逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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the Flame Reflection

2042年10月31日、六畳一間の安アパートの一室にて。

 片隅に設置されたWiFiルーターが熱波を発し、型落ちタブレットの画面が炎を噴き上げた。飛び出た火の塊が一つ空中に蟠ると、徐々に形を変えていく。それはやがて人の形をとり、目と口を開いた。

「こ、れ、は……」

「な、なんなんだこいつ……」

 部屋の主であるヤスシは腰を抜かしてへたり込んだ。熱い。そしてわけがわからない。

「正義、だ。

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リスベットの世界

「だって、あたしがここにいたいから」
                         ――リスベット

 耳をつんざくエスニックEDM。お立ち台ではとびきりの美女が肢体をくねらせ、LEDタトゥで光の軌道を描いている。
 金曜の夜だから、「666(サブロク)パラベラム」のフロアは公共ドラッグか密造酒でブッ飛んだ客でいっぱいで、前後不覚のカラーギャングと千鳥足のビジネスマンが衝突して将棋倒し。悲鳴と

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ワイヤードゲーム脳ゴー・トゥ・ヘル!オンライン

昔、事故で半身不随になりかけた俺は、当時実用化され始めた神経インプラントを受け入れた。当時のインプラントは有線で外部機器に接続可能であり、退院後俺はPCに繋いでゲームに興じた。

 神経直結は究極のロスレスだ。テクではトップに敵わんが、反応速度だけで結構ゴリ押し出来て爽快だった。今じゃ規格と法の整備が進んで余計な機能はつけられなくなり、俺の速さに勝てる奴は今後現れまいって点でも優越感を得られた。

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日もまた一星に過ぎず

三日前、3.99KBのエスが押収された。
 埠頭のカジノを中心に、波紋のように再開発された正横浜中区。ここで二日以上電子ドラッグを使い続けられる人間はいない。無軌道な若者だろうと追い詰められた債務者だろうと、この街の犯罪者は誰もが市警に飛び込んで洗いざらい自供してしまう。犯した罪の種類も、電子置換の度合いも関係ない。
 証言の導入はいつも同じ。ウェルを名乗る覆面姿の大男に捕まり、殺されかけたから保

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🐘🐘.…...…..🐘.🐘…🐘.…
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死の舞踏

【散弾銃にナーイフ、スラグ弾に手斧、しーあげーに戦化粧…】
「変な歌を作る暇で手を動かして」
 はーい、と不服そうな声が無線から返る。母校の情報工学部から引き抜いた才媛だが気分屋が玉に瑕だ。もっとも政府の汚れ仕事に対し真摯に取り組むべきかは微妙なところで、実際、彼女の前任者は自殺している。
「先輩、準備できたっす」小規模司令部と化したリビングに後輩が駆け込んでくる。「今回の鬼は美人さんっすねー」

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クビの配達引き受けます

AP。
 その言葉が意味するのは、大体二つだ。
 一つはアーマー・ピアシング。徹甲弾。
 もう一つはアーマード・パルクール。装甲戦闘服の運び屋。俺みたいな。

「昔の戦争の花形がなあ」
「ボヤくなよマスター。俺は割と気に入ってんだから」

 酒場の店先、デカいコンテナを置く。中身は無論酒。割れキズ遅延無し。

「んじゃまたご贔屓に」

 跳躍。重力制御。ビル壁三階、垂直着地。
 走る。ハードルじみ

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Into the Cocytus

スフィアの高すぎる天井に対し照明は小さく弱く、主な光源は魚脂を撒いて着けた焚火だった。一日の最後をより惨めにする光景だ。
「お疲れ様」腰を下ろした俺に、顔見知りの機人が肉汁の入ったカップを差し出した。ひどい一日だったよ、と言って受け取る。正確ではない。ドッグに侵入した大魚の鰭に3人叩き潰されただけで済んだからだ。
「何だ、メシの不味くなるツラが食ってやがるな」魚人が歩み寄ってきた。奴とはフロッグマ

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0と1のマヨイガ

ザナドゥのどこかにマヨイガがある、という噂は以前からそれなりに有名なものだった。
曰く、行けば仮想通貨所持限度額いっぱいの大金持ちになれる。また曰く、バケモノに遭って端末越しに脳を焼き殺される。
噂の多くは荒唐無稽な内容だったし、たいていの人はそれらの噂を電脳上の仮想空間ですら学業や労働に追われる生活からの惨めな逃避行動であるとして取り合わなかったが、まさしく逃避先を求める一部の人々によってその噂

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楓 -KAEDE- ザ・忍者ロイド

「「重装甲サイボーグ!?」」
コートにソフト帽の中年刑事と、青髪パンクの新人刑事が同時に叫んだ。
彼らの前に守護神めいて立つは、ポリスカラー忍者装束の女アンドロイド!
「ヌゥッハハハッ! 蜂の巣にしてやるッ!」
更にその前方で、全身装甲サイボーグがベルト機関銃を構え哄笑!
「2人とも、伏せてッ!」
「どうする気だ、楓(KAEDE)ッ!?」
中年刑事・ジャックの声に構わず、女ロイド・楓は駆け出し、跳

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