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#逆噴射プラクティス
消えゆく世界、再生の街へ
自殺志願のこどもが笑ってる。
それでも、鼓動どくんどくん。
俺のこの気持ちは、絶望と呼べばいいのだろうか。
うっすらと月が顔を出す夕暮れ時、高校からの帰り道で俺が住むS市A区の空は無数のミサイルに埋め尽くされた。
こんな事態はやはり、空想科学(イマジナリー)が織りなす芸当なのだろうか。
想像力が物質を創造する科学技術、空想科学(イマジナリー)。世の中に公表されたのは2年も前ではなかったと思う
プライスシティ・ウォー
「やはりヒック、殺すしかないと思うのだがウィーック」
今期の自治会会長、全身にぶら下げた輸血パックから直接血管に酒を流し込んでいる男、泥酔酒屋のガルゴールが漏らした。
「賛成」「そうだな」「やっちまおう」「よし、殺そう」
全員が口々に同意し、顔のど真ん中にバカでかい口だけがある異形肉屋のハルズマンが立ち上がると、拘束されていたヴィールス・カンパニー営業の首を肉切り包丁で切り落とした。
現実、虚構、セルバンテス、そして騎士
「で、マンブリーノの兜ってのは床屋の持ってたタライだったわけですよ」
「へえ、面白い」
「ほんとに面白いって思ってます?」
「うん、面白い、痛い、つつくな」
ーー2350年、環境汚染は深刻化し、もはや生物は地表に住うことを許されなくなった地球。人類は肉体の充実を諦め、カプセルにその身体を横たえ、仮想空間に精神を据える。この仮想空間に名前は無い。この空間こそが世界だ。
「一つ聞きたいん
プロレスを■した者たちへ
プロレスリング『獅子』社長は、先の無観客試合におけるリング禍について「全て筋書きに沿った演出」と説明。王者含む四名の死の事件性を否定した。
「良かった、演出か……」
王者・益荒男の死を聞き、泣き崩れた友人の顔は今も忘れられない。獅子プロは明後日の興行開催を確約し、友人含む数多のプロレス通を安堵させた。
あなたは忘れるはずもない。
その友人が特に推しているマスクマン、ケビイシが会見の場に現れた
金剛石《ダイアモンド》の弾丸籠めて
「いいか? 撃てる弾は五発だけだ」
彼の声は、脳に直接響いてきた。
軽薄な、いつでも笑いの混じった高い声。
悪魔、と名乗られた時、だから私は驚きはしなかった。
「五発分は契約しちまったからな。アンタにも撃たせてやる」
「でも貴方、リボルバーなのでしょう? 六発目が撃てる筈じゃない」
「ギャハッ! 確かに、確かになァ! アンタ頭良いぜェ!」
「……馬鹿にしている、のかしら」
溜め息が出
ホームセンター戦闘員、浅間!
「うるせえ! 自分の車に積み込めってほざいたのはてめぇだろ!」
俺が振るった金槌は、眼前のクレーマージジイが握る草刈り鎌より早く、ジジイの側頭部を打ち砕いた。ジジイは倒れ、そのまま動かなくなった。
「しまった……」
俺は青ざめた。今月の殺害許容数は5人まで。このジジイは6人目だ。本当に非正規は不利だ。殺していい数が正社員に比べて少なすぎる。
「やってしまったねえ、浅間くん。超過だ
EXORCIST IN TOKYO
「ここ日本には八百万の神がいるって話だよな」
「ああ」
「だったら今回の依頼はどうしたらいいんだ?」
神殺し。そう俺たちの仕事は現し世に顕在しようとする神を殺すことだ。だが今回の依頼はよりにもよって日本。そこかしこに神がいて依頼の神を探すのが非常に面倒くさい。多神教とか精霊信仰みたいな国はこれだから嫌なんだよ。
「とりあえず蕎麦でも食いに行くか」
「おい無視かよ。うわっ…なんだってんだ?
ロボティクス・センス
肉体の枷から解き放たれたと思えば、待っていたのは機械の制約と無感覚の世界だった。冷え冷えとしたサーバールームで後頭部に取り付けられたプラグからケーブルを伸ばし、I-10型二足歩行ドロイド「コウキシン」はそう考えた。ケーブルはサーバーへと接続され、コウキシンの頭脳がデータの吸い上げを開始する。コンピューターの画面がダイアログに表示されるようなわかりやすさは「それ」にはない。ただ感覚的に、あらゆる情
もっとみるI・F ライフアシスト疑似人格イマジナリー
「とりあえず、撒けたか?」
『近くにはいないね。でも、モードが解除されない……』
夕方の街。暗い路地裏でしゃがみ込むオレに、スタッグは言いにくそうに答えた。
顔を上げると、確かに視界の片隅には、戦闘中を示すウィンドウが残っている。
「ってことは、まだどっかにはいるのか」
『ごめんね、トウマ。何か変なんだ……』
宙に浮いていたスタッグが、俺の隣に降りてくる。
オレより少し低い身長の、クワガ
ヴァーディクト・ブレイカー
日本時間正午をもって、世界主要都市は壊滅、居住者の大半が死亡した。
その日事象として発生したのは、鈍色の骨格無人兵器、白亜の竜種、名状できぬ触手生物、錆色の巨人、腐敗の不死人、未確認飛行物体、奇怪地球外生命体、光なる神霊、異形たる悪魔といった人間の想像力を逸脱した脅威が一度に、出現と同時に人類を強襲した事態である。
一種でも手に余る脅威が、もはや数えきれない程の種別と物量でもって殺意を向けた事
古典的エリミネーター 1
「なんだ、呆気なかったな」
この日のために入念な準備をしてきたにしては、つまらない幕引きだった。
「久々の『お仕事』とはいえ、ま、こんなもんか。お前さんとは歴が違うんだよ、歴が。相手が悪かったな。」
煙草に火をつけながら、眼下に横たわるターゲットを足蹴にして吐き捨てるように言った。
生憎の荒天と、泥濘んだ地面のせいで、スラックスのプレスラインが台無しになってしまったが、今日は気にしてはいら