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#小説
パニシュ・ユア・ヴァニシュ
問題。重量2g余りの僅かな金属片で人が殺せるか。答えは恐らくイエス。全長15mmのリムド薬莢に、直径5.6mmのヒールド弾頭を被せればいい。
.22LR弾が7発。ワルサーTPH拳銃が1挺。消音器とセットで300万円。
特戦群に居た頃は使う暇も無かった俺の貯金は、今やその大半が目の前のちっぽけな銀玉鉄砲に変わった。後悔は無い。どうせ天涯孤独の身の上だ。
死して屍拾う者無し。俺が中東に居
ダンジョン素潜り師 全裸のゼンジ
どこまでも通路が伸びる赤い迷宮。地面が光り、闇の中で焚火をしているような空間であった。短剣を持った骸骨はただまっすぐに通路を歩き、曲がり角へ当たれは戻る。ただそれを繰り返し、また曲がり角へ来た。
「ソイッ!」
突如降ってきた全裸の男の肘に骸骨の頭を砕く。
「見たか!これぞ現地調達!」
男は骸骨の短剣を奪い掲げた。
「短剣より服はないですか、ゼンジさん。見苦しいのですが」
ゼンジ
星なき熾天のコンスピラシー
1969年7月20日、すべての星が、落ちた。
バズ・オルドリンが月面から見上げる空から、拭い去るように、星が消えていく。
人の宇宙への旅は、その栄光の到達点で、殺された。
「オムファロス公理。はい、説明できる人?」
まばらに手が挙がる。
「天文学が長年陥っていた誤ちを説明する原理です」
「はい。そうです。人類は、星を観測することで《外》が存在すると信じてきました。ですが、それは天蓋
てめえの死に顔も見飽きたぜ
私は205号室の扉の前で、ポーチから拳銃を取り出した。どうせ、扉に鍵はかけられていないだろう。いつものことだ。案の定、ドアノブに手をかけて捻るとそれだけで扉は開いた。
拳銃を構え、室内に入る。玄関からは、すぐにリビングへ繋がっている。リビングには大きな机と二脚の椅子。片方の椅子にヘレンが座っていた。
「やあエラ、今日は君の誕生日だね。一緒にお祝いしよ——」
気安く呼びかけてくるのを無視して、
あの子に好きだと言ったなら
あの子の部屋に遊びに行った時、寝室のドアノブにネックレスがかけられていた。雑然とした部屋のなかでそのドアノブだけが特別扱いされていることは一目瞭然で、それは彼女に男がいることを容易に想像させた。
解散、解散。無理です。あんな安っぽいネックレスを大事に特別扱いするような仲、どうしようもない…
どうしようもない…
落胆するわたしにうさ耳のメイドさんが話しかけてきた。
「諦めちゃうんですか〜?」
素晴らしき哉、復讐!
大蛇が野うさぎを食べていた。茂みの影のなかで、白くて小さな愛らしい影が飲まれていく。ツツジは刀の柄を強く握った。これは自然の摂理だ。邪魔してはいけない。この世はいのちを食い食われる場所だ。しかし山は奇妙なまでに静かだった。この風景をどうしても見せようとしているようだった。
強い胸騒ぎがしてツツジは走った。丘を下り川を越えたところで黒煙が見えた。芒野を抜けると家が燃えていた。サクラが夕食の支度を
殺人に理由を付けるな
汚水が排水溝から逆流してきたような、ゴボゴボと汚い音が『共食い』バリドの断末魔だった。腐敗刃を凶器に選んだのは失敗だったか。ただでさえ臭い食人鬼の身体、その腐液は想像の二十倍以上臭かった。
「ガボガッ……グゴボッ……」
ああ、またあの目だ。俺に向けられたバリドの視線が言っている。いったい誰の差し金だ、何故こんなことをしたんだと。
「だから理由なんてないってのに……何度言ったらわかって
少女たちは天国の扉を叩く
二人で決めた天国に、二人だけでいくために。
病院の待合室で。そして病室で。二人で決めた、二人だけのひみつの戒律。
病院から抜けだした後、移動する手段が欲しかった。服も着替えたい。
ようやく止まってくれたタクシーに私たちは乗り込んだ。
「お客さん、どちらまで?」
運転手は結構若くて、患者服の私たちにも興味がないようだった。
「決めた」
「そうだね、この人にしよう」
差別も区別もせずにタ