サイオン・オブ・ドラゴン─エドワーズ卿諜報録─
『連邦』の保安局員はわたしの体をまさぐり、いまいましさと困惑の入り交じった表情を浮かべる。『目当てのもの』を、わたしが持っていないことに混乱しているのだ。
「この件については『帝国』外務省より、貴国へ抗議させてもらう。外交官に無礼をはたらいたとな」
護衛のウォルターを手で制す。沈黙。ラウンジの視線が一斉にあつまる。飲みかけのウィスキー・グラスのなかで氷がカランと音を奏でた。
「──いささか気分を害した。部屋で呑み直したいのだが、構わないかね?」
わたしは杖の石突をわざ