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#小説
超密着!世界ランタンロイヤル
我が魂は年一度ハロウィーンの夜に甦る その時地上で最も強大なジャック・オ・ランタンを産み出した者の願いを叶えて進ぜよう
ジョン・バンボギンが死んだ、その暴力と異能を以って世界を牛耳る鬼子は腫瘍で呆気なく逝った。均衡は崩れ、世のアウトロー共は彼の遺言に野心を駆られるのだった。
それから始まった世界ランタンロイヤルも今年で52回目、今回も我々取材班は独自に注目した選手達に密着取材を試みた。
ナガヤマ・カイジュー・ディフェンス社「ジェットセイバーⅤ」墜落事件
全長50mを超える巨大な怪獣が、住宅を、電柱を、自動車を、総てを圧し潰しながら歩みを進める。立ち向かうのは、上半身が緑、下半身が黄色に塗られた、全高10mほどの人型ロボット。サイズの差を物ともせず果敢に挑みかかるロボットだが、怪獣が吹き出す暴風に押し返され、有効な攻撃が与えられない。
もはやあの怪獣を止めることは出来ないのか。人々がそう思った矢先、赤、青、紫で構成されたロボットが雲中から猛然
或人形之足跡(アルヒトガタノソクセキ)
広漠とした荒野
普段ならば道を急ぐ商人が通るやもしれぬが今は誰も通りはしないだろう。
そう…荒野を埋め尽くす突き立った矢の海を歩きたがる者などそうはいない。
何があったかは分からぬ。
もしかすれば災害を招く巨獣を迎え撃つためだったのかもしれない。
だがそれらしきモノの姿もなく荒野にはただ矢のみが突き立たるのみだ。
何かの災厄を徹底的に封じるかのように隙間なく矢は荒野を埋め尽くしていた。
時が過ぎ鏃
木霊のエルフに施す薬
暑い。坑道に足を踏み入れた途端にむっとした熱気がルメの頬にあたった。緩く下って行くにつれてそれは顎から汗を滴らせた。持参のカンテラを巡らせれば黄色く滑らかな岩肌ばかりが目に入り、輝石の欠片も見当たらない。
「この辺は全部採り尽くしちまった」
先を進む案内人が呟いた。”木霊のエルフ"らしくツルハシを背負い、終生鋏を入れることはないという翡翠にも似た髪の間から覗く背中は、松を思わせる鱗状の樹皮に覆
プライスシティ・ウォー
「やはりヒック、殺すしかないと思うのだがウィーック」
今期の自治会会長、全身にぶら下げた輸血パックから直接血管に酒を流し込んでいる男、泥酔酒屋のガルゴールが漏らした。
「賛成」「そうだな」「やっちまおう」「よし、殺そう」
全員が口々に同意し、顔のど真ん中にバカでかい口だけがある異形肉屋のハルズマンが立ち上がると、拘束されていたヴィールス・カンパニー営業の首を肉切り包丁で切り落とした。
ゲート・ブレイカー 第一話「破門」
「ハチコ、戻ったぞ」
門関連犯罪対策特別捜査隊と書かれた扉を開き、小柄な女性が入ってくる。黒髪のポニーテール。勝ち気な瞳。
「ナナミ先輩、平気なんスか。さっきの現場で派手にフッ飛ばされてましたケド」
長身の男が立ち上がり、心配そうな視線と声を寄越しながらバタバタと駆け寄ってくる。不潔な訳ではないが、ボサボサとまとまりのない栗毛。眠そうに下がったタレ目。対照的な二人組である。
「アタシは軽い
聖なる寿司殺し〜ザ・キリング・オブ・セイクリッド・スシ〜
今日の客は許し難かった。あろうことか寿司のネタだけを食べ、シャリを残したのだ。スシ・ガーディアンである俺がこれを看過出来る筈が無い。カウンター内に設置されている高速リフトから垂直射出された俺はその客の眉間めがけて刺身包丁を投擲した。瞬く間に客の顔面は見事な三枚おろしと化した!
「いやぁいつも助かるねぇ、ゲンさん。また次も頼むよ。」
「いやいや、礼は要らねえよ。これが俺の仕事だからな。」
現実、虚構、セルバンテス、そして騎士
「で、マンブリーノの兜ってのは床屋の持ってたタライだったわけですよ」
「へえ、面白い」
「ほんとに面白いって思ってます?」
「うん、面白い、痛い、つつくな」
ーー2350年、環境汚染は深刻化し、もはや生物は地表に住うことを許されなくなった地球。人類は肉体の充実を諦め、カプセルにその身体を横たえ、仮想空間に精神を据える。この仮想空間に名前は無い。この空間こそが世界だ。
「一つ聞きたいん