逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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記事

I・F ライフアシスト疑似人格イマジナリー

「とりあえず、撒けたか?」
『近くにはいないね。でも、モードが解除されない……』

 夕方の街。暗い路地裏でしゃがみ込むオレに、スタッグは言いにくそうに答えた。
 顔を上げると、確かに視界の片隅には、戦闘中を示すウィンドウが残っている。
「ってことは、まだどっかにはいるのか」
『ごめんね、トウマ。何か変なんだ……』
 宙に浮いていたスタッグが、俺の隣に降りてくる。
 オレより少し低い身長の、クワガ

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ありがたい!
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古典的エリミネーター 1

「なんだ、呆気なかったな」

この日のために入念な準備をしてきたにしては、つまらない幕引きだった。

「久々の『お仕事』とはいえ、ま、こんなもんか。お前さんとは歴が違うんだよ、歴が。相手が悪かったな。」

煙草に火をつけながら、眼下に横たわるターゲットを足蹴にして吐き捨てるように言った。

生憎の荒天と、泥濘んだ地面のせいで、スラックスのプレスラインが台無しになってしまったが、今日は気にしてはいら

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機械戦線

崩れたブロック塀に体を預けて呼吸を整える。
羽織っている不織布は汗を吸わず内側の熱を逃してくれない。だが、そうでないとあいつらに捕捉されてしまう。
薄黄ばんだ灰色に光る夜空には蜘蛛の糸のように無数の黒い電線が引かれており、電柱敷設車の獣の唸り声のようなエンジン音に呼応して時折ピクリ、ピクリと跳ねていた。
その様子は何も知らなければ神秘的で、恐らく以前のマサトであれば思わずカメラを向けていただろう。

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赤い花嫁は銃把を握る

気がつけば花嫁の世界は何もかもが変わっていた。
 爆破されて瓦礫と化した教会。死屍累々と転がる参列者たち。そして血まみれになって倒れている夫。無事であるのは花嫁だけだ。それは幸運でもあり、また不幸でもある。

「そんな、どうして」

 亡骸を花嫁は抱きしめる。夫の血が染み込んで彼女のウェディングドレスは真っ赤に染まる。
 
 空は地球の文明でない飛行体が飛び交っている。宇宙人の侵略。冗談としか思え

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