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冒険には危険が付き物だ。だからこそ、彼女の仕事も尽きない。 「こちらシリス。目標地点に到達しました」 「了解、対象はそこでロストしている」 シリスは、自らを覆う手足の付いた棺を立ち上がらせる。そしてコフィンが背負うのもまた、棺だ。これが、彼女の仕事だ。 場所は、現代にはない意匠が彫り込まれた遺構。近年一夜にして、こつ然と発生した山に発見された迷宮。未探査の遺跡とあってこぞって冒険者達が押し寄せた。その後は、この通り。 コフィンの眼を通して、シリスは辺りを探る。
天牢は落ちる、お前が止めぬ限りな。 逆巻く渦のランアの言葉が、ロウの頭の中で反響し、同時に先ほどの死の記憶も引きずりだされた。自分が挽肉になるのはああいうことか、と今も生生しく思い出される。 視線の先にはもはや見慣れた石造りの天井。見るのはこれで三度目となる。一度目はランアの言葉を無視して、落ちた『天牢』ごと木っ端みじんになり、二度目はこの地に封じられた怪物、その一体に粉砕された。 「クソ……」 身を起こす。己の身体を見定める。手足目耳鼻、全て万全だ。何もかも