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目の前に映るのは、琥珀色の鱗に覆われた下半身の私。 壁の向こうには、妹の早紀がにこにこしながら、ミルクを美味しそうに頬張っている。本来なら、私も早紀の隣で一緒に過ごしていたのかもしれないのに。私が口に出来るのは、泥のような色をした丸い餌のみ。 姉妹でこうも違うなんて、神様は不平等だ。この家の中で、私はできそこないの娘。どうやら私は、ママに一度も抱きしめてもらうこともないまま、生涯を終えることになりそう。 ※ 長年不妊に苦しんでいた、私のママ。体外受精を何度か失
地面に突き刺した三脚杖にガラス玉を載せ、手を添える。露光魔法によって風景をガラス玉に刻む。焦点や光量を自在に操り、描き変えた世界をガラス玉に刻みつける快感は何ものにも代えがたい。 今から私は、嵐を刻む。 『嵐が来る!』今朝に道すがら出会った占い婆が私の顔を見るなり叫んで一目散に逃げ出した。嵐とは何か?決まりきっている。雨風でも、魔法でも、騎馬隊でもない。たった今戦場をなぎ倒し、大地を引き裂いて降り立ったもの。 竜である。 パシッ、ガラス玉に景色が刻まれる音がした。
周囲への警戒感と 影への溶け込みは 元ハイシーフの名に恥じぬ 脂のはじける音と共に玉ねぎを炒め 若いデミオークのひき肉を加えると 薪の弾ける音に合わせて 甘く香ばしい香りがポワンと広がる 襲ってくれって言ってるようなもんだナ 「おい、ムコヤマ!」 「いつも通りのいい匂いだな!」 リーヴァがいるのは分かっていた 壺の中で熟成した シナモンとナツメグが混ざったような体臭 ――あの独特な香りに、ずっと遠くから気付いていた 振り返るとそこには 2メートル超の愛くるしい