マガジンのカバー画像

逆噴射小説大賞2020:1次&2次選考突破作品

157
運営しているクリエイター

#小説

簒奪者の守りびと

「王太子。召し上がっていただけませんか。わずかでも」  ベッドに腰掛ける少年の顔は青白い…

71

ウィンチェスター・ウィッチクラフト

 両手の小銃が立て続けに二度、小気味良い音を奏でる。  自ら銃を手に取る事は久しいが、や…

とう腐
3年前
66

遺忘のナヴィガトリア

 高度100km、カルマンライン。天獄と地国のあわい。希薄な大気故に昼でも空は黒い。天獄から…

居石信吾
3年前
50

鷹の眼は神を狙う

大統領殿へ 来月末までに10億ドル用意されたし さもなくば、全人類を殺す 準備出来次第、署…

ドント
3年前
65

『魚籃坂復仇探偵社:テレワーク殺人事件』

2020年4月某日、東京都港区、深夜。 定宿のAPAホテルから仇討縁起で有名な泉岳寺へ向かうとガ…

95

ギャング・ヴァイオレンス・オール・グリーン

 その時、俺はダチとベロベロになるまで呑んでいた。カスみたいな居酒屋で、低学歴の馬鹿な半…

御遺体回収し〼(報酬歩合、応相談)

「蘇生できない? 話が違うぞ」  俺は公共ダンジョンから先刻回収してきたばかりの死体を前に、顔見知りのクレリックへと詰め寄った。転がっているのは最近頭角を現し始めたのパーティのリーダーだ。ダンジョンで下手を打った輩の死体を回収し、見返りに金銭を受け取るのが俺の仕事だった。 「ダンジョンへの入場許可証も正規に取得した真っ当な人間だ、お前の教会で洗礼を受けていることも確認している。お前がケツを持たねぇんなら、誰にこのバカを押し付けろってんだ」 「君の言う事はごもっともなんだけれど

真夏のひゅるひゅると、ぐちゃぐちゃ人類

 侵略者がやってきたのは8月の暑い盛り、それも盆休みのただ中だった。  オレがはっきり覚え…

lizardfolk
3年前
40

奇跡は砂になりて

 かつて、この世界には「ほんもの」の神様がいたらしい。  らしい、というのは、私は神様を…

里場
3年前
24

黒髪を抱いて沈む

高校生の高濱夏帆が、自分には潤一郎という10歳年上の兄がいたことと、その死を知ったのは同時…

ブロークンアロー

 姉妹は眠りに就くべきだと、カレアは思った。救済は人間の虚妄だとしても、眠りだけは確かに…

雨宮桜花
3年前
20

なるべく生者が望ましい

「……俺はどうなるんですか」  藤野央助は、青ざめた顔をハッと前に向けた。自らの失言に気…

『蘭之助、もう吠えないのか』

「おいは犬ではなか」 美貌の若侍はそう呟いたが、彼の魂を刈り取らんとする妖怪は彼とは別の…

白蔵主
3年前
90

『ローグ、ローグ、ローグ』

泥棒だけはやっちゃいけねえ、って、爺さんはことあるごとに俺に言い聞かせた。俺は尋ねた。置引は?泥棒だ。賽銭拾うのは?泥棒だ。死体漁りはどうだ?それはいい。人の名前を借りるのはダメか?だから泥棒だって言ってんだろ。 爺さんはしまいにはガッチリした拳骨で俺を殴った。目から火花が出た。いいか、オレたちはな、悪党ばかりのクソみたいな血だって言われてる。合ってる。でもな、泥棒だけはダメだ。爺さんは何度も俺に言った。 じゃあ、毎日親から殴られて痣だらけのかわいそうな女の子を、屋敷から助