逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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ノート

106つ、または107つ、ないし108つのジョー・レアルの生首

ジョー・レアルをぶち殺して首を持参した野郎には10万ドルくれてやる。
 そう俺たちが宣言したその翌日。さて、何人が首を持ってやって来たと思う?

 212人だ。

 持ち込まれたうちの半数は偽物だったが、あとはどっからどう見たってホンモノの、ジョー・レアルの首だった。
 信じられるか?
 俺には信じられなかった。バーにいる仲間の誰もがそうだった。

「ふざけやがってよッ!」
 ちびのトゥコは短い足

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アーマー・バディ・ディガーズ

半ば砂漠に埋もれた廃墟を背に、あたしは斧を持った野盗にマチェットで斬りかかる!
「アイネちゃん、危ない!!」相棒が外骨格装甲背面から蒸気を噴射、あたしの脇に回って装甲で飛来するボウガンの矢を防ぐ!
あたしは腕を斬られ斧を落とした野盗の股間に蹴り上げ!「グバーッ!?」
「……まだ来る」頭部装甲バイザー奥から沈痛な声。
十数人はいる、まずい。

あたしの名前はアイネ。<発掘屋>よ。
発掘屋っていうのは

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深海人の夢

「こんなの探偵の仕事じゃねぇだろ、畜生め!」

 夕暮れの薄暗い路地裏を全力で走る。たまにポリバケツをぶちまけて追手を妨害するが、半魚人どもは気持ちの悪い素早さで苦も無く追いかけてくる。前を走る小娘は楽しそうに太もものガンホルダーに手を添えた。

「ねぇ瀬山さん、そろそろ限界じゃない? 撃っていい?」

「流川、待っ」

 待て、と言う前に銃弾狂いはBLAMBLAM! と二発の弾丸を寸分の狂い無く

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デモン・フェラー 伐鬼の斧

分厚い雲が晴れることはなく、陰も日向もない灰色の日々が続いていた。
昼とも思えぬ薄暗さの中、少年エモーは小さな体に襤褸をまとい、通りですりの獲物を物色した。
肋の浮いた牛が道に転がるゴミを難儀そうに避けながら牽かれている。向かいでは怒り顔の坊主が気の滅入る辻説法をしている。肌寒い乾いた風が、カラスの鳴き声と鼠の死骸の腐敗臭を運んでくる。
後ろの酒場では、腹を満たす以上の喜びは提供していない。ここの

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交渉忍(ネゴシノビ)・鞍石清胤

艶消しグリーンの73式小型トラックが、閉ざされた邸宅の門前に停まる。
住宅街の細道に聳え立つ壁が、広大な敷地を衆目から覆い隠していた。
車の運転席で、黒髪短髪に紺色スーツの男がハザードランプを点灯させた。

「午前10時」
機械式腕時計(オリエントスター)の文字盤を指差呼称。
男は人通りの少ない路地に降り立つと、さりげなく周囲を見回した。
黒い作業用手袋と強化地下足袋で、車の屋根から壁の上へ身軽に

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エンジェル&モータルマン

歪んだ視界は朝に打ったドラッグのせい。それと、俺の心臓を撃った銃弾のせい。
 俺は薄暗い路地裏にぶっ倒れている。俺の血液に塗れて。見上げる空は灰色。やれやれ、美しい一日だな。
「痛い」
 俺は呟く。三発の銃弾は俺の心臓を破壊した。俺じゃなきゃ三回死んでる。
「で、なんで君は生きているのかな」
 目の前の女が言う。俺を見下ろし、銃をスピンさせた。金髪に、男性的なスーツ。
「ゲホッ、俺を知らないのか?

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多重転生なんて聞いてない!

地球という星が存在する世界の唯一にして絶対の法則は、“人生に絶望した状態でトラックに轢かれて死ぬと異世界に転生する”である。

◆◆◆◆◆◆

その瞬間の私は高校生で、人生に絶望していた。理由は今はとても話したくはない。けれど、誰にも負けないくらい、深い絶望の中にいた。
丑三つ時の街中をあてもなくふらふらと彷徨うことだけが楽しかった。自然の光が恐ろしかった。朝日も夕日も眩しすぎて灼かれてしまう気が

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寄生生物Xの優雅なる侵略

俺には一つ誰にも言えない秘密がある。「お帰り、真司君。仕事はどうだったかな?」それは、喋るネズミと一緒に生活している事だ。こいつは随分と愉快な奴なんだが、今日の声色からは何か緊迫した響きを感じる。

 「いや、今日もまた怒られちゃってさ…部長のやつも少しの事で起こるようになってきちゃって…大変だよ。」「ふーむ…やはりかい。」ネズミは言葉を続ける。「遂に奴らが侵略を始めたのかもしれない…」この胡乱な

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せむし・夜・びろうど

あんた、そう、そこのあんたさ。決して、決して。夜を歩きなさるな、夜を歩きめさるな。石畳を踏みしめて、天蓋の降りたる夜を歩きなさるな。天道の陰りて異色の空に誘われて、また極の氷より澄み切った霜の下りる日のエリクシルの惑わされ、夜を歩きめさるな。

 夜を歩かば。形ある影の獣は人の血潮を嗅ぎつけて通りの隅から現れる。またそぞろに歩いて隠るる人の音をば聞きつけなお捨てられた花瓶の片より現るる。星より降る

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平成八年生肉之年

ここは老舗デパート、マルコシモール。日曜の人がごったがえす屋上遊園地で、長野県警の威信をかけた大捕物が行われていた!!

「松尾クンッ!あすこだッ!」

 平岡警部が、指さすと浴衣の男が雑踏をすり抜けていった。

「待てェッ!」

 松尾刑事が駆ける。しかし署内一の健脚も、人混みには太刀打ちできず。たちまち後姿が遠のき、このまま逃してしまうのか、と思ったその時だった。

「ええぃ!どいたぁ!」

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