第1回逆噴射小説大賞:二次選考通過作品まとめ

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不死の日のエドム

「日の神にかけて。今日は『誰も死なぬ日』でさ、ヨブの旦那」 薄汚い牧童は、そう言って男に微笑み、右手を挙げた。 「試してみる。首を出せ」 「いや。痛いは痛いんでね。罪になりやすぜ」 「構わぬ。贖い銀は先払いだ。俺の神に誓う。そこの連中、証し人となれ」 ヨブは、銀の入った革袋を呉れてや…

大天狗国(テングリア)

チンギス・カンは天狗だった。この事実を知った時、私は目が眩み、膝が震えるのを感じた。だが、考えてみればわかる。源義経は天狗に武芸を習った。彼が大陸に渡り、チンギス・カンとなった。この有名な二つの伝説から、自ずと結論は導かれる。チンギス・カンは天狗だったのだと。 義経は天狗に成って…

ウェルカム・ブラックゲート #1

ダイヴ、スタート。おれの視界を覆っていた緋色の砂嵐が明け、目の前にカウンターが見える。 「ウェルカム。冒険者<エクスプローラ>。本日はどちらへ?」 「火星マスドライバー第69層。ライディングドレイクをレンタル」 「了解しました。解析対象は指定しますか?」 「MWコインのマイニングを」 …

ワン・オブ・ザ・コープス

俺が誰かは俺が決める。他の誰にも決めさせるものか。 Budda Budda Budda! 機関銃がクローン兵たちの頭を薙ぎ払う。首なしの体が崩れ落ちる。弾切れの銃を捨て、死体の銃を一挺拾って、さらに前へ。 「最近のクローン兵は質が落ちたよなァー、ドクター。まるでゾンビだ」 『コピーすれば劣化するの…

ライディング・ホッパー

「おっさきー!」 「遅え!欠伸が出るぜ!」 アカネとトウヤの声を無視し、地盤沈下で荒れ果てた道路を疾走する。二人の飛行型、多脚型に比べると二脚型はこの道で不利だ。だが、想定内。 超高層建築が見えてくる。余りに高すぎるため壁沿いを迂回するか、内部を押し進むのが定番だ。構わず直進する。…

ヴァーチャル・ヴァルネラビリティ

「しょうがないにゃあ……いいよ」 『N9koc0』は上目遣いで僕に囁くと、煽情的な有料コスメティック装備を脱ぎ始めた。 僕はハイエンドVRスーツがもたらす肢体の感触を想像し、息を呑む。privateエリアの片隅で二人きり。見咎める者はいない。 『N9koc0』が笑いかける。悪戯っぽく八重歯をのぞかせて…

荒野の探偵

 その男は寂れたバーの扉を押し開けて現れた。 「水をくれないか」  男はイギリスなまりで言う。それが癇に障ったのだろう。今、イギリス人は荒くれガンマンと向かいあっている。決闘だ。  両者の間に乾いた風が吹き抜ける。バーの店主が思わず唾を飲む。そして緊張が張り詰め、張り詰め……弾けた…

ラスティ・ドールズ

……がりがり、ざりざり。がりがり、ざりざり。 自動人形AM-967A”クロナ”は、砂と錆だらけの関節を軋ませ、瓦礫と砂塵の原野を歩んでいた。 「もっとキリキリ歩けや、阿婆擦れめ」 衛星通信を介して野卑た音声が届く。 「ったく、俺なら半日もかかんねえ距離だぞ。直接降りられりゃあな」 なら自分で…

【デビルハンター】ジュディ婆さんの事件簿 #1(第1話:1/4)

死人に口なし? あるよバカタレ。 -ジュディ- 「ああジュディ。深夜にすまない」 バリケードテープをくぐる老婆にゴードン特別捜査官が声をかける。 「ったく。こんな山奥の道端でババアが死ぬかい?」 不満を垂れながらジュディは咥え煙草を始末し、ざっと死体を観察した。 「手首の擦過傷と足の…

俺たちに死者の日は来ない!

 メキシコ麻薬カルテルのボス、リンゴはいつものように裏切り者をどう始末するかの会議で残虐な殺し方を提案したあと、麻薬を売って築いた邸宅の庭で葉巻を吸っているときに強い衝撃が頭を襲い、気を失った。 「起きろ、起きろ」  リンゴは肩を揺さぶられ目を覚ますと車の中にいた。手には手錠。運…