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“おれがこれから始めようとしているのは、予測変換やAIの力が及ばない世界、つまり血肉が通っ…
「王太子。召し上がっていただけませんか。わずかでも」 ベッドに腰掛ける少年の顔は青白い…
両手の小銃が立て続けに二度、小気味良い音を奏でる。 自ら銃を手に取る事は久しいが、や…
ベルリンの寒い夜、大学病院に現れた青年は血まみれの妊婦を抱えていた。 「助けてくれ! 妻…
高度100km、カルマンライン。天獄と地国のあわい。希薄な大気故に昼でも空は黒い。天獄から…
大統領殿へ 来月末までに10億ドル用意されたし さもなくば、全人類を殺す 準備出来次第、署…
2020年4月某日、東京都港区、深夜。 定宿のAPAホテルから仇討縁起で有名な泉岳寺へ向かうとガツンゴツンという先客の音が聞こえてきた。角を曲がるとマスク姿の老人が墓石を削っている。削り取った一握りをキティ柄の「仇討祈願」守り袋に収めたところで老人が振り返った。 「どうも」 「ほう、あなたもですか?」 「はい、十年ほど」 私はパンツスーツの下に隠した苦無ホルスターを見せる。 「ワシは三十年間で……やっとです」 老人も使い込まれた匕首をチラリと見せ、はにかむように笑う。
朽ち果てた機動兵器の残骸で弾幕をやり過ごしながら、俺は傍の肉塊に目をやる。陸軍の兵士。吹…
その時、俺はダチとベロベロになるまで呑んでいた。カスみたいな居酒屋で、低学歴の馬鹿な半…
「蘇生できない? 話が違うぞ」 俺は公共ダンジョンから先刻回収してきたばかりの死体を前…
侵略者がやってきたのは8月の暑い盛り、それも盆休みのただ中だった。 オレがはっきり覚え…
かつて、この世界には「ほんもの」の神様がいたらしい。 らしい、というのは、私は神様を…
高校生の高濱夏帆が、自分には潤一郎という10歳年上の兄がいたことと、その死を知ったのは同時…
姉妹は眠りに就くべきだと、カレアは思った。救済は人間の虚妄だとしても、眠りだけは確かに、彼女を解放するだろうから。 少女と言うより他になかった細い体躯は、左の肋の直下から腰骨まで、肉と血と骨の挽肉と化している。血溜まりは既に、薄汚れたコンクリートの灰白色を塗り潰していた。 何もかも死に絶えた静寂のうちに、上体を壁に委ねた彼女は、生気を失った瞳を虚空に向けている。死神から逃れる見込みのない深手は、アンテロープAD12四脚戦闘アンドロイドのFNMAG汎用機関銃が浴びせた掃射