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逆噴射小説大賞2023:一次&二次選考突破作品

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小説の冒頭800文字で競う逆噴射小説大賞2023! その二次選考の突破作品集です。■応募要項 https://diehardtales.com/n/n23ff04fae3b4 ■…
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#創作

レザレク

 時間が無い。早く殺してあげなければ。  俺の全身を包む特殊作業服を、その思いと熱気とが満たしていた。  満島六郎。79歳。推定、ベッドで急死。  満島栄子。74歳。同、転倒し頭部を強打、死亡。  問題なのは、寄り添う様に死んだ彼らに隣人が気付くまで半日要したことだった。 「白化、始まってますね」 「ああ。マズい」  俺は六郎氏の頭部にスキャナを当てる。死後17時間。危険域だ。頭全体を白い光が覆い始めている。残念だが死を悼む暇はない。 「夫さんは緊急処理を行う」 「

「迦陵頻伽(かりょうびんが)の仔は西へ」

 身の丈七尺の大柄。左肩の上には塵避けの外套を纏った少女。入唐後の二年半で良嗣が集めた衆目は数知れず、今も四人の男の視線を浴びている。  左肩でオトが呟いた。 「別に辞めなくたって」  二人は商隊と共に砂漠を征き、西域を目指していた。昨晩オトの寝具を捲った商人に、良嗣が鉄拳を振るうまでは。 「奴らは信用できん」 「割符はどうすんの」  陽関の関所を通る術が無ければ、敦煌からの──否、海をも越えた旅路が水泡に帰す。状況は深刻だった。  口論が白熱する最中、遂に視線の主達は姿

悪魔治療士《デモン・ヒーラー》デミアンの治療簿

 その日、ワラキア領内のトゥルゴヴィシュテの城は混乱に満ちていた。混乱の中心には一人の男。黒革の鎧を纏い、奇怪な武器を携えて単身乗り込んできたその男に、城の警備兵は圧倒されていた。 「うわぁぁぁっ!」  兵士の一人が槍を突き出し男へと迫る。しかし男は槍の穂先をするりと躱し、柄を掴んで兵士を引き寄せる。体勢を崩した兵士の首を鷲掴みにすると、恐怖に歪んだその顔をじろりと睨みつける。兵士は血の涙を流していた。男は呟く。 「ふむ。血涙ということは眼球の毛細血管がやられているな。眼圧も