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第1回逆噴射小説大賞:二次選考通過作品まとめ

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第1回逆噴射小説大賞 ( https://diehardtales.com/n/nfce422e0faef )の二次選考通過作品をまとめたマガジンです。応募総数は約1900作品で… もっと読む
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#サイバーパンク

R.E.T.R.O.=/Q

《街》にダイヴするとき、決まって全身全霊を総毛立つような感覚が駆け抜ける。 自我を除く全情報が書き換えられ、私達は指定座標に出現する。 私は耐刃レザーのボディスーツ、パートナーのエドはへんな騎士鎧の姿だ。 「なあオリー、本当にこんな場所に適合者がいると思うか?」 エドの機嫌が悪い。 「さあね、おやっさんが言うのだから確かでしょうよ」 《街》。それは無限に続く巨大な一本の通廊の形をした閉鎖系世界だ。そこに共通した上下の概念はなく、本人にとっての接地面が下となる。 四つの壁

データランナー

 伝説のデータランナー、山岸タドルの第一印象はインディアンの大男だった。俺は挨拶もそこそこに奴の車に乗った。伝説と言う割には乗っている車は軽だった。 「あんたと仕事が出来て光栄だぜ」と、俺は言った。 「『Z』を返り討ちにしたって噂はマジか?」  するとタドルは「行くぞ。もたもたしてたらファクトリーのハッカーに気づかれる」と言って車を走らせた。 「あんた、今までどれくらいのデータを運んだんだ?俺はまだ二ギガくらいだが」 「七百ペタ」  タドルが答える。そいつはすげぇ

キュービィ・アンド・フーリィ -電脳変幻無双譚-

雲霞のごとき暴徒の群れが目標の集落を前に反転した。ここに向かっている?飛び起きた俺は映像を凝視する。カウンター洗脳か?クズ共にフェイク映像をばら撒いて1週間。熟成された憎悪が爆発する直前で! 副官を呼び戻す。モノアイヘッドが乳とキャタピラを震わせて駆け込んできた。こいつとファックする時間を奪ったのはどこの企業だ。怒りと焦りに囚われる。落ち着かなければ。眉尻のパネルをスワイプ。神経ブースト。ウィルススキャン。問題ない。 「あ!眉唾じゃん!まだ残ってんの?」 「あァ?

レゾナンス・エンジン

モーツァルトが沈黙して250年、共鳴機関は後継を探し続けている。 大気を満たすエーテルを媒介に、人と人とを接続し生体CPUとして扱う技術。音楽により発生する人々の情動を原動力とする演算装置。会場に集う人々の興奮が一つになり夢見るディープラーニング。 多元宇宙の構造解明には天才一人の知性では到底及ばない。コンサートホールを埋め尽くす聴衆、その脳神経の交響的発火が必要不可欠だ。 路上でのスカウト、インディーズバンドの青田買い、SoundCloudでの直接交渉。機関のエージェン

ウェルカム・ブラックゲート #1

ダイヴ、スタート。おれの視界を覆っていた緋色の砂嵐が明け、目の前にカウンターが見える。 「ウェルカム。冒険者<エクスプローラ>。本日はどちらへ?」 「火星マスドライバー第69層。ライディングドレイクをレンタル」 「了解しました。解析対象は指定しますか?」 「MWコインのマイニングを」 「了解しました。ゲート、開きます」 虚空に石のアーチが出現し、その暗黒へ、おれは無造作に足を踏み出した。 2009年、世界各地にて深黒の不明物体(大型バスほどだ)が出現した。 測定不能の度外れ

ワン・オブ・ザ・コープス

俺が誰かは俺が決める。他の誰にも決めさせるものか。 Budda Budda Budda! 機関銃がクローン兵たちの頭を薙ぎ払う。首なしの体が崩れ落ちる。弾切れの銃を捨て、死体の銃を一挺拾って、さらに前へ。 「最近のクローン兵は質が落ちたよなァー、ドクター。まるでゾンビだ」 『コピーすれば劣化するのさ、何事も。オリジナルには及ばない』 次のウェーブは6秒後。欠伸が出るほど遅い。俺は壁へ、天井へ、靴底をつけて駆け上る。カメラを踏み壊し、タレットガンを潰す。電子トラップを三つ

こちら合成害獣救助隊

看板の群れを回避しながら路地裏の底めがけて降下する。ひときわ大きな看板を避けて目標が視認出来た。狼の体に鮪の尾。合成害獣、通称キメラだ。部長の強化外骨格が掴みかかって動きを止めてる。あたしの接近に気付いた部長が身を引く。よろけたキメラにあたしはブースト全開の蹴りを叩き込んだ。 法整備と啓蒙が実を結び、人と暮らす動物は皆幸せになったはずだった。追い詰められた悪徳企業が「犬と猫を混ぜて売る」などと言いださなければ。結果は見事にバイオハザード。街にはキメラが溢れた。 凶悪なキ

絶罪殺機アンタゴニアス

 甲弐式機動牢獄は、囚人たちが特殊刑務作業に従事する際に搭乗する更生支援兵器であり、その外観は巨大な蜘蛛を思わせる。  胸部下面から伸びた機銃が十字型の火を噴き、命乞いをする貧民たちを容赦なく血煙に変えた。散発的に浴びせられてくる反撃の銃弾は、その装甲に傷一つつけることはない。  逃げ惑う人々をかきわけて、暗い目をした男がうっそりと歩いてくる。  その両手に二挺のちっぽけな拳銃が現れた時、囚人らは失笑した。おいおい。マジかアイツ。  爆音。  男が重く踏み込んだのだ。大地

泥斬り稼業

 ドブ長屋のクズ共が死んだ理由は三つある。五日続いた豪雨と、役人が積み上げた鉄屑と、貧乏。要は三つ目だ。もっとマシな所に住んでいれば崩れたゴミ山に潰されて死ぬこともなかった。泥油と混じって蘇り、俺のようなガラクタ人形に斬られることもなかった。 「五つ」  無造作に蒸気刀を振る。何の抵抗もなく屍泥は斬り倒される。 「六つ」  もう一匹。肩の歯車が軋む。 「七つ」  半壊した天井から泥油が垂れ、鉄笠に落ちる。 「八つ」  鉄笠の縁から泥油が垂れ、油だまりに混ざる。

ソーシャルゲームパンク:リセマラ者を殺せ

「この俺が!最高レアリティの!SSRの俺が敗れるなんて!」 男は俺に倒され、強化素材になった。レアリティの高い人格(パーソナリティ)は、ドロップする素材もいい。これでしばらくは金に困らなそうだ。俺はドリンクを飲み、スタミナを回復する。 誤解するな、俺は無差別殺人者ではない。 俺が殺すのは『リセマラ』をするやつと『リセマラ』産の人間だけ。 この世界にSSR人格が産まれる確率は0.6%、そのほとんどが上流階級に独占されている。なぜか?『リセマラ』だ。SSR人格の子供ができるま