- 運営しているクリエイター
記事一覧
パニシュ・ユア・ヴァニシュ
問題。重量2g余りの僅かな金属片で人が殺せるか。答えは恐らくイエス。全長15mmのリムド薬莢に、直径5.6mmのヒールド弾頭を被せればいい。
.22LR弾が7発。ワルサーTPH拳銃が1挺。消音器とセットで300万円。
特戦群に居た頃は使う暇も無かった俺の貯金は、今やその大半が目の前のちっぽけな銀玉鉄砲に変わった。後悔は無い。どうせ天涯孤独の身の上だ。
死して屍拾う者無し。俺が中東に居
ダンジョン素潜り師 全裸のゼンジ
どこまでも通路が伸びる赤い迷宮。地面が光り、闇の中で焚火をしているような空間であった。短剣を持った骸骨はただまっすぐに通路を歩き、曲がり角へ当たれは戻る。ただそれを繰り返し、また曲がり角へ来た。
「ソイッ!」
突如降ってきた全裸の男の肘に骸骨の頭を砕く。
「見たか!これぞ現地調達!」
男は骸骨の短剣を奪い掲げた。
「短剣より服はないですか、ゼンジさん。見苦しいのですが」
ゼンジ
ようこそ殺人鬼の街へ
『殺人鬼また死亡。これで4人目』
俺は新聞から顔を上げ、「また殺されたらしいぞ。殺人鬼」と妻に言う。だが、反応無し。妻は食器を洗っている。
最近、この街を賑わせている連続殺人鬼殺人事件。
ここ、西暁町は殺人事件が日本一多い街として有名だ。毎年1万人くらい殺されており、町長はもう開き直ってそういう町としてプロモーションしている。市のホームページにはおどろおどろしい文字で「ようこそ殺人鬼の街
最速箒伝説 Black Bamboo
始まりは弾圧からの逃走技術だと言われている。やがて弾圧もそれを行っていた者どもも消え去り、その技術だけが遺された。
日本。AM12:00。晴れ。湾岸を流していた魔女のサリはすぐ前に箒乗りがいることに気がついた。サリのカスタムした樫の箒とは違う、ただの真っ黒な竹箒だ。だが丁寧に作られた箒であることは走りでわかる。
(へえ、乗り手もオールドスタイルってワケ)
三角形の帽子に黒のケープを着た顔の見
星なき熾天のコンスピラシー
1969年7月20日、すべての星が、落ちた。
バズ・オルドリンが月面から見上げる空から、拭い去るように、星が消えていく。
人の宇宙への旅は、その栄光の到達点で、殺された。
「オムファロス公理。はい、説明できる人?」
まばらに手が挙がる。
「天文学が長年陥っていた誤ちを説明する原理です」
「はい。そうです。人類は、星を観測することで《外》が存在すると信じてきました。ですが、それは天蓋
てめえの死に顔も見飽きたぜ
私は205号室の扉の前で、ポーチから拳銃を取り出した。どうせ、扉に鍵はかけられていないだろう。いつものことだ。案の定、ドアノブに手をかけて捻るとそれだけで扉は開いた。
拳銃を構え、室内に入る。玄関からは、すぐにリビングへ繋がっている。リビングには大きな机と二脚の椅子。片方の椅子にヘレンが座っていた。
「やあエラ、今日は君の誕生日だね。一緒にお祝いしよ——」
気安く呼びかけてくるのを無視して、
あの子に好きだと言ったなら
あの子の部屋に遊びに行った時、寝室のドアノブにネックレスがかけられていた。雑然とした部屋のなかでそのドアノブだけが特別扱いされていることは一目瞭然で、それは彼女に男がいることを容易に想像させた。
解散、解散。無理です。あんな安っぽいネックレスを大事に特別扱いするような仲、どうしようもない…
どうしようもない…
落胆するわたしにうさ耳のメイドさんが話しかけてきた。
「諦めちゃうんですか〜?」