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「やめた方がいいよ」 隣を歩く少女は、そう言って顔を覗き込んできた。長い金髪が揺れる。 クリスマスの夜。大通りは、カップル達で溢れている。 行き交う人の中で、少女の姿は浮いていた。バニースーツを着ているのだ。どう考えても屋外で着る服ではないだろう。 だが、通行人達が彼女に目を向ける事はなかった。 何故なら、彼女は俺が脳内で作り出した幻覚だからだ。 「向いてないよ、蓮には、殺し屋とか」 幻聴。この言葉も、俺にしか聞こえない。 少し前から視える様になった、スト
カバン片手にだだっ広い駅のホームに降り立つと、独特の臭いが鼻をついた。 煤と鉄の臭い。強い酒と焼けた肉の臭い。 火の臭い。 ドワーフの街の臭い。 駅の公衆電話で先方に連絡を入れた。交換手は少しもたついたが、それでもすぐつながった。夜も遅かったが先方はまだ起きていた。私は街に到着したことを告げた。 今日はもう遅いですから、会うのは明日にしましょう。場所とお時間はそちらにお任せします。私は〈コクランの巻鬚〉亭に宿を取っています。 私がそう言うと、先方は、そちらの食堂