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逆噴射小説大賞2023応募作品一覧

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逆噴射小説大賞2023の全応募作品を収集するマガジンです。コンテストの詳細はこちら:https://diehardtales.com/n/n23ff04fae3b4   Phot…
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#パルプ

殺家道 -Write, Load, Kill, Repeat-

 パキャ。間の抜けた銃声の直後、四五口径の銃身がショートリコイルし、背高の照準器の向こう側にあるプリン髪の脳天から血が噴き出した。 「私は小説を書いていた。いや今でも書いている。人を殺す小説だ」  パキャ、パキャ。銃声が続き、タンクトップの胸に血が滲む。 「だが、本当は小説が書きたいワケじゃなかったんだ。最近気付いた」 「うおおおおおッ!」  背後から迫る絶叫と足音。人吉善一は冷静に振り返り、右手のドイツ製の消音拳銃の狙いを定め、撃つ。パキャ。スキンヘッドから脳汁が溢

謝肉祭のモンド -Mondo Carnevale-

 瓦礫の街。野営地を見下ろす丘の上。爆撃で崩れかけた教会の残骸。 「――サン・サーンスより、死の舞踏」  イヤホンの向こうから、ラジオの音楽が聞こえてくる。 「ステイですよ、坊ちゃん」  無線で諭す女の声。女の背後で響く優雅な管弦楽の旋律。少年・モンドは吐き気を堪えた。瓦礫の裂け目に寝そべり、分隊支援火器を十字架のように抱えて、照準眼鏡ごしに彼が見下ろす野営地は、酒池肉林の大騒ぎだった。 「貴方の撃つべき敵を忘れないことです」  捕虜の片腕が生きたまま切断される光

【逆噴射小説大賞2023】Happy!! Good-Bye!! Riazyu!!

 待ちに待ったクリスマス・イブ。  プレゼントを買いに、彼と一緒に表参道で買い物に行っています。  彼とは小学生からの幼地味で、いつも一緒に勉強したり遊んだりしています。  彼の家には何回も行ったこともあるし、泊まったこともありました。あ、そういえば夏祭りも二人っきりで行ったけ。  このように私達はとても仲のいい友達ですが、実は彼のことが好きなんです。  しかし、いざ告白となるとタイミングが難しく、今回のデートも何の進展もないまま解散する事になりました。 「じゃあ、明日」 「

【逆噴射小説大賞2023】波乱の世界に僕はいる

 風が戦慄いていた。横たわる彼女の髪に息を吹き込ませてくれるかのように何度も何度も唸っていた。  僕は立ち尽くしていた。悍ましい血で染まり、数分前に触れた彼女の最後の生温かさのなごりの手を見ながら。  死んでいた。彼女は間違いなく死んでいる。僕の大好きな彼女が、シスターが、昨日まであんなに笑ってくれていた人が、今はもう見捨てられた操り人形のように事切れている。  目は充血し乾燥していた。髪の毛がずぶ濡れになるくらい降っている雨が僕の代わりに泣いてくれていた。  ふと視線を感じ