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逆噴射小説大賞2023応募作品一覧

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逆噴射小説大賞2023の全応募作品を収集するマガジンです。コンテストの詳細はこちら:https://diehardtales.com/n/n23ff04fae3b4   Phot…
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#twitter小説

老いてはことを仕損じる

 闇の訪れのような声だった。 「さあ、抜きなよ」  共に深夜の雑居ビル、その間の暗がりにはとても似つかわしくない二人だった。  一人は静かな闘志を孕んだような赤髪。背は高く、闇のように黒いセーラー服に、赤いリボンタイ。人差し指に通したリングキーホルダーの先、黄金の防犯ブザーは左右に引っ張られ、今にもエネルギーを開放しそうになっている。  ブザーを構えるまで幼剣士とわからなかったことを、もう一人──ルミは己の慢心であると捉えた。 「私が『時知らず』と知っての狼藉か」

グリッチマン

 叙ンは墓場に住んでいる。  正確には、叙ンは墓場の座標からマイナス数ポイント下に位置している。いつからこうだったのかはわからない。彼はそうあるべしとして作られ、設置された。  この墓場は所謂没データらしい。世界と繋がることなく、さりとて消されることもなく、プログラムの狭間でただ存在することを宿命付けられた叙ンは、唯一実装された墓を掘るモーションを繰り返し、誤った座標の下で足をバタつかせながら別の墓へと移動する。  数もわからぬほど繰り返した時間の中で今、叙ンは初めて自