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#パルプ小説
ようこそ殺人鬼の街へ
『殺人鬼また死亡。これで4人目』
俺は新聞から顔を上げ、「また殺されたらしいぞ。殺人鬼」と妻に言う。だが、反応無し。妻は食器を洗っている。
最近、この街を賑わせている連続殺人鬼殺人事件。
ここ、西暁町は殺人事件が日本一多い街として有名だ。毎年1万人くらい殺されており、町長はもう開き直ってそういう町としてプロモーションしている。市のホームページにはおどろおどろしい文字で「ようこそ殺人鬼の街
アンジー・ラナウェイ・オーヴァドライヴ
追ってきた最後の一台が雷に灼かれたが安堵する暇は欠片もない。独りでに迸る絶叫とともに一ミリ残らずアクセルを踏み倒す。
組織の上納金をガメれた時点で奇跡だった。ゴミ箱と通行人を撥ね飛ばしながら街を抜け、追手どもをハイウェイで殺いて三台まで減らせた辺りで女神のキスを確信した。
今日の俺はツキにツイてる、何があっても死ぬはずねえ。馬鹿笑いしながら突っ込んだ先は、組織も政府も手を出さない未開の荒野。先住
犬と狼の間 -Entre chien et loup-
一閃。
歳三の放った斬撃は、夕暮れの光を反射し、文字通り一条の線となった。閃光は、相対する魔獣を両断する。
渾身の一撃。一瞬の後、魔獣は夥しい量の血を撒き散らしながら、どうと崩れ落ちた。絶命。
歳三は、血振りをしてから、滑らかな動作で刀を鞘へと納めた。
静かだった。
三条小橋は黄昏時。本来ならば、町人たちが道を行き交っていてもおかしくはない時間帯だ。しかし、今は人っ子一人姿を見せない
レイダウン・ユアハンド -Lay Down Your Hand-
「賭けをしよう」
俺の対面に座る初老の男が言った。
ジム・ラズロー。このカジノの主だ。
「賭け? いいね。大好きだ。特にポーカーには――」
俺の言葉を遮るように、ジムが指をさす。
カジノの入り口。
「次に、あの扉を開けて入ってくる客。そいつが、『男』か『女』か、賭けたまえ」
ジムが言った。
「当てたら、話を聞いてくれるのか?」
「まさか。――当てれば、君はこのカジノを無事に出ていける」
俳優アントニオ・マルティネスについての記憶
専任スタントという職業がある。そう、俳優には違いない。しかし、独自性を表現することはない。なにしろ俺の仕事は、あのアントニオ・マルティネスに成りきることだからだ。
「どうなった?」
バスローブに靴下という妙な出立ちでヘスは言った。
「全部済んだ。もう好きに過ごせ」
俺がナイフの血を拭いながら言うと、口髭の端から泡を飛ばすようにして俺を称賛した。
ヘスのような貧弱野郎が命を狙われるには相応