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駅には問い合わせが鳴り止まない。彼女が受けた電話の老婦人は苛々というよりは、むしろ困惑した様子だった。 「だって、ねえ、お姉さん。もう一時間も待っているのに一度も遮断機が上がらないのよ、ただの一度もよ、おかしいじゃない」 その携帯でニュース見てないんですか、と悲鳴をあげそうになりながら、気付かれないよう山岸はゆっくりと息を吐いた。 実際に一時間以上、その京浜東北線の遮断機は降りたままだ。正確には多分その踏切だけではない。だがそれどころではないのだ。山手線内に踏切はもう