悪魔治療士《デモン・ヒーラー》デミアンの治療簿
その日、ワラキア領内のトゥルゴヴィシュテの城は混乱に満ちていた。混乱の中心には一人の男。黒革の鎧を纏い、奇怪な武器を携えて単身乗り込んできたその男に、城の警備兵は圧倒されていた。
「うわぁぁぁっ!」
兵士の一人が槍を突き出し男へと迫る。しかし男は槍の穂先をするりと躱し、柄を掴んで兵士を引き寄せる。体勢を崩した兵士の首を鷲掴みにすると、恐怖に歪んだその顔をじろりと睨みつける。兵士は血の涙を流していた。男は呟く。
「ふむ。血涙ということは眼球の毛細血管がやられているな。眼圧も