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S3第7話【ナラク・ウィズイン】#9(分割版)

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◇関連エピソード:「ギア・ウィッチクラフト」

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「返す?」ジョウゴ親王はニンジャスレイヤーを睨んだ。「貴様に我が力を返すだと? 世迷い言を」青銅甲冑を脈打つカゲムシャ・ジツの炎は、彼の内より出でる赤黒の炎と混じり合った。邪悪なマントがはためいた。「ザンマよ! いつまで遊んでおるか。イクサを始めるぞ!」

「ヌウン!」ザンマ・ニンジャはキアイを込め、足元を侵すケイトーの最後の拘束力を蹴り払った。「ザンマの敵はニンジャスレイヤー也……!」「然り! 退治せい。ブザマに滑落せしケイトーには、我がニンジャを向かわせた! 貴様はこの場の二匹を仕留め、終わらせるのだ」「……」ザンマは大剣を構えた。

「イヤーッ!」ザンマはザンマブリンガーで横へ薙いだ! ジョウゴ親王の鼻先をかすめた刃は、ヘラルドを襲った。ヘラルドは赤黒の炎の渦めいて身体をねじり、姿勢を下げて、強烈な回し蹴りで応じた!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ザンマはヘラルドのカラテを受ける! 拳を繰り出す!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」ヘラルドは拳を避け、回し蹴りを繰り出す! メイアルーア・ジ・コンパッソだ!「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」連続蹴りが加速し、炎は勢いを益々増してゆく。ジョウゴ親王はザンマに襲いかかるヘラルドを横目に、不快げに目を細めた。「ケイトーめ。何かしおったか。まあよいわ」

 目下、彼の凝視はニンジャスレイヤーに向いた。ニンジャスレイヤーの繰り出した拳に、親王は不遜を感じたのだ。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはジョウゴ親王に再び向かってゆく!「イヤーッ!」繰り出す拳を腕で弾き、親王は殴り返す!「イヤーッ!」「イヤーッ!」KRAAASH!

 衝撃波が散り、二者は回転しながら間合いを取り直す。「スウーッ……フウーッ……!」ニンジャスレイヤーは前傾し、焼けた息をふいごのように駆り立て、全身に循環させる。精神が研ぎ澄まされる。光の柱を昇る4本の矢の光景がニューロンに不穏に焼きつく。ギンカク・オベリスクと、力の脈が脳裏に閃く。

 オベリスクからは3つに分かれた力の脈が、ニンジャスレイヤー、ジョウゴ親王、ヘラルドに繋がっている。ニンジャスレイヤーは己を凄まじい怒りで満たした。『0100101……そうだぜ、お前! 負けてられるか』苦しげな声がノイズ混じりに聞こえてきた。シルバーキーだ。『あいつらナメやがって。だけど泣き寝入りするタマじゃねえだろ、お前』

「……貴様か」ニューロンが加速し、時間が泥めいて鈍化した。『ごアイサツだな。俺だってギンカクにまつわる者として、お前の知らんところで頑張ったぜ。具体的にはさっき……まあいい……目下、状況は芳しくねえがよ……』「おれにナラクの力があれば、おれは、くだらん矢を止められたのか」

『……どっちにしても、それはお前が後悔すべき事じゃねえし、後悔できもしねえよ』シルバーキーは言った。『今お前がやる事はハッキリしてら。ナラクの火はお前に属する力なんだ。だから……』「当たり前だ!」ニンジャスレイヤーは遮るように言った。「奴らにナラクを黙って差し出す謂れはない……!」

『その意気だ』シルバーキーの思念がニンジャスレイヤーの隣に立った。『ナラクはニンジャスレイヤーの力。ナラクにとっても自明の事だろ。だからお前が望んで、働きかければ、うまくいく。具体的には……』「だいたいわかった」ニンジャスレイヤーは答えた。「カラテだ。じゅうぶんだ」

 ゴウ! 空気が唸り、時間感覚が解放された。凄まじい速度でジョウゴ親王が向かってきた。「イヤーッ!」螺旋を描くチョップ突きが襲いかかる!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは突きの内側に腕を走らせ、殴り返した!「「ヌウーッ!」」KRAAASH! 相互の拳がメンポに叩きつけられる!

