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ドント
2021年10月11日 22:12
「すいません、あの」 その声で目が覚めた。若い女が、私の顔を覗き込んでいる。 背と尻に硬いクッションの感触、心地よい定期的な振動。あぁそうだ、俺は終電に乗ったんだと思い出す。ガラガラの車内に座り、そのまま眠ってしまったらしい。 寝起きのぼんやりする頭を上げると、乗客が四人立っていた。 先の若い女にスーツの中年男、私服の青年、老婆が、身を寄せ合うようにしている。 四人の顔には一様に不安げ