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もう駄目だと思った。 山奥の廃村でこの男の頭を岩で潰しておしまい。そのはずだった。 …
乾き切って埃っぽい朝未の空気が、頬と髪を撫ぜる。私はふと海鳴りの音を聴いた気がして、顔…
「先輩、見つけました!脱法ハードコアです!」 ちくしょう、また輸入品(ヨソモン)か。 近…
やりすぎたか。 護衛の依頼を受けての入国。凍死体から衣服を奪う追い剥ぎに襲われ、 咄嗟とは…
鏡に映った男が、昏い目つきで俺の顔を覗き込んでいる。なんて目をしてやがるんだ。まあ、ヤ…
星が落ちて3輪後。その方角から、天を照らすほの明るい赤が目立つようになった。それは井戸…
「タピオカ侍だって!?なんてふざけた野郎だ!」 SNSに表示された親分の指令を権六が読み上げると、昼餉を楽しむ一同から笑いが上がった。四半刻もすればそのふざけた何者かがこの谷を通るので、始末しろという。県が差し向けた討伐隊を何度も追い払ってきた彼等にとっては容易い仕事である。 「甘く見るなよ」 だがまとめ役の権六は厳しく言った。 「一人であちこちの山賊を潰してる凄腕らしい。単なる英雄気取りだろうが、そう噂されるだけの何かはあるだろう。全力でかかれ」 皆の表情に
「今日はこれで失礼します。ご協力どうも」 老刑事は不機嫌そうに告げ、部下を連れて引き上…
安物の日本酒の瓶と、さっきコンビニへ走って買ってきたイカの燻製。 明日は会社も休みだ…
──この酒、味がしない。 それに気付いたのは、皿に零した酒を啜った時だった。 半年…
暗闇の中どこまでも木々と静寂が続く林道。どこまで車を走らせても似たような景色が続く。丸…
電鉄のストで仕事を早引けした日の夕方だった。 「今日は星雪祭なんだって!」 ただいまよ…
「岸川さん!」 「岸川ァ!」 「てめぇ待てや岸川!」 今や岸川は理解していた。今日は明らかにおか…
「どないしたんな」 老人が虚空を眺めながら問いかける。 ぼくの額からは汗がとめどなく流れており、走ってきたせいか鼓動が耳の中に反響する。 「あれを」 ぼくは乾いた唇を舐めて湿らせた。 「あれを知ってたんですか」 老人はちらりとこちらを一瞥して口角を上げた。 「ゆうたじゃろ、あんなとこ行かれんて」 そうだ、止められたのに行ったのはぼくだ。 大神子(おおみこ)海岸は砂地が少なく砂利でできた浜だ。 いつだったか友人と海で遊ぼうと水に入ると、浜から数メートルも離れてないのに急に足が