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#SF
T.Q.B.ファイターズ!
白く光る飛行機雲が、少年の視界を横切った。
それを眼下に眺めながら、少年は操縦桿に少し力を込めた。少しだけ下を向いたコックピットが、向かい風に揺れた。シャツに包まれた、少年の乳首にひんやりした感覚が走る。少し顔を赤らめつつ、少年は操縦桿を左に傾ける、まるで最初からそこに上昇気流が吹いていることをわかっていたように、彼の乗る戦闘機はふわりと浮かんだ。
男性の乳首が、単なる痕跡器官ではないこと
消えゆく世界、再生の街へ
自殺志願のこどもが笑ってる。
それでも、鼓動どくんどくん。
俺のこの気持ちは、絶望と呼べばいいのだろうか。
うっすらと月が顔を出す夕暮れ時、高校からの帰り道で俺が住むS市A区の空は無数のミサイルに埋め尽くされた。
こんな事態はやはり、空想科学(イマジナリー)が織りなす芸当なのだろうか。
想像力が物質を創造する科学技術、空想科学(イマジナリー)。世の中に公表されたのは2年も前ではなかったと思う
スクラップラー・ジョオ
──このマシンを造ったヤツは、イカレている。
棺桶のごときコックピットのなかで、俺は反射的に操縦桿を操作する。マシンの両腕が、胴体のコックピットと頭部センサーを守る。
防御態勢をとる鋼の前腕ごしに、サブマシンガンのマズルフラッシュが迸る。同時に、着弾の衝撃が操縦席を揺さぶる。
機関銃が吐き出す弾丸を、両腕の装甲が弾く。弾く弾く。弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾く。
敵機はフルオート
アルフォンス・ミュシャ:死季
これがミュシャか――暗殺者はそう思った。ひび割れたような肌の深い皺に、柳の枝を思わせる長い髭。藤椅子に浅く腰掛け、現世を忘れたかのごとく微睡んでいた。初代ボヘミア皇帝にして最強の魔術師、アルフォンス・ミュシャは当年とって79歳になる。
燭台が照らす暗い広間の隅で、殺し屋は肩透かしを食ったような気分で短刀を手に取った。そしてその瞬間、自分が死地の只中にあることを知った。
「解れよ」呆けたよう
気になるあいつは宇宙人
月影織姫はいわゆる学園のアイドルなどと呼ばれる女子生徒だ。流れるように綺麗な黒髪にモデル顔負けの顔、学年トップクラスの成績という才色兼備の優等生。それでいて才能をひけらかすことはなく誰に対しても優しい性格の良さ。人気にならない要素が見当たらない。
彼女に告白しものの見事に玉砕した男子は数知れず。全員が丁重にお断りされたという。
かく言う俺、大空朝陽も彼女に興味がないといえば嘘になる。月影織
メカニカル・ピルグリム
「おい、そちらに何かあったか」
「いやダメだな…もうガラクタしか」
薄暗い部屋で、二人の泥棒が仕事をしていた。
泥棒。そう泥棒だ。だがそれを咎めるものはいない。とうの昔に滅んでいたからだ。
「こちらもダメだ…このバッテリーはもう切れてるし、この記憶媒体は旧式すぎる」
「おっ!こりゃまだ動きそうだぜ」
一人の男が映像端末を見つけて電源を入れる。
『ロボットの生み出す新しい社会。低燃費で人間に代わる新
どぶネズミと不死身の少女
「きゃああー!」
可愛らしい叫び声と共にJK風の格好をした美少女が吹っ飛び、体力値が0になる。俺達の勝ちだ。
敗けた美少女の体が光と消えその場には全裸中年男性が残った。
[俺のガチ恋を返せ]
[キモい体を晒すな]
[死んで詫びろ]
低評価とコメントが瞬時に中年に叩きつけられる。
量子都市ウクバール、そこは生身の体をポッドに納め、全感覚を仮想空間の巨大都市へと移すことを選んだ奴
ロンドン・コーリング
––ピピ、言語設定ヲ変更シマシタ––
後ろから話しかけてくる男に、携帯情報端末が反応したようだ。
「失礼、そこのお二人。道を尋ねたいのだが、大英博物館はコチラで合ってますかな?」
「いいや、あっちの通りの角を右に曲がって真っ直ぐだぜ。案内しようか?」
「いや、案内は結構ですよ。たいへん助かりました。」
「当たり前の事をしたまでだぜ、英国紳士として!」
男は、触手3本で頭上に8の字を切るグ
真白と機械仕掛けの輪舞曲
目の前に死体がある。
日常茶飯事な光景らしい。
正確に言うと“まだ”死体ではない。
パルスシグナルで構成されたドラッグの様な音楽のリズムに合わせるよう、目の前に横たわる体軀が未だ脈動しているからだ。
メタンフェタミンと似てるようで似ていない快楽物質<エミネント>をキメることがマナーになっているこの場所では誰もそれに気に留める様子は無い。
「どう、簡単でしょ」
色彩も濃淡も無い口調で、僕
グッバイ・ペーパーカンパニー
同じ業種にいる人間は一目でそれと嗅ぎ分けることができる。パッキングされた新聞片を素早く捲る手つきや、バラ売りされた古書の紙片に印刷されたタイトルを一瞬で黙読する視線。決して広いとは言えないデパートのスペースで開かれたこの古本市で、旧世紀の「お悔やみ欄」を捲る女は俺と同じものを探している。観察する限り、彼女は俺と同じ「製本師」だ。無知な好事家を騙す詐欺師だ。
2000年代が三百年も過ぎれば紙の本
令和新撰組最後の事件 古都銘菓騒動
「御用改である!」
政策により建て直された古民家風の町家の玄関戸を蹴破り中に踏み込む。
俺の着ている浅葱色をしたダンダラ羽織が翻り、高周波ブレードへと改造された日本刀が鞘走る。
「ぎゃあっ!」「ぐえええ!」
戸の左右にいた不逞浪士風の男たちの手足をぶった切ると情けない悲鳴を上げてぶっ倒れやがった。やかましい、安物サイバネ程度で騒ぎやがって!
イベントで黒谷に「沖田」の1番隊がいたの