【逆噴射小説大賞2023】波乱の世界に僕はいる
風が戦慄いていた。横たわる彼女の髪に息を吹き込ませてくれるかのように何度も何度も唸っていた。
僕は立ち尽くしていた。悍ましい血で染まり、数分前に触れた彼女の最後の生温かさのなごりの手を見ながら。
死んでいた。彼女は間違いなく死んでいる。僕の大好きな彼女が、シスターが、昨日まであんなに笑ってくれていた人が、今はもう見捨てられた操り人形のように事切れている。
目は充血し乾燥していた。髪の毛がずぶ濡れになるくらい降っている雨が僕の代わりに泣いてくれていた。
ふと視線を感じ