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プレシーズン4【ライオット・オブ・シンティレイション】分割版 #4

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「フン! フンッ! フンッ! フンッ!」サペウチCEOのキアイの入った鼻息が社長室に響き渡るさまを前にしながら、本部長はドゲザ待機していた。「フンッ! フンッ! フンーッ!」SMAASH! ダミー人形の首がフルスイングのゴルフスイングに刎ね飛ばされ、室内をメチャクチャに反射して飛び回った。「進捗!」

「そ、それは順調に……」「順調遅延! 君はアレかね、アキレスと亀、そういう寓話の話かね!?」サペウチCEOはゴルフクラブを掴み、引っ張った。柄が外れ、ロング・ドス・ソードの刃が現れた。「フンーッ!」SLAASH! ダミー人形胴体切断!「僕は平和的な男だ!」「その通りです! まったくもって!」

「そうだろう? 僕が何故……そんなくだらない落書き犯などに精神を乱されなければならない? ん? 言ってみたまえ」「全くありません! そのような事は!」「そうだろう? しかし、ケジメはつけねばならんよ、ケジメは」「全く以て!」「だから進捗を確認しているんだよね?」「完全にそうです!」

「ならば君が……」その時である。ビロリロリロ。社内UNIX端末の呼び出し音が鳴った。CEOはドゲザ本部長の顔の横の床にドスを突き刺し、応答した。「モシモシ! 何だ」『CEO、大変です。例のタブチャ・スクランブルのディスプレイが……』モニタが切り替わった。交差点上空のドローンカメラ中継だ。

「ナン……何だって?」サペウチCEOは固唾を呑んだ。人影が看板に取り付いている!「は、恥知らずにも……まさか」「なんという事でしょう」いつのまにかドゲザをやめた本部長がサペウチCEOの横に立ち、顔をくっつけるようにしてモニタを覗き込んだ。「見ての通り警備は厳重です、それを……」

「邪魔だぞ! 観察は君の仕事ではない!」CEOは本部長の顔を掴み、押し退けた。「そんな事よりASAPでやるんだ! 君!」「勿論です!」本部長は携帯端末をコールした。「ナメくさりおって! ノコノコと現場に自ら顔を出しくさる……目にもの見せてくれる! 応答せよパースウェイダー=サン!」『モシモシ』

「アッ……パースウェイダー=サン」本部長は一瞬気圧された。応答するニンジャの囁き声は、冷酷なアサシンの無慈悲性を隠しもしなかったからだ。『今、仕事の最中だ、本部長殿。後にしてくれんかね』「ASAPだと言っただろう! 犯人は今まさに……」『私の愉快な果実を奪う事は、依頼者だろうと許さない』 

 通信越しに、喉首を掴まれたような感覚をおぼえ、本部長は失禁をこらえて呻き声をあげた。『ASAP……任せておくといい』通信は終わった。本部長は目を上げて、サペウチCEOを見た。CEOの凄惨な笑顔と目が合った。モニタの向こうで、今まさに、さらなる白昼堂々のボムが始まった。


◆◆◆


 BRATATATA! BRRRRRTTTT! 雨の中でマズルフラッシュが走った。浮遊ドローンがザナドゥに銃撃を浴びせる!「イヤーッ!」ザナドゥは看板から蹴り離れ、隣接ビルの電力ワイヤー上に着地した。見事なニンジャバランス感覚だ。「イヤーッ!」そしてスリケンを投げ返す!「ピガッ!」「ピガーッ!」撃墜!

「クソッ!」僅かな猶予が生まれた。ザナドゥはワイヤー上を駆け戻り、回転ジャンプして、身を捻りながら、CEOの看板にスプレーを噴きつけた。「イヤーッ!」ネオンの色彩が円を描いて月の輪を刻む。ザナドゥはビル側面に取り付き、後ろを見た。次なるドローンだ。「イヤーッ!」スリケンで破壊!

「イヤーッ!」ザナドゥはビルの僅かな突起を蹴って上へ跳んだ。両手に構えたスプレーでさらなるペイントを行う。ネオンの色彩で、黒い落書きを押し潰し、上書きする為に。時間感覚が泥めいて鈍化し、彼の高速ニューロンは自問自答を開始する。……これでいいのか。俺は、うまくやる事ができるか。

 否、やるしかない。己の「桃」が、この誰だかわからない奴の悪意に負けるに任せるなど、そんなのはクソだ。もともと描かれたものより上手い代物ならば、グラフィティを上書きしてもよい……いみじくもマグナカルタが発言したように、それがネオサイタマのストリートの流儀なのだ。

「イヤーッ!」ザナドゥはネオンを浴びせた。彼の目が輝き、上書きされたスプレーはジツを受けてホロ・ミラージュの片鱗を浮かび上がらせる。黒い「ファック」が輝きに覆われ、なぐり書きの桃には新たに肉厚な輪郭が備わる。「御用!」「そこのお前!」KATANAが隣接ビル屋上に上がってきた!

 テック装甲で完全武装したKATANAの高所治安部隊は、屋上に上がる事自体を犯罪視して即座に攻撃してくることで悪名高い。特にこの地域は複数の暗黒メガコーポが睨み合う複雑な場所だ。企業の者であっても無許可の立ち入りまかりならぬ。「今すぐ投降せよ! 射殺も辞さない!」

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