第1回逆噴射小説大賞:二次選考通過作品まとめ

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荒野の探偵

荒野の探偵

 その男は寂れたバーの扉を押し開けて現れた。 「水をくれないか」  男はイギリスなまりで言う。それが癇に障ったのだろう。今、イギリス人は荒くれガンマンと向かいあっている。決闘だ。  両者の間に乾いた風が吹き抜ける。バーの店主が思わず唾を飲む。そして緊張が張り詰め、張り詰め……弾けた瞬間、両者はほぼ当時に銃を抜き、銃声が三度鳴り響く。  ガンマンは目を見開き、地面に銃が二丁落ちる。 「てめえ、なんで」 「両利きかわかったって?」  イギリス人が微笑む。 「肘さ。始まりは両肘が赤

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俺たちに死者の日は来ない!

俺たちに死者の日は来ない!

 メキシコ麻薬カルテルのボス、リンゴはいつものように裏切り者をどう始末するかの会議で残虐な殺し方を提案したあと、麻薬を売って築いた邸宅の庭で葉巻を吸っているときに強い衝撃が頭を襲い、気を失った。 「起きろ、起きろ」  リンゴは肩を揺さぶられ目を覚ますと車の中にいた。手には手錠。運転席を見ると見知らぬ白人男がいる。 「誰だ、きさま」 「わからないのか?」  男は痩せこけた頬を引きつらせた。 「お前に妻と娘を殺されたアメリカ麻薬取締局の捜査官だ」 「毎日人が死ぬ。一々覚えられな

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