闇から救ったのは僕だ。救済者として賞賛されるべき存在だというのに、街の至る所には「死んだ魚の目をした僕」の顔写真が散らばっている。  写真の僕には、まるで覇気がない。その理由を、僕は知っている。小さい頃に、親から「心」を壊されてしまったからだ。  僕が小さかった頃、親からはいつも理不尽な理由で殴られ続けてきた。殴る理由なんてどうでもよくて、僕はただのサンドバックでしかなかったのかもしれない。僕は必死に祈った。けれど、神様は現れなかった。だから僕は、パパやママ

カンフー・アルマゲドン 天地崩墜

「天地崩墜! 身亡所寄!」  天が堕ち、地が裂ける! 逃げ場はどこにもありはしない!  口角泡を飛ばし、叫喚する群衆が、星官連合首長国である秦の各地を闊歩している。紅色の幟を掲げる彼らは、故事にならい、杞憂民と呼ばれている。  事の発端は数百年前、時の皇帝徽宗の寵愛する孫、阿相が星辰殿にて渾天儀を前に発したひと言である。 「この星が欲しい」  指さしたのは秦から宙空を隔て百光里先にある、天目星の衛星、外電。  これに徽宗は奮起した。してしまった。  学士らと国を挙げての大事業

青空魔獣と飛行機雲

 生命の始めが天空にある。  新たに大地へ産み落とされた青空魔獣の心は、既に破壊の只中にあった。  獣のマスクを生来より身につける彼は、まず私へ向け怨嗟の叫びを上げた。 「俺は何だ。貴様は何だ」  建造物の残骸を滅多矢鱈に殴りつけ、倒壊音を背に眼前の私を非難した。  私のヤワな身体を覆う鎧には、彼の同族の外殻を幾重にも使った。  敵意をぶつけるのも当然だ。 「俺はなぜ産まれた」  自然の摂理から大きく外れた豪壮な白銀の外殻は蠢き、右腕を大型の銃へと変形させた。 「呪われろ」

ロードキル・キャット

 ごめんなさい。ごめんなさい。  夜、小雨、山の奥。そう唱えながら、私とタカシは泥だらけの手で穴に土をかける。穴の中に胎児のように横たわるのは、無惨に潰れた死体。猫の。さっき車で轢き殺してしまった。  首輪はない。野良猫だ。法的には道路を管理する自治体へ連絡するべきだが、私たちは理由あって官憲に追われる身で、連絡したくない。だが路上に放置しておくのも嫌だ。道行く車に繰り返し轢かれ、カラスにつつかれ、虫に食われ、雨風にさらされて塵となる。たぶん私を恨むだろう。それは、嫌だ。