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逆噴射小説大賞2024:1次&2次選考結果

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小説の冒頭800文字で競う逆噴射小説大賞2024! その二次選考の突破作品集です。 ■全作品:https://diehardtales.com/m/m1f0c0cf87fd7
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#短編小説

Good-bye,my candy.

マルチーズを連れた女は、概してろくでもない。 なんだってそんなことを言っているのかって? 今の俺を見てくれたらわかる。マルチーズ連れの女に殺されたからさ。胸を一突きにされてな。 心臓が止まっているようだ。その割に頭は澄み切っていて、死とはこういうものかって、なぜだか納得したよ。 女はさも退屈そうに俺を眺めている。マルチーズは俺の右手をぺろぺろと舐めて、わんと鳴いた。 「ねえ、聞こえてるんでしょ?」 いつの間にか咥えていた煙草に火をつけて、女は言った。ショートパンツから伸

FORECASTERの俺は、HEROをサポートして魔王を倒す未来を予知する

「この上級ダンジョンは私たちが攻略するから、坊やはママの元にお帰り」  クスクス笑う乙女たちは最強ギルド『バルキリー』所属の精鋭戦士たちだ。  彼女たちを前に冷汗をかいている俺の能力は『FORECASTER』——未来を予知する力だが、見えるのはわずか5秒先まで。他に使える魔法は『そよ風』のみ。お察しの通り激弱転生者だ。 (絶体絶命な状況だな……)  だが、俺の隣にはチート能力『HERO』を持つシンがいる。俺は余裕を装った。 「俺たちがHERO&FORECASTERだ

戦場を着た男

 倉庫を整理していると、隅に耐火布の被さった小山があるのに気づいた。  近くで札束を数えているボスに訊いてみると「軍の放出品、年代モノ」というので、布をはぐると、巨人が喰うような鉄色のピーナッツが二本足で立っていた。  6発の銃弾。  戦闘服の装甲は滑るように受け流した。  真っすぐ伸ばした左腕の先、砲口が赤い火柱を噴いて、弾を撃ち尽くしたボスの腰から上を、後ろの壁まで丸く抉るように溶かした。  メカオタクを拉致したまぬけ。  自分の顔がニヤけているのに気づく。嫌な感じがし