逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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プロレスを■した者たちへ

プロレスリング『獅子』社長は、先の無観客試合におけるリング禍について「全て筋書きに沿った演出」と説明。王者含む四名の死の事件性を否定した。

「良かった、演出か……」
王者・益荒男の死を聞き、泣き崩れた友人の顔は今も忘れられない。獅子プロは明後日の興行開催を確約し、友人含む数多のプロレス通を安堵させた。

あなたは忘れるはずもない。

その友人が特に推しているマスクマン、ケビイシが会見の場に現れた

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おれもすき
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赤騎士団

とある王国、城下町の隅に追いやられたような位置、人間と異形の者が暮らす居住区。私はここで育った。成人した私は、自警団に志願した。私を育ててくれたこの場所を守り、恩返しをしたいからだ。

採用会場の枯れ噴水広場には、人間、亜人、その他が揃っていた。設置されたテントから茶色の襤褸を着た存在がモソモソと出てきた。面接官のよう
だ。

「オイ、さっさと始めろや」

髪が逆立った男が面接官に声をかけた。

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The last day of the 90's dream

1999年12月26日、日曜22時。店のシャッターが下りた。この場所は、ひと足先に90年代の終わりを迎えた。涙が流れた。



1995年の春、俺は毎日のようにゲームセンターへ通っていた。行きつけの店『ナインティーズドリーム』。ゲームを終えた俺は英文字三字のスコアネームを入力する。『AKI』。アキと呼ばれている。

「ようアキ。もう『アルカード』の対戦でお前に勝てる奴はいないな。誰も乱入して来な

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無軌道野郎と秘密の花園

都会の僻地、灰色の広い空、歯医者が多い町。整備されていない歩道に、スーツ姿の女が早足でキャリーケースを転がす。

「ハア……」

女の溜息に反応したかのように、携帯電話の不気味な着信音が鳴った。

「はい塚本です、お疲れ様です。今、老人ホームの前です。近くですか、はい、ありました。『花園』。ええ、どうも、では宿に向かいます、はい」

薄汚い男部屋に、ゲームパッドの激しいタップ音。髪を逆立てたパンク

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