 バキバキ、ミシミシと軋む音が走り抜け、踏みしめた足元の地面に亀裂が生じ、赤黒の火が燃えた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」彼らは足を止め、殴り合った。……ZGGGTOOOOOOM……! そのとき、天地が鳴動し、空が光り輝いた。

『これは……0100101』シルバーキーはニューロン・リンクが切断される寸前に、象徴的なヴィジョンを送ってきた。ニューヨーク。ここから最も地理的に近い地点に、まず着弾した。そこに何が起こるか、もはや聞き返す暇はない。「イヤーッ!」「イヤーッ!」彼らは赤黒の火を散らし、殴り合った。

 ニンジャスレイヤーの右拳をジョウゴは左手で掴んだ。ジョウゴの右拳をニンジャスレイヤーは左手で掴んだ。「「……!」」彼らの踵が赤黒の火を噴いた。その拮抗、一瞬!「イイイ……」ニンジャスレイヤーは決断的に顔を仰け反らせた。ジョウゴは気づいた。遅い!「イヤーッ!」頭突きを食らわせる!

 KRAAAASH! 視界が真っ白に染まる。ニンジャスレイヤーは意志を燃やし、打ち克とうとした。010001010……視界がまだらに霞み……00100101……ニンジャスレイヤーは己を、ピザタキの店内で見出した。

 デロリロリロリ、デロリロリロリ。店内のピンボール台が電子音を鳴り響かせた。「バニーチャン!」合成音声が割れた音を発すると、オレンジの単色液晶モニタのバニーオイランが脚を振り、ネオンライトが明滅した。「オウシ! オウシッ! オウーッ!」タキが台に腰を打ちつける。

「小麦粉をこねたいのですが」コトブキがカウンターの向こうから顔を上げた。「こね棒みたいなもの、ありませんか?」「ア? あるわけねェだろ! 冷凍ピザの在庫はキッチリあるはずだぜ」「それが、無いのですよ」「ア? 発注したはずだオレは。業者の野郎!」「注文履歴がありません」「業者の野郎!」

 マスラダは彼らを見やり、それから窓の外に違和感を覚え……顔を向けた。窓の外にはどこまでも荒廃が広がっていた。そこには、ひと目で致命傷とわかる傷を負った美しいニンジャを抱える、ジョウゴ親王の姿があった。「殿……」すぐそばで聞くように、その会話は耳に入ってきた。「貴方は真の覇王也」

「クセツ……ランマル……!」「敵……敵は、ホンノウジにあり。アケチ……討つべし!」「お、おお、おおお……!」ジョウゴ親王は震えた。地平はるか遠くには山のように巨大なタイクーンが4つの腕を組み、威圧的に見下ろしている。ジョウゴは叫んだ。「オオオオオーッ!」

「ア? なんだ? 今日は都合により休業だぜ」タキが入り口を見た。「イヤーッ!」KRAAASH! ドアを蹴り壊し、ジョウゴ親王が現れた。窓の外には依然、ランマルを抱えて慟哭するジョウゴの姿があり、01ノイズに霞んでいる。ジョウゴはマスラダを見、店内を見て、侮蔑に眉根を寄せた。「……フン……」

「……」マスラダはジョウゴ親王を見た。親王はピザタキの店内を見渡した。「なんだ、これは?」「……」「イヤーッ!」KRAAASH! 親王は不意にカウンターにチョップを繰り出し、叩きつけて破壊した。コトブキはそれに気づかぬのか、冷蔵庫を開けて在庫を確かめている。「なんと……くだらぬ」

 ジョウゴ親王は胸を反らし、マスラダを見下ろした。「惰弱。なんと惰弱でぬるい、くだらぬ感傷よ」「……」「我が過去。我が使命。我が運命。わが宿命! 憎きアケチ! ……全て、ギンカクの力にふさわしき英雄のそれじゃ。下郎。貴様、卑しき民草一匹の感傷で、我をいたずらに煩わせるか」

「オイ! なんで扉が壊れてンだよ! アーッ!」タキは仰天し、マスラダの横を通ろうとした。ジョウゴ親王はタキの首を無雑作にチョップで刎ねにゆく。だが、その手は途中で止まった。マスラダがジョウゴ親王の手首を掴み、止めたのだ。タキは01ノイズを散らし、おぼろな姿でモップを取りに行く。

「離せ、下郎。無礼であるぞ。何のつもりか」ジョウゴが言った。マスラダはジョウゴを見た。そして呟いた。「……ふさわしいと、言ったか?」「然り」ジョウゴ親王は悪びれず答えた。「ワシには為すべき事がある。倒すべき敵がおる……戦うべきイクサがある。天下布武はワシが果たすべき使命。ワシが手にすべき、その為のソウル。その為の武器じゃ」

 親王の骨が軋んだ。掴むマスラダの手から赤黒の火が溢れた。「この火は」マスラダは言い放った。「「貴様のものではない」」声が重なった。ジョウゴ親王はマスラダの手を振り払おうと……ねじ伏せようとした。「イヤーッ!」「グワーッ!」マスラダは受け流し、ジョウゴを床に叩きつけた!

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