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S3第5話【ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン】#3

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「ウォーワワー!ワワーウォー!」銃座のカラテナキウサギが前方を指差し、マスラダに語りかけた。((( "谷" の入り口だ。隠されている))) 彼のニューロンに声が響いた。マスラダは頷いた。並走するコトブキはマスラダのその様子が気になってならない。「コミュニケーションしています。動物と」

「できるさ。アニキだからな」ザックは頷く。バイクが岩に乗り上げ、高く跳ねたので、慌ててコトブキにしがみついた。マスラダは二人を一瞥する。コトブキが思い切ったように尋ねた。「どうしてカラテ動物と話ができるんですか」「いや、違う」マスラダは言った。「こいつの声ではない」

「どういう事です?」「こいつらを中継して、話しかけてきている奴がいる。多分な」「IRC通信の端末めいています」「さあな……」「わたしも受信できればいいのに」「鬱陶しいだけだ」「でも、動物と相互理解できるんですよ」「俺もやってみてェ!」「ウォワー! ワンワーワー!」見よ、前方!

 峡谷は不意に先が細り、行き止まりが見えた。切り立った崖の亀裂から水が落ち、飛沫を作っている。だがバギーは停止するそぶりを見せない。スワ、衝突! ザックは目を閉じる。しかしその一秒後、彼らはディジタル・ノイズの霧を突き抜け、棚田めいた景色を見下ろしていたのだ。

「ス……スゲェ」ザックが驚嘆した。バギーの中ではヨロシ・サトルが、さも平常時めいて、狼狽えるナインに対して自信に満ちた説明を行っていた。何しろ彼は先程一度この信じがたい迷彩領域に招かれているのだ。一行は段状の大地を巡りながら、徐々に底部を目指していった。

 道の脇の棚田では実際、痩せた農作物が栽培されている。速度を落とし進む彼らを、農作業中の二足歩行カラテビーストがじっと見つめる。彼らは黒帯を締め、手には農機具を持っている。「ウォンウォー」銃座のカラテナキウサギが手を振ると、彼らも手を振り返した。

「さすがにこれは奇妙ではないですか?」コトブキが訝しんだ。「ここは一体……? 彼らは積極的に人間を襲撃する危険なビーストである筈です」「おれに訊くな。じきにわかる」マスラダはしかめ面で答えた。「ここにおれ達を呼んだ張本人が出てくるだろう」

 ドンポコ、ポコポコ、ポココ……。要所要所に建てられた物見櫓の上にはカラテビーストと防護服姿のリコナーがペアで居り、下へ来訪者の到着を伝えるように、櫓に垂れ下がった粗末な打楽器を棒で叩いた。奇妙なリズムがマスラダ達に寄り添う。やがて彼らは底に辿り着いた。円い湖を囲む家々に。

「ウォーワンワワ」「ワンワー!」車両を停止させた彼らのもとに、カラテウォンバット達が駆け寄った。バギーのドアが開くと、カラテウォンバット達は用意した担架に手際よくナインを寝かせた。CEOがナインの手を取り、安心させる。「彼らはよき隣人だ。信頼できます。今は休みなさい。働くために」

 カラテウォンバットと入れ替わるように、防護服姿のリコナーが二人現れアイサツした。「よくぞ戻った、アーロン=サン」「報告は既に、ドリームキャッチャーとファストストリーム=サンを通じて」「ああ」二人はうなだれるアーロンに近づき、ハグした。「彼らは残念だった」「死は終わりではない」

 それからアーロンを含めたリコナー達はあらためて、CEOとマスラダ達に向き直り、オジギした。「ようこそ。ドリームキャッチャーの谷へ。歓迎いたします」コトブキとザックはアイサツに応じたが、CEOは彼らリコナーに対して尊大であったし、マスラダもいまだ彼らに心を許してはいなかった。「それで? おれを呼びつけた奴はどこにいる」

